【社説・12.25】:臨時国会閉会/熟議を深めて新しい姿を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.25】:臨時国会閉会/熟議を深めて新しい姿を
臨時国会が閉会した。衆院選で石破茂政権が少数与党に転じて初の本格論戦だった。
物価高対策を柱とする総額13兆9千億円の補正予算や、自民党派閥裏金事件を踏まえた政治資金規正法の再改正を含む政治改革関連3法が成立した。使途公開不要な政策活動費を全廃する野党案を、自民が丸のみする形で一定の結論を得た。与野党伯仲で丁寧な審議が不可欠となる国会の一つの成果と受け止めたい。
政治改革を巡っては与野党が計9法案を提出した。数の力に物を言わせた「自民1強」時代と違い、持論を押し通すだけで法案は通らない。首相も国会論戦に低姿勢で臨んだが、政策活動費廃止を掲げつつ「公開方法工夫支出」という例外を設ける自民案は野党から「新たな抜け穴」と批判され、撤回に追い込まれた。
国会議員に月100万円を支給する調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開や残金の国庫返納を義務づける改正歳費法も成立した。自民の抵抗で先送りされてきた懸案がようやく決着したのも国会の緊張感が高まった効果だろう。
ただし、旧文通費は使途が事実上制限されていない。来年8月の施行までに使途の範囲を厳密に定める必要がある。国民感覚を反映した改革の確実な実行が求められる。
積み残された課題も多い。最大の焦点である企業・団体献金は結論を来年3月末まで先送りした。禁止を求める立憲民主党など野党に対し、首相は「禁止より公開だ」と拒み、議論はかみ合わなかった。
立民の法案も政治団体を禁止対象から除いており、国民民主党や日本維新の会は「抜け道がある」と距離を置く。より多くの野党が結束し、自民に譲歩を迫るべきだ。
裏金問題では、多くの関係議員が衆参両院の政治倫理審査会に出席した。「秘書に任せており、還流は知らなかった」との釈明が相次ぎ、裏金づくりの目的や経緯、還流再開を誰が主導したかなどの実態解明は進まなかった。首相は党による再調査の要求も退けた。このまま幕引きを図ることは許されない。
補正予算には低所得世帯への給付金や光熱費の補助継続などが計上されたが、財源は国債頼みであり、緊急性の吟味は不十分だった。税制論議で国民民主が訴えた「年収の壁」ばかりが注目されたのも、補正予算成立を優先した与党の戦略に映り、政策効果の議論は深まらなかった。野党も政策実現を左右する責任の重さを自覚してもらいたい。
年明けには来年度予算案などを審議する通常国会が始まる。与野党はさらに熟議を深め、新しい国会の姿を示さねばならない。
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