【社説②・11.21】:セブン&アイ どの買収案が価値を高めるか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・11.21】:セブン&アイ どの買収案が価値を高めるか
カナダ企業から買収提案を受けているセブン&アイ・ホールディングスに、創業家が対抗する買収提案を行った。
取締役会は、いずれの提案が企業価値の向上に資するのか、公正に判断してほしい。
創業家が提案したのは、経営陣による自社株買収(MBO)という方式だ。自己資金や金融機関からの融資などにより、自社株を買い取って非上場化する。
一方、カナダのコンビニエンスストア大手アリマンタシォン・クシュタールによる買収提案は、今年8月に明らかになった。買収金額は7兆円規模に上る。
日米とカナダなどに広がる世界的な巨大コンビニチェーンを構築する戦略だとみられている。
これに対し、セブンの経営陣は10月、自力での企業価値向上を目指して、祖業のイトーヨーカ堂などを事実上、グループから切り離し、主力のコンビニに注力する構造改革策を発表した。
だが、市場の反応は鈍く、買収を防衛するために、迅速な経営判断が可能になるMBOへと切り替えようというのだろう。
巨額資金の調達法などMBOの実現には不透明な要素も多い。創業家グループは、クシュタールの提案より優れているなら、その点を具体的に示す必要がある。
買収提案は、セブンの取締役会から選んだ独立社外取締役で構成する特別委員会が検討する。
セブン―イレブンは、全国に2万を超える店舗を構え、国民的なインフラとなっている。
また、行き過ぎた株主資本主義を是正し、従業員や消費者などの利益も考慮した経営が求められているのも世界的な潮流だ。
特別委は、こうした社会的な責務も踏まえ、いずれの提案が妥当か結論を出してもらいたい。
セブン&アイの経営は、現状では不振が続いている。2024年8月中間決算の最終利益は、前年同期比で3割超の減益だった。物価高が続いてコンビニの来店客数が減少したことが響いた。25年2月期も減益を予想している。
国内のコンビニは、ファミリーマートとローソンとの3社で5万店を超え、飽和状態だ。セブンは成長への活路を見いだそうと進出した北米でも苦戦している。
クシュタールの買収提案に、セブンがどう向き合っていくのか、日本市場の先行きを占う上でも、海外からの関心が高い。セブンの経営陣が、自らの保身のためにMBOに頼っていると受け止められる事態は避けねばならない。
元稿:讀賣新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月21日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます