岸田文雄首相は17日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を巡り永岡桂子文部科学相ら関係閣僚と協議し、宗教法人法に基づく質問権の行使に向けて対応をするよう指示した。文科省によると、宗教法人法に基づく調査権限の行使が実現すれば初めて。調査結果次第では、同法に規定された解散命令の請求が視野に入る。首相はその後の衆院予算委員会で、権限行使により教団の実態解明を進めると強調。永岡氏は25日にも検討を開始すると表明した。

衆院予算委で答弁する岸田首相(共同)

 

 予算委で首相は、調査を判断した理由として、政府の電話相談窓口に1700件以上の相談が寄せられたことなどを挙げた。「多数の被害者、困窮や家庭の崩壊が生じ、救済が十分進んでいないことを政府として重く受け止めている」と言及。救済に向けて日本司法支援センター(法テラス)の相談体制の強化を検討し、法制度の見直しによる再発防止にも取り組むと説明した。

 教団側と国会議員の接点が相次ぎ判明したことに「政治への信頼を傷つけ、率直におわび申し上げなければならない」と陳謝。自らは教団と関わりがないとして「関係を持たない私が責任を持って、未来に向けて問題を解決したい」と語った。

 永岡氏は、宗教や法律の専門家による会議を設置し、質問権を行使する場合の基本的な考え方や基準を速やかに示す意向を表明した。

 関係閣僚協議には河野太郎消費者担当相らが同席。消費者庁有識者検討会の報告書が17日に公表されたため、対応を最終調整した。報告書は旧統一教会に関し、解散命令請求も視野に宗教法人法に基づく報告と質問の権限を行使する必要があると提言、被害救済のための法整備も求めた。

 首相は6日の参院本会議で、解散命令請求に関し「慎重に判断する必要がある」と答弁していた。憲法で保障された信教の自由の観点から、論議を呼ぶ可能性もある。宗教法人法は、解散事由に該当する疑いがある場合、所轄庁が当該の法人に報告を求め、幹部らに質問できると定める。(共同)