【社説】:成人年齢18歳/大人の仲間入り支えよう
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:成人年齢18歳/大人の仲間入り支えよう
2018年に成立した改正民法がきのう施行され、成人年齢がこれまでの20歳から18歳に引き下げられた。高校生を含む18、19歳が法律上の「大人」となる。明治以来146年ぶりの大転換だ。
同時に改正少年法も施行された。事件を起こした18、19歳を「特定少年」として厳罰化する。起訴後に実名報道の対象となる。
法的な成人とは、親の保護から独立し、自分の意思で行動できることを意味する。つまり、進路や住む場所を自分で決められる。
例えば、公認会計士や司法書士といった資格取得が可能になる。親の同意なしにローンや携帯電話、雇用関係の契約を結んだり、クレジットカードを作ったりもできる。
女性の結婚できる年齢を16歳から18歳に引き上げ、男性と統一した。ジェンダー平等の観点から当然であり、むしろ遅すぎたといえる。
一方、飲酒や喫煙、競馬などの公営ギャンブルは20歳になるまで許されない。健康への影響や依存症の懸念から、妥当な判断だろう。
今回の変更の背景には、少子高齢化が進む中で若者の積極的な社会参加を促す狙いがあるとされる。
世界的にも18歳を成人年齢とする国が主流だ。とはいえ、未成年とされてきた日本の18、19歳の多くは当然ながら社会経験が乏しい。
成人になったからといって、全て自己責任とするのではなく、契約トラブルなどから若者を守り、成長や自立を、家庭や学校をはじめ社会全体で支える必要がある。新成人としての自覚を促すことは大事だが、大人側の意識改革も求められる。
心配なのが、若者が多額の債務を背負ったり、悪質な業者のターゲットになったりしないかという点である。18、19歳は後から契約を取り消せる「未成年者取り消し権」の対象から外れるためだ。アダルトビデオ(AV)への出演を強要される恐れも指摘されている。
政府は、消費者契約法の改正案を今国会に提出した。恋愛感情に乗じた「困惑する状況」での契約は取り消せるなど対策を強化するが、対象が限定的で課題が多い。貸し付けへの監視強化や相談体制の整備、消費者教育や啓発など、関係機関は被害防止に努めねばならない。
成人年齢の引き下げは、14年に憲法改正手続きを定めた国民投票法が改正され、18歳以上に投票権を認めたのがきっかけだ。2年後に公選法の選挙権年齢も18歳に変更された。それらに続く成人年齢の議論は「18歳ありき」で、生煮えに終わった。
国民の関心が十分に高まらなかったのは、政治の責任が大きい。経緯の検証と反省を求めたい。
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年04月02日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。