【社説②・12.25】:キオクシア上場 半導体の生産基盤強化したい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.25】:キオクシア上場 半導体の生産基盤強化したい
多様な半導体製品の生産基盤を国内に構築し、日本の経済競争力を強化することが重要だ。
半導体大手のキオクシアホールディングス(HD)の上場を、半導体産業全体の復活へとつなげたい。
キオクシアHDが東京証券取引所のプライム市場に上場した。株価は売り出し時を上回り、時価総額は8000億円を超えており、投資家の注目を集めている。
キオクシアはパソコンやスマートフォンに使われるNAND型メモリー半導体を生産しており、世界シェア(占有率)は3位だ。
半導体産業は、技術の進歩が速く、巨額の投資を続けることが必要とされている。上場によって、設備投資や研究開発の資金を調達しやすくなろう。厳しい競争に打ち勝てるよう迅速に投資の判断を行っていくことが重要だ。
キオクシアは、経営危機に陥った東芝が、半導体事業の売却を念頭に、分社化する形で設立された。市況の悪化などで、上場は度々延期されてきた経緯がある。
上場を契機に、成長戦略を練り直す必要もあろう。NAND型メモリー一辺倒のため市況の変化に弱く、成長性に疑問符がつくとも指摘されているからだ。
日本経済を支える中核は、雇用の創出効果が高い製造業であることが望ましい。現状は自動車産業頼みの傾向が強まっており、半導体を、もう一つの核として育てていく意義は大きい。
1980年代後半に世界の半導体市場を席巻した日本企業だが、その後の存在感の低下は著しい。それでも、生産装置や素材にはなお強みがある。
国内では巻き返しへの動きが続く。台湾積体電路製造(TSMC)は、熊本県で先端製品を製造する。次世代製品の生産を目指すラピダスは2025年春に北海道で試作ラインを稼働させる計画だ。
半導体は生成AI(人工知能)向けなども今後、伸びていくとされる。生産基盤の構築により関連産業が活性化すれば、雇用創出や人材の育成も期待できる。
半導体は、トランプ次期米政権とも連携を深めていくべき有力な分野になる。キオクシアが米企業と半導体の生産で協力しているほか、米IBMもラピダスへ技術供与を行っているからだ。
また、電力を制御するパワー半導体では、日本企業は一定の世界シェアを持っている。しかし、企業ごとのシェアは小さいため、業界内の再編が競争力を高める有力な選択肢になろう。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月25日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます