【社説①】:コメ現物市場 価格形成透明化に期待
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:コメ現物市場 価格形成透明化に期待
道内企業などが出資するコメの現物取引市場が来月開設される。
多くが相対取引で決まるコメの価格形成を透明化しようと、農林水産省主導で制度設計した。
卸売りとの相対取引ではJAグループが各農協を通じて生産者に仮払いする「概算金」が指標となる。生産動向などで算定されコメ自体の持つ価値が分かりづらい。
新市場は流通量が少ない減農薬の特別栽培米などの取引から始める見通しだ。環境を重視した生産者の努力が評価対象となる。
売り手としてホクレンが参加を検討している。一方で全国のJA関連団体や大手コメ卸は対応が未定で、様子見の状態という。
市場がコメの価格をリードするには十分な取引量が課題となる。生産者、消費者双方が納得できる新たな仕組みに育ってほしい。
新市場の運営会社には公益財団法人の流通経済研究所(東京)や生鮮食品卸道内大手いずみホールディングス(札幌)が出資する。
オンライン上で取引を行う方式で数量、生産地などの情報を公表し売り手側が希望する価格などを示す。卸売業者など買い手側の競りのほか希望注文も可能という。
買い手が求める品質と生産者の生育情報をきめ細かくマッチングさせる機能が求められる。
減農薬などの取り組みが価格にどう反映されるか、消費者に情報公開される運営も期待したい。
初年度は2万トン、2027年度に12万トンの取扱量を目指す。全国のコメ販売数量の数%に過ぎず、あくまで相対取引の補完的役割だが、取引が活発になれば米価全体に影響を与える可能性がある。
農水省によるとこれと別に同様の市場創設の動きもあるという。
現物市場ができるきっかけは、21年に農水省が大阪堂島商品取引所のコメ先物取引の本上場を「取引参加の生産者などの数が少ない」として認めなかったことだ。
同じ年にはコロナ禍の大幅需要減で全国的に概算金が減額され、生産者、消費者の双方から価格形成の仕組みに不信感が高まった。
かつては公設の全国米穀取引・価格形成センターが自主流通米時代から指標価格を形成していたが、食糧法改正による流通自由化で取引量が減り11年に解散した。
市場売買には生産者の一部に「投機対象となり価格が乱高下するのでは」との不安もあろう。
だが減農薬などの付加価値が正しく評価されれば、経営安定だけでなく、消費者のコメ離れを食い止める効果も期待される。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年08月22日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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