路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【金口木舌】:配偶者の呼び方あれこれ

2021-05-15 05:10:20 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【金口木舌】:配偶者の呼び方あれこれ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌】:配偶者の呼び方あれこれ

 配偶者の呼び名を第三者にどう伝えるか。結構難しい。古めかしい表現と感じたのは玉城デニー知事。ツイッターで「山の神」と記した。「大辞林」によると「俗に頭の上がらない妻のこと。特に口やかましい妻をいう」とある
 ▼山の神様は女性神として信仰されることが多く、恐れられてきたことに由来するという。知事の真意は図りかねるが、頭が上がらない様子を伝えたかったのだろうか
 ▼ある製薬会社の調査によると男性は「嫁」「妻」「奥さん」の順で多かったという。逆に女性は「旦那」が過半数を占め、次に「夫」「主人」と続く
 ▼最近は社会的につくられた性差「ジェンダー」の視点も必要だ。「主人」「旦那」は主従関係を感じさせる。「家内」「奥さん」は「女性は家の奥や内側にいる人ではない」との批判の声が聞こえてきそう。「嫁」は「『家』と結婚したわけではな い」との反発を招く場合もある
 ▼復帰前に家庭を築いた一定の年齢層は、妻のことを「ワイフ」と呼ぶ。米統治下だった米国の文化の影響だろうか。沖縄ならではの言い回しとみる
 ▼ジェンダーに詳しい矢野恵美琉球大法科大学院教授は「妻、夫、パートナーなどが望ましいのでは」と提案する。それにしても「連れ合い」「かみさん」「亭主」など、日本語の言い回しは多過ぎやしないか。いっそのこと「とぅじ」「うぅとぅ」でどうだろう。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】 2021年05月12日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:PFAS除去3億円増 汚染源特定し浄化急げ

2021-05-15 05:10:15 | 【米国・在日米軍・地位協定、犯罪・普天間移設・オスプレー・安保】

【社説】:PFAS除去3億円増 汚染源特定し浄化急げ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:PFAS除去3億円増 汚染源特定し浄化急げ 

 押し付けられた基地が環境汚染を生み出す。対策として公費が投入される。その財源は私たちの税金である。沖縄で何度も繰り返されてきた構図だ。

 県企業局が管理運営する北谷浄水場の設備改良事業を巡り、有機フッ素化合物(PFAS)の除去により特化した仕様とするため、総工費が当初予定の13億円から約16億円に増額された。
 県民の不安解消と汚染源の特定のために、米軍や日本政府は、県や市町村が求める立ち入り調査に応じるべきだ。
 取水源の一つとする米軍基地周辺の河川では、航空機の泡消火剤などに使用され、発がんリスクなどが指摘されるPFASの検出が問題となっている。
 新たな仕様となる粒状活性炭は、PFOSなどの化合物の吸着に効果があるとされる。PFAS対策に特化した活性炭を導入する国内の浄水場について、県企業局担当者は「ほとんど聞いたことがない」という。必要な措置だが、結局は対症療法にすぎない。
 河川水汚染は基地に起因する蓋然性(がいぜんせい)が高いが、日米地位協定によって米軍の排他的管理権が認められている。沖縄県側の基地内立ち入りが進まず、調査の障壁になっている。原状回復責任が米軍にある場合でも、日本が肩代わりして税金が投入される。この不条理に終止符を打たなければならない。
 PFASは自然環境中でほとんど分解されず、人や動物の体内に長く残留する。浄水場の計画変更の背景には、その危険性に関する認知度の高まりがある。バイデン米大統領は大統領選の公約で、PFASを有害物質に指定し、規制を強化するとしている。
 政府は4月16日、PFOAについて健康や生態系に悪影響を及ぼす恐れがあるなどとして、第1種特定化学物質に指定する政令を閣議決定した。10月22日から新たな製造や輸入、使用が禁じられる。
 県環境保全課が2020年9月に実施した水質調査では、PFOS、PFOAの合計値で、米軍嘉手納基地周辺の民家地下水で1リットル当たり3千ナノグラムを検出した。この値は環境省が定める暫定指針値50ナノグラムの60倍で、16年度の調査開始以降で最も高かった。
 防衛省は、取水源のPFAS汚染と米軍の関係性は立証されていないと主張し、県が求める補償には応じていない。因果関係を認めない一方、補助金という形で浄水場改良の事業資金を提供する。この二重基準の対応は原因究明を棚上げし、問題を封じ込めようとする姿勢に映る。
 取水源となる河川の水質改善という抜本的な解決には、汚染源の特定が不可欠だ。沖縄県や地元自治体は、基地が汚染源である可能性が高いとして基地内の立ち入り調査を求めている。米軍は県の求めに速やかに応じ、日本政府も当事者として立ち入りの実現を働き掛けるべきである。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2021年05月11日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【金口木舌】:百年目

2021-05-15 05:10:10 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【金口木舌】:百年目

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌】:百年目

 「ここで会ったが」に続く言葉がすぐに出てくるのは40代以上だろうか。ごくまれな好機のことで、運の尽きも指す「百年目」である。「百年」は比喩的に長い間も意味する
 ▼「百年に一人」とはめったに出ない才能。これを地で行く大リーグの大谷翔平選手だ。本塁打数トップで先発登板し、1921年のベーブ・ルース以来の快挙となった
 ▼3季ぶりの勝ち星も挙げた。肘の手術からのブランクである。ワールドシリーズを目指しトップ選手がせめぎ合う、まさに世界一のリーグにあって「二刀流」の夢を諦めることなく、うまず努力を続けた
 ▼「コロナの中での鍛錬の成果が表れてきた」との言葉を最近よく聞く。県内のスポーツの現場でのこと。大谷選手や五輪に挑むアスリートに力をもらうという選手もいた
 ▼東京五輪は国民の4割が中止を求め、再延期支持も3割いる。辞退や開催反対の表明を選手に求める声もある。一方、過去に重ね開催意義を訴える人も。1920年、スペイン風邪流行下でのアントワープ大会だ
 ▼100年を経た今、病禍の奇縁はあろうが、開催ありきは論外だ。辞退要求も筋違いである。めったにない国内開催に多くの意見が出ることは大切だ。競泳の池江璃花子選手は「中止の声は当然」と受け止め「やるなら全力、ないなら次へ頑張るだけ」と。矛先を向けるべきは選手ではない。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】 2021年05月11日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【金口木舌】:お年寄りが移動しやすい社会に

2021-05-15 05:10:00 | 【超高齢化・過疎・孤立・終活・認知症・サ高住問題・人口急減・消滅性自治体】

【金口木舌】:お年寄りが移動しやすい社会に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌】:お年寄りが移動しやすい社会に

 高齢の親類男性が自動車の運転免許証を自主返納した。家族の送り迎えや仕事などで長年慣れ親しんだ運転を諦めるのはよほどさみしかったのだろう。涙の返納だった
 ▼定年後にも各分野で活躍する高齢者がいる一方、高齢者による交通事故も社会問題に。2019年に東京・池袋で高齢の男性が運転する乗用車が暴走し県出身の女性と娘が巻き込まれて死亡した
 ▼1900年5月10日に催された後の大正天皇の結婚式の記念品として、サンフランシスコの日本人会が1台の自動車を贈ったが、試運転で皇居の堀に転落。日本初の自動車事故として記録される
 ▼2005~07年に全米で発生した交通事故を調査した米運輸省は「94%は人為的な誤作動」と結論付けた。ハンドル操作やブレーキの踏み違いなど人為的ミスは県内でも確認されている
 ▼交通事故の削減に期待されているのは自動運転車。技術革新は進むが、米電気自動車メーカーのテスラ社の車両が運転支援機能作動中に事故を起こすなどまだ課題が残る
 ▼親類の男性はバス運転手だった。幼少期に帽子をかぶらせてもらったことがあるが、運転手になったようで誇らしい気持ちになった。子どもたちを車で送り届け、バスのハンドルを握り沖縄社会に貢献してきた。免許証返納後も気兼ねなく移動できる近未来の交通システムはいつ実現できるだろうか。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】 2021年05月10日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:75歳以上2割負担 窓口負担増避ける議論を

2021-05-15 05:09:55 | 【社会保障施策・年金(国民、老齢、共済、障害)・医療、介護保険・生活保護・

【社説】:75歳以上2割負担 窓口負担増避ける議論を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:75歳以上2割負担 窓口負担増避ける議論を 

 一定の収入がある75歳以上の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法案について衆院厚生労働委員会が賛成多数で可決した。自民、公明両党と日本維新の会、国民民主党が賛成し、立憲民主、共産両党は、高齢者が受診を控え体調を損ねるとの理由で反対した。

 医療制度改革は、収入のある高齢者に窓口負担を求めることで、医療費を保険料で支える現役世代の負担増を抑える狙いがある。団塊世代が2022年から75歳以上になり始め、医療費が膨張することが背景にある。
 法案は今週にも衆院を通過し参院に送られる見通しだ。今国会で成立する可能性が高まっているが、国会で審議入りしてまだわずか1カ月。議論は不十分だ。高齢者の経済的事情にどれだけ配慮しても、受診控えを招かないという保証はない。この点を十分に認識し、窓口負担増を避ける方策を探るべきである。
 75歳以上の高齢者の窓口負担は現在、原則1割で、現役並みの収入がある場合は3割だ。それ以外の財源は、5割が公費、4割が現役世代の保険料で賄われている。法案は、この現役世代の負担を抑えるため、単身だと年金を含む年収200万円以上、夫婦世帯では計年収320万円以上を対象に2割負担にする内容だ。22年度からの実施を目指す。
 厚生労働省によると、全国で後期高齢者医療制度に加入する75歳以上の人約1815万人のうち、2割負担の対象は約370万人に上る。
 自己負担の増加幅が月最大3千円とする上限額があるものの、窓口負担が2倍になる人もいる。このため立民、共産両党は「経済的な理由から受診を控え、病気が重症化する可能性がある」と懸念する。
立民は75歳以上の高所得者の保険料上限を引き上げて財源を捻出する対案を出した。共産は高齢者医療の国庫負担を35%から、少なくとも従来の45%に戻し国が公的役割を果たすことで若い世代の負担軽減を図るべきだと主張する。
 誰でも高齢になれば体が弱る。受診する機会が増えるのはやむを得ない。しかし受診を控えると、命や健康を損ねるリスクが高まる。
 政府の試算では、負担引き上げに伴い、75歳以上の外来受診回数は1人当たり年平均で33回から32・2回に減るとの見通しだ。さらに収束が見通せないコロナ禍にある。ただでさえ受診を控えている高齢者に拍車を掛けて受診をためらわせないか。そのリスクに配慮すべきだ。
 受診控えを招く窓口負担増以外に財源を捻出する方策を、あらゆる観点から探る必要がある。高齢者は長期にわたり社会に貢献した敬うべき存在である。なおかつ現在は社会的弱者だ。憲法25条が国に義務付けている生存権の保障にも関わる。これらの点を重視し、高齢者に負担を強いることは極力避ける方向で議論を進めるべきだ。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2021年05月09日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【金口木舌】:「かじられ星」の未来

2021-05-15 05:09:50 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【金口木舌】:「かじられ星」の未来

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌】:「かじられ星」の未来

 漫画家・松本零士さんの代表作「銀河鉄道999」に「かじられ星」という惑星が登場する。その星の地面は食べることができ、他の星の人が訪れては持ち帰る。星は削り取られ、徐々にやせ細っていく
 ▼架空の惑星の物語と沖縄を取り巻く状況は、どこか似ている。リゾート地として人気の沖縄は、国内外から多くの人が訪れるようになった。国際通りは観光客であふれ、多彩な外国語が飛び交った
 ▼にぎわったのは那覇周辺だけではない。パワースポットとして紹介された久高島、民泊施設が立地した恩納村や本部町。観光客が押し寄せた地域では、聖域への立ち入りや夜間の騒音など、さまざまな課題が表出した
 ▼「観光客は来ない方がいい」。以前、話を聞いた住民の心は、明らかにすり減っていた。沖縄が観光地として消費される中で、そこに住む人たちの気持ちには光が当たらなかった
 ▼コロナ禍の影響で、2020年度の入域観光客数は前年度比で7割近く減少し、外国人客はゼロとなった。国際通りはシャッターを下ろしたままの店も多く、打撃の大きさを感じさせる
 ▼観光業が沖縄の成長を支えたことは間違いない。観光客の笑顔が戻ることを願う人は多いはず。再びにぎわいを取り戻したとき、地域の住民も一緒に笑っているか。みんなが幸せになる観光を目指し、同じ方向を向いて考える必要がある。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】 2021年05月09日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:国民投票法成立へ 改憲前提のザル法見直せ

2021-05-15 05:09:45 | 【憲法問題「護憲・改憲・違憲論争・緊急事態条項・九条の改正、自主憲法制定論議他】

【社説】:国民投票法成立へ 改憲前提のザル法見直せ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:国民投票法成立へ 改憲前提のザル法見直せ 

 自民党をはじめとする改憲勢力にとっては「一歩前進」だろうが、果たしてそうか。

 6日に衆院憲法審査会で可決された国民投票法改正案のことだ。「問題点が無数にあるザル法」(照屋寛徳衆院議員)とまで酷評される。
 最大の問題は投票率の下限が定められていないことだ。少数の「大きな声」によって最高規範である憲法を変えてよいはずがない。改憲を前提とした議論は封印し、改正案自体を見直す必要がある。
 通常の法律は過半数の賛成で改正できるが、憲法を変える発議には衆参両院で3分の2以上の賛成が必要となる。
 これほど厳しい要件を定めるのは、基本的人権など国民を守る憲法が多数決の論理に流されないためだ。憲法に関わる国民投票は、有権者の大半が認めたときに初めて効力を発する制度であるべきだ。
 仮に国民投票の投票率が30%だった場合、70%の賛成を得たとしても国民の20%が改憲案を認めたにすぎない。それで国民の信任を得たといえるのか。最低投票率を定める規定は絶対に必要だ。
 自民と立憲民主の合意により公平性を担保する広告規制などが検討事項として付則に盛り込まれた。ただし「3年をめど」とするものの実現するかは不透明だ。投票自体を困難にしかねない共通投票所設置も改正案に含まれる。こうした課題が法そのものへの懸念を生んでいる。
 資金力のある政党や団体が著名人を起用したテレビCMを大量に発信すれば、世論を望む方向に誘導できる。一方で資金力に乏しい側は十分に主張が届かない。
 表現の自由との兼ね合いもあり、規制は最小限にとどめるべきだが、最も公平性が求められるべき国民投票で一定の歯止めは必要だ。
 利便性向上をうたう共通投票所は、商業施設などへの設置を想定している。だが、設置によって小規模の投票所が閉鎖されては本末転倒だ。交通弱者らの投票機会を奪うことにつながりかねない。
 秋までに実施される総選挙をにらんだ政党間の駆け引きで、国民投票の手続きが決まるのは問題である。改憲の中身まで議論するのは論外だ。
 自民党の下村博文政調会長は改憲に絡めて「コロナのピンチを逆にチャンスに変えるべきだ」と述べ、野党から批判を浴びた。
 自民党改憲案にある緊急事態条項の導入を念頭に置いたものだ。これまでの政府の感染症対策を検証せず、一足飛びに改憲と結び付ける発想は「火事場泥棒」と評されてもやむを得まい。
 自衛隊の役割拡大や私権制限を拡大する自民党案が実現すれば、基地機能の強化や防衛施設周辺の土地利用規制など沖縄に甚大な影響が及ぶ。
 国民のものである憲法を未来にどう引き継ぐか。国民の声を正確に受け止める仕組みづくりは十分な時間がいる。拙速な議論は避けるべきだ。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2021年05月08日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【金口木舌】:生活保護は生存権

2021-05-15 05:09:40 | 【社会保障施策・年金(国民、老齢、共済、障害)・医療、介護保険・生活保護・

【金口木舌】:生活保護は生存権

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌】:生活保護は生存権

 貧困問題を取材していた頃、食料品が買えないほど困窮していても「生活保護だけは恥ずかしい」「周りに迷惑をかけたくない」という声を聞いた。助けを求められない背景に生活保護を「恥」と捉える文化があると感じた

 ▼新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて解雇や雇い止めが見込まれる県内労働者は3月26日時点で1864人に上った。雇用環境は深刻さを増している
 ▼県内の生活保護の利用者が5カ月連続で過去最多を更新している。しかし、各福祉事務所はコロナ禍にあって「想定したほどは増えていない」と見る。生活に窮する人々が必ずしも支援に結び付いていない
 ▼生活保護の利用をためらう要因に親族への「扶養照会」がある。当事者の親族にまで支払い能力があるかどうかを尋ねる仕組み。支援者によると「知られたくない」と申請を見送る人がいる
 ▼2012年、芸能人の母親をめぐる生活保護の受給問題を機に「生活保護バッシング」と言える現象が起きた。自民党はこの動きに乗じるかのように衆院選挙の公約に生活保護費の給付水準の引き下げを掲げその後、実行している
 ▼菅首相の唱える「自助、共助、公助」を聞くと「まず、自分で何とか」と言われているような気がする。生活保護は憲法25条で保障された生存権。今求められるのは生活に窮する人が気兼ねなく利用できるような後押しだろう。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】 2021年05月08日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:水俣病確認65年 健康調査の早期実施を

2021-05-15 05:09:35 | 【環境問題(公害・排ガス・治水・産廃・水俣病・アスベスト・有機フッ素化合物

【社説】:水俣病確認65年 健康調査の早期実施を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:水俣病確認65年 健康調査の早期実施を 

 水俣病が公式確認されてから65年を迎えた。高度経済成長路線の下で、利益最優先の企業姿勢が環境汚染を引き起こし、住民の命を犠牲にした。国と企業の責任は重い。

 3月末までに熊本、鹿児島両県で計2283人が患者認定を受けた。患者は高齢化が進み、うち1988人は既に死亡した。なお約1400人が認定申請中だ。国やチッソなどを相手取り救済を求める法廷闘争は続き、被害の全面解決は見通せない。
 2009年に成立した未認定者救済の特別措置法(特措法)が、国に求めた住民の健康調査は、いまだに実現していない。被害の全容解明のため、対象地域の健康調査の早期実施を求める。
 熊本県水俣市で、チッソの工場が毒性の強いメチル水銀を含む排水を不知火海(八代海)に流し、汚染された魚介類を食べた住民らに、手足のしびれや視野狭窄などの症状が出た。根本的な治療法は見つかっていない。水俣病は当初、伝染病とみなされ、患者の多くが過酷な差別を受けた。
 水俣病が「公害の原点」と言われる理由は二つある。水俣病研究の第一人者で2012年に死去した医師の原田正純さんによると、環境汚染によって食物連鎖を通じて起こった有機水銀中毒という意味で人類初の経験である。
 母親の胎内で影響を受けた中毒としても人類初である。生物の進化の中で母親の胎盤は胎児を毒物から守ってきたが、もはや母親の胎盤が胎児を守れないことを示した。
 国が1977年に設けた水俣病認定基準について、2004年に最高裁は基準より広く患者認定すべきだと判断し、国と熊本県の責任を指摘した。14年3月から感覚障害だけでも患者認定する新指針を国が通知した。未認定だった5万3千人余を被害者と認めたが、それでも対象外の人々が救済を求めている。
 さらに国の新指針も今や見直す必要がありそうだ。最近の調査で、幼いころにメチル水銀の影響を受けた場合、症状が従来考えられてきたより広範にわたる可能性が明らかになってきた。新しい知見だ。被害の全容を解明するには健康調査を実施し、被害者を特定することが欠かせない。
 09年の特措法は、不知火海沿岸(熊本、鹿児島)に居住歴がある人の健康状況を国が調べると規定している。当時20万人以上が住んでいたとされる。現在患者と認定されないが、程度の差はあれ水俣病の影響を受けている人が相当数いる可能性がある。
 被害者側は速やかな調査を求めているが実現していない。水俣病の歴史は、魚介類が汚染されているのに直ちに漁獲禁止せず、水銀廃液を10年以上も垂れ流しさせるなど行政の「怠慢の歴史」とも指摘される。調査遅れが全面解決を阻んでいる。救済はまだ終わっていない。これ以上、問題を放置することは許されない。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2021年05月07日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【金口木舌】:防災の心掛けを

2021-05-15 05:09:30 | 【災害・地震・津波・台風・竜巻・噴火・落雷・豪雪・大雪・暴風・土石流・気象状況】

【金口木舌】:防災の心掛けを

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌】:防災の心掛けを

 水はけが悪く、大雨が降るとすぐに冠水する場所が各地にある。雨脚が強まると急いで向かい、ずぶぬれになって写真を撮ることも多い。自動車が立ち往生したり、住宅が浸水したりすることも

 ▼川沿いの低地など浸水が頻発する地域には古い住宅街も多い。雨が続けば高齢者も公民館などに避難を強いられる。河川や排水路の改良が進み、浸水しなくなった地域もある。ただ市町村の防災マップを見ると浸水、土砂災害に注意が必要な地域は各地にある
 ▼沖縄気象台は5日、沖縄地方の梅雨入りを発表した。平年より5日早い。気象庁は5月の沖縄地方を「平年に比べ曇りや雨の日が少ない」と予報する。近年は局地的な豪雨による被害も多く、油断は禁物だ
 ▼気象庁は「線状降水帯」の形成を盛り込んだ「顕著な大雨に関する気象情報」を新たに発表する。都道府県の地方ごとに「命に危険が及ぶ災害発生の危険度が急激に高まっている」と呼び掛けるという
 ▼線状降水帯は積乱雲の連続発生で同じ場所に雨を降らせ続ける現象だ。昨年7月に九州を中心に被害をもたらした豪雨や、2018年の西日本豪雨などで確認された。激しい災害の要因の一つだ
 ▼自分が住む地域は防災マップでどのように位置づけられているか。避難所はどこか。行政の対策も必要だが、一人一人の心掛けで防ぐことができる被害もある。

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【社説】:こどもの日 健やかな成長、保障せよ

2021-05-15 05:09:27 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【社説】:こどもの日 健やかな成長、保障せよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:こどもの日 健やかな成長、保障せよ 

 昨年に続き、コロナ禍の「こどもの日」となった。自宅にこもりがちな日は増え、休校などにより居場所は減った。子どもたちの孤独の深刻化が危惧される。子どもの命が奪われる事態は過去に幾度も起きている。

 生まれる先は選ぶことができない。だからこそ、健やかに成長し、幸せになる権利は全ての子どもにある。政府や自治体は、その機会を保障しなければならない。
 収束の見えないコロナ禍による影響は、各種統計に表れている。2020年に自殺した全国の小中高校生は過去最悪となる479人で、前年比140人増だった。政府は今年12月にも、全世代における孤独・孤立に関する全国実態調査を実施する。孤独を感じるようになったきっかけや、社会との交流の有無などを調査項目とする。調査の実施や結果を待たずに、並行して早急な対策が必要だ。
 20年に虐待の疑いで、警察が児童相談所に通告した18歳未満の子どもは10万6960人で前年比8.9%増となり、初めて10万人を超えた。上間陽子琉大教授は、「住」の重要性を指摘している。子どもたちが安全に暮らせる場所を提供するのは行政の責務だ。
 20年における県警の大麻取締法違反の摘発者数は147人で、このうち未成年の摘発者数は全体の17.6%に当たる26人と過去最悪。今年に入り、県内の高校生が覚醒剤取締法違反や大麻取締法違反の容疑で逮捕された。
 那覇少年鑑別所の嘱託医を務めている西村直之医師(精神科)は「逮捕されたのは子どもだけれど、薬物を渡したのは誰か。子どもの知識不足が招いた事態ではない。教育しないといけないのは、大人だ」と指摘する。大人たちは自らの問題として受け止め、襟を正さなけばならない。
 沖縄の子どもの貧困率は29%を超え、全国の倍。コロナ禍に伴う経済の落ち込みで、教育格差につながる負の連鎖を断ち切らねばならない。学びの機会を維持できる支援も必要だ。
 菅義偉首相は「こども庁」の創設に意欲を示し、自民党は次期衆院選の目玉公約として掲げる方針である。幼稚園や保育所といった就学前の子どもの政策や、虐待や貧困など福祉に関わる所管官庁を一元化することで、少子化問題の解決を目指すとしている。だが、そもそも国民は新たな組織の設置を必要としているのか。求めているのは、コロナ禍における子どもの安全や学びの保障、待機児童など、依然として横たわる課題の速やかな改善だ。逼迫(ひっぱく)している現場から先に、人と予算を充てるのが筋だろう。
 子どもたちの健やかな成長は、子育てしやすい環境の裏付けがあってこそ。迫る危険から子どもらを守り、正の連鎖につなげよう。国や県、市町村などの自治体、そして大人の責務である。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2021年05月05日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【金口木舌】:児童憲章制定70年

2021-05-15 05:09:24 | 【学校等の陰惨ないじめ・暴力・体罰・自死・家庭での虐待・不登校・児相】

【金口木舌】:児童憲章制定70年

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌】:児童憲章制定70年

 7歳の時に沖縄戦を体験した男性は、自分の誕生日を知らなかった。戦争で家族を失い、孤児院に身を寄せた。親戚に引き取られた後、戸籍を作った際に終戦記念日の8月15日が誕生日となった

 ▼戦後、県内には11カ所の孤児院があったとされる。家族を失った多くの子が自身の誕生日を知らず、8月15日で届け出ているのではないか。取材した当時、そう感じた
 ▼戦後の混乱期を背景に、70年前の1951年5月5日、児童憲章は制定された。児童は「人として尊ばれる」「社会の一員として重んぜられる」「よい環境の中で育てられる」とうたう。当時沖縄は米統治下で、児童福祉法さえなかった
 ▼憲章制定から70年。スポーツや勉強、やりたいことに挑戦できる環境は以前に比べ整っている。一方で、沖縄は子ども食堂の数が全国最多で、まだまだ支援を必要とする子どもは多い
 ▼2019年度、県内の児童虐待対応件数は前年度比46%増の1600件余と過去最多となった。コロナ禍でステイホームが長引く中、支援の手が届きにくくなっているのではと心配される
 ▼今日はこどもの日。本紙の各面では、自分の好きなこと、得意分野に熱中する子どもたちが登場する。その笑顔がずっと続いてほしいと願う。沖縄戦を生き抜いてきた人たちの命のバトンをつなぐ子どもたちに大人として何ができるかを考える日にしたい。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】 2021年05月05日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:40年超原発再稼働へ 脱原発こそが最善の道だ

2021-05-15 05:09:21 | 【電力需要・供給、停電・エネルギー政策・原発再稼働・核ゴミの中間最終貯蔵施設他

【社説】:40年超原発再稼働へ 脱原発こそが最善の道だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:40年超原発再稼働へ 脱原発こそが最善の道だ 

 福井県の杉本達治知事が、運転開始から40年を超えた関西電力の美浜原発1基と高浜原発2基の再稼働に同意した。政府はこれを歓迎し、東京電力福島第1原発事故後、原発の運転期間を原則40年と定めたルール下で初の延長運転を実行することになった。

 有識者でつくる福井県の専門委員会は「安全性の改善が図られた」とお墨付きを与えたが、原発の配管などは新しい部品に交換できても原子炉中枢は建設時のままだ。40年ルールは骨抜きにされた。
 3基の安全性や避難計画の実効性、使用済み核燃料の受け入れ先が未定など課題山積の中、見切り発車の印象は拭えない。地域振興と絡めて原発に依存させる構造がいまだに根強いことが露呈した。この構造を転換し、脱原発社会を実現することこそが最善の道だ。福島の原発事故の教訓がそれを物語る。
 40年ルールは福島の事故の反省を踏まえて作られた。炉心溶融した福島第1原発1号機が運転40年目前だったためだ。1号機が他号機と冷却システムが違っていたことなどから、古い炉の場合、炉心溶融のような厳しい事故への対処が難しいという。
 ただルールでは1回に限り最大20年間延長できる。当初は「例外」との位置付けだったが、今回の延長で、なし崩しにされる恐れが強まった。
 延長の背景には、原発に依存する根強い構造がある。杉本知事は、国が持続的に原発を活用する方針を示し、原発1基当たり最大25億円の交付金を支払うなどの地域振興策を示した点を評価した。原発との共生をうたう美浜と高浜の両町は、関電が支払う固定資産税など原発関連が歳入全体の約半分を占める財政構造が長年続いている。
 国の原発政策は、交付金などを用いて原発に依存する地域の財政・経済構造をつくり上げ、原発を押し付けやすくする誘導策となっている。この構造を維持したまま、地元から悲鳴に近い声を上げさせることで再稼働にこぎ着けるやり方だ。基地交付金などを使い、米軍基地を地域に押し付けようとする基地政策と類似している点で、沖縄も人ごとではない。
 地域振興とセットで脱原発の道を探る必要があるが、そもそも政府が脱原発を国策として掲げないところに根本的な問題がある。政府は「エネルギー基本計画」で再生可能エネルギーへの取り組みを強化する方針を示す一方、原発を「重要なベースロード電源」と位置付けている。
 温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「脱炭素社会」の実現を掲げる政府は既存原発の活用を進めたい。その突破口が今回の再稼働と言える。しかしこの発想は、国民の安全や健康を守るという王道に逆行していないか。事故から10年たっても廃炉のめどが立たず、いまだに2万8千人余が県外避難している福島の事故の原点に立ち返るべきだ。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2021年05月04日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【金口木舌】:戦争の落とし子

2021-05-15 05:09:18 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・国策犠牲・戦後補償

【金口木舌】:戦争の落とし子

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌】:戦争の落とし子

 小欄で先週、甲辰尋常小学校の校歌を紹介したところ、卒業生という80代の読者から「歌詞が違う」との指摘があった。同窓会記念誌の記述を引用したが「海戦せしはこの時ぞ」は誤りという

 ▼調べてみると、1907年6月18日付の本紙記事「甲辰校の校歌制定」に歌詞が載っていた。「我が友達は甲辰の/学舎(まなびや)の名を忘るまじ/そも我が国と露国との/開戦せしはこの年ぞ」とあり、指摘通りだった
 ▼記念誌には同窓生の回想録も収めており、興味深く読んだ。琉球大名誉教授でひめゆり平和祈念資料館長を務めた安谷屋良子さんは「校歌に日露戦争が読み込まれているせいか、何やら男っぽい印象の学校」だったと振り返る
 ▼同級生の女の子に淡い憧(あこが)れを抱いたという沖縄学の第一人者、外間守善さんの回想録は読んでいて心が和んだ。明るく、健やかな学校だった。10・10空襲で焼けるまでは
 ▼疎開業務に奔走した荒井退造警察部長の沖縄赴任で1年ほど甲辰小に在籍した息子の紀雄さんは「楽しい日々が或(あ)る時から無残にも中断し、先生も友達も四散するとは」と記した。同級生名簿に多くの「不明」「死亡」の二文字を見た
 ▼「甲辰校は『戦争の落とし子』ではなかったでしょうか」という一同窓生の一文が胸を突く。戦塵(せんじん)の中に消えた小学校。その歴史の向こうから、子どもたちの元気な笑い声が聞こえてくる。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】 2021年05月04日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:憲法施行74年 国際平和の原則 実践を

2021-05-15 05:09:15 | 【憲法問題「護憲・改憲・違憲論争・緊急事態条項・九条の改正、自主憲法制定論議他】

【社説】:憲法施行74年 国際平和の原則 実践を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:憲法施行74年 国際平和の原則 実践を 

 憲法は施行から74年を迎えた。戦争放棄の9条を掲げ、平和主義を基本原則とする憲法の重みが今ほど増している時期はない。

 憲法が掲げる「平和」とは、軍事力に頼らない国際平和主義である。戦争や圧政などによる恐怖や、貧困、飢餓、人種差別などの「構造的暴力」を克服する概念と言える。
 米中対立が激しさを増す中、国際社会の緊張緩和と信頼醸成のため、平和憲法の原則の実践こそ求められる。
 ところが、国民の対中感情の悪化やコロナ禍を利用して、改憲勢力が勢いづいている。自民・公明両党は、改憲手続きを定めた国民投票法改正案を、連休明け6日の衆院憲法審査会で採決し、11日に衆院通過させる方針だ。多くの問題について議論は一切深まっていない。6月16日の国会会期末までの成立を狙った、日程ありきの強行突破だ。
 憲法学者の水島朝穂早稲田大教授は、憲法を変える前提として(1)高い説明責任(2)情報の公開と自由な討論(3)熟慮の期間―を上げている。憲法を変えるという側は、憲法を変えないことによる不具合を具体的に説明し、その上で、憲法を改めることでしか問題が解決しないことを明確にする必要があるというものだ。
 自民党は2018年に(1)9条への自衛隊明記(2)緊急事態条項の新設(3)参院選「合区」解消(4)教育無償化・充実強化―の改憲4項目をまとめている。このうち、参院合区の解消と教育無償化は、教育や選挙制度に関する法律で対応が可能だ。どうしても憲法を変えなければならないという説明が足りていない。
 聞こえのいい政策で9条改憲の本音を隠した、カムフラージュと言うほかない。自民党は米国との軍事的一体化に前のめりだ。憲法に抵触する集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法を、数の力で成立させたことを忘れてはならない。
 緊急事態条項については、新型コロナウイルス対策の徹底を求める国民世論を逆手にとり、内閣に強大な権限付与を認めるため改憲が必要だという主張がされている。しかし、現状で新型コロナ特措法があるように、これも個別の法律で対応できる。
 何より、私権制限を伴う緊急事態条項は、個人の権利尊重や、法によって国家権力を縛る「立憲主義」といった、憲法の理念を根本から変えることになる。コロナ禍の空気を利用して一足飛びに手続きを進めていいものではない。
 アドルフ・ヒトラーは、当時最も民主的と言われたワイマール憲法の緊急事態条項を利用して政権を奪取。国会で全権委任法を成立させナチスの一党独裁を確立した。緊急事態条項には平和憲法を骨抜きにする危うさがある。
 憲法問題の前に、感染症のまん延を許した政府の不手際をきちんと検証した上で、そこから必要な対策や法制度を熟議していくことが筋だ。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2021年05月03日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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