愛国者の邪論

日々の生活のなかで、アレ?と思うことを書いていきます。おじさんも居ても立っても居られんと小さき声を今あげんとす

丁寧な説明があれば人殺は良いのか!佐賀新聞社説にみる憲法九条黙殺論に大渇!憲法九条をどう使うか!

2014-03-07 | 憲法

予想したとおりの主張が出てきました!一見すると安倍首相の言い分を批判しているようでいて、実際は、安倍首相の土俵で相撲をとり、世論を戦争のできる国にもっていく手口が、ここでも明らかになりました。こうやって、憲法9条の「戦力」認識が、とうとう、海外に出ていって、人を殺すための「戦力」というところまできたことが明らかになりました。大ウソが白日の下に去らされるまで警察予備隊・保安隊、そして自衛隊と名前は変遷してきましたが、その本質が、地中から芽を出してきたと言えます。後は、「理由=口実」を見つけて、海外の兵士ばかりか民衆も、そして、日本の若者を殺す段階にまできたということです。

岡田議員の国会質問は、そもそも憲法九条とは何ぞや論を黙殺して、「手続き」論で質問する、詰めることで、「丁寧な話し合い」に道を開くための地ならしをしたものとして、歴史に、その名を刻しておかなければなりません。

まず、この場合「国民の理解を得る」ための「手続き」は必要ないものです。何故か。国民に「人殺しになれ」「国家のために死ね」ということを認めさせるからです。問題は「国家のため」「会社のため」「人のため」という言葉の違いだけであって人殺し乃至「死ね」ということには何ら変わりはないからです。これを国民に「理解させる」というのです。

政治家にそのような権利がどこにあるというのでしょうか。況やマスコミに、あるでしょうか。ある訳ないでしょう。あると言うのであれば、あの柏の通り魔殺人を含めて、様々な殺人は合法的なものになるでしょう。理由は簡単です。丁寧に理由を述べれば、許されるという論法だからです。全く馬鹿げた思想と論理です。

憲法は、個人の尊厳、生命、自由、及び幸福追求に対する権利、生存権、しかも平和的生存権、さらには財産権を掲げていることは常識中の常識です。これらの権利は、国政の上で最大の尊重を必要とするとされており、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられるとあります。これは、「国民」となっていますが、「諸国民」にも適用される思想です。

こうした憲法に違反していることは明らかです。如何なる理由があろうとも、この権利を破棄することは誤りです。

「如何なる理由」を排除する「理由」=「口実」が、以下の指摘です。全く想像力と創造力に欠けた視点と言えます。

容認には憲法改正が王道のはずだが、東アジアの安全保障環境が厳しくなった事態への現実的選択とも言える。共同作戦中の米艦船が攻撃を受けた場合、自衛隊艦船が反撃できないのでは日米安保に重大な支障をもたらす。緊急事態に即応できる法が整っていないのは確かだ。

この論理の誤りは、「王道」をいとも簡単に捨てるのです。こういうのは王道とは言わないでしょう。この王道とは「人類普遍の原理」、人間の尊厳です。紛争を人殺しで解決することが当たり前だった社会から、それを否定して、話し合いで解決するという「知恵」をもってきた人類の発展史を否定する思想です。この社説子は、人類の発展史を学んできたのでしょうか。

次の誤りは、「東アジアの安全保障環境」の「厳しさ」を放置し、助長してきたのは、誰か、その理由は何か、全く思考停止に陥っていることです。「安全保障環境」論は、誰から見た「環境」論か、意図的です。もし、これが許されるとすれば、一つには、侵略戦争であった大東亜戦争は正当な戦争となります。というように、理由は、どうにでもつくのです。また同時に、「カネがほしかった」「要求したから殺した」という「理由」が正当化されるのは当然です。何故か。生活が苦しく、働く場がないので、やむなく強盗をやった」「騒ぐ方が悪い」という「理由」をあげて、正当化するのと同じです。

「ほかの想定ケースにはどのようなものがあるのか」などという「ケース」を考慮する必要はないのです。人を殺すことが許されるか、否か、判断基準は、それだけです。様々なケースを次から次へと打ち出すことで、しかもありえない「想定」を、あたかも該当するかのようにゴマカシ・偽って判断基準を曖昧にしていくのが、手口です。「戦力」論が、その証拠です。

直ちに閣議で方針決定するのは事の重大性からして拙速すぎる。与党内協議を入れることにしたのは当然だろう」というのも、同じです。首相の「オ・ト・モ・ダ・チ」の妄想と暴言・不道徳を批判し、辞職すら迫れない与党です。その与党そのものが、暴走し、自浄力が欠落しているのですから、私的懇談会と同じです。

解釈変更の是非とともに、運用のあり方など論点は多い。さらに国会審議を通して国民的合意を目指すべきだ」と、一見「民主的」のようですが、「人を殺す」ための国家の根本的哲学の変更に国民的合意は不必要です。「武器使用は不可避で犠牲者が出る危険性は高まる」という言葉そのものが、想像力の欠如ぶりを示しています。「犠牲者」、他人事です。関係者は、こうした言葉、いとも簡単に発せられることに、どうでしょうか、居たたまれないのではないでしょうか。

東日本大震災の「犠牲者」、また震災に助かったものの、その後に亡くならざるを得なかった震災関連死の「犠牲者」、通り魔殺人の「犠牲者」などなど、、この言葉の奥に、何があるか、この社説子は、あまりに軽率ではないでしょうか。これは安倍首相などが簡単に使っている「御霊」「英霊」と同じです。

「安全保障問題は党派による主張や考えの開きが大きい」「国内世論を二分する可能性もある」ので、その「ギャップを埋める丁寧な説明が必要だ」から「慎重な承認手続き」を求めるという言葉そのものに、内容問題はスルーしていることが判ります。人を殺すか否か、二分論はありえないのです。「確な理由」「恣意的な憲法解釈」でなければ、人を殺しても良いのだという思想そのものは論外です。再度言っておきます。人を殺してはならないのです。

侵略戦争である大東亜戦争を反省した日本国憲法、その一つひとつの条文には、人間の尊厳が基盤・土台となっているのです。この思想を使って、侵略戦争を反省し、謝罪し、補償し、二度と起こらない装置として、憲法九条をつくったのです。憲法九条を活かすために議会制民主主義や地方自治制度をつくり、主権者が政治に不断の努力で参加することを、世界に向かって宣言したのです。これが戦後の国家像だったのです。

その理念を具体化するために、紛争は非軍事的手段で解決すると謳ったのです。

しかし、戦後自民党政治は、この基本中の基本、土台中の土台である憲法九条を真正面から受け止め、使ってきませんでした。それは「改憲」が「党是」だったからです。サボってきたのです。意図的にさび付いた装置に仕立て上げてきたのです。

充分使いきっていない装置を、今こそ使うことです。そのためには、東アジアでやるべきことは、

一つには、安倍首相派のような戦争認識を捨てること。

二つには、戦争補償を個人のレベルまで調査し、補償すること、そもそも、敗戦のドサクサを利用して、公文書を遺棄・焼却したことは、許されるものではありません。隠匿している資料は直ちに公開すること、個人的に保管しているものは、直ちに提出・公開することです。

三つは、こうした負の歴史を国民的レベルで学ぶこと。そのために博物館や学校において、徹底して学習すること。

四つは、負の歴史と同時に、その中にある戦争反対の声や運動など、歴史に評価されてこなかった、反戦平和・厭戦や抵抗など、小さな動きを集め、学習すること。

五つは、以上のことを前提にして、東アジアにおける戦争認識を共有化し、継承していくために、学び交流し合うことです。官民一体となって推進するのです。

六つは、領土問題など、不一致点についても、歴史的資料を集め、議論し、認識を共有化する、一致点を確認しながら、不一致点も明らかにしながら、資料発掘などを含めて共同研究と共同管理など、地域全体の利益の増進を確認することです。

七つは、こうした話し合いを通じて、政治分野においても、軍事面においても話し合いのテーブルを持ち、議論し合うのです。不一致点は保留するのです。

以上のことを確認しながら、政府間協議を行いながら、不一致点については、互いに、互いの主張を認め合いながら、共存共栄をはかっていくことです。紛争を暴力や武力による脅し・威嚇=武力抑止力論の立場は捨てるのです。これこそが憲法九条の精神です。これを政府間レベル・民間レベル等々、使いきるのです。そうして利益を分かち合うのです。

そうすれば、現在は「緊急事態に即応できる法が整っていないのは確かだ」けれども、何も軍事面だけが「緊急事態に即応できる法」ではありません。発想が貧困です。非軍事的手段を使い切るのです。

そこで出番は、国連です。日本国です。国連・日本国こそが、非軍事的手段による解決法を知っているはずです。それをプッシュするのは、国家の大小は関係ありません。問題は人類の歴史の到達点を知っているかどうか、なのです。

非軍事的手段によって、紛争を解決するなどという発想は未だ少数でしょう。だからこそ、この力を東アジアに注ぐための世論を大きくしていくのです。命を奪われることがないのですから、その方が安心安全、経済的にも利益があることは明らかです。憲法9条を持つ国として、これおほど当たり前のことはないと思うのです。後は世論です。

佐賀新聞 集団的自衛権の行使/丁寧な説明が必要だ 2014/3/7 8:07
http://www.saga-s.co.jp/news/ronsetu.0.2643266.article.html

 集団的自衛権の行使を禁じている憲法の解釈変更についての流れが固まってきた。安倍晋三首相は今国会の論議の中で、安全保障に関する有識者懇談会が行使容認を打ち出した後、4月から与党内の協議を開始し政府与党方針を決定すると述べている。

 野党が加わる国会論議はその先になる。一般の法案は閣議決定後に国会で議論することになるが、今回の憲法解釈の変更は平和主義の転換と取られかねない。国民の理解を得るのに、果たしてこの手順でいいのだろうか。

 これまで憲法解釈は内閣法制局を中心に積み上げられてきた。政権ごとのブレをなくし、解釈に一貫性を持たせる狙いがあった。憲法9条の制約の下で行使が認められるのは個別的自衛権まで、というのが従来の法制局解釈とされる。

 容認には憲法改正が王道のはずだが、東アジアの安全保障環境が厳しくなった事態への現実的選択とも言える。共同作戦中の米艦船が攻撃を受けた場合、自衛隊艦船が反撃できないのでは日米安保に重大な支障をもたらす。緊急事態に即応できる法が整っていないのは確かだ。

 また、首相は「積極的平和主義」を掲げ、自衛隊の海外活動を強化していく姿勢を打ち出している。しかし、時代に合わないところを解釈変更で対応するのはどうなのか。「最高責任者は私だ」と強硬な発言で波紋を広げたように、与党内にも異論がある。有識者懇談会は紛争地への弾薬、医薬品の輸送が可能かどうかなども議論しているという。紛争地で活動している他国部隊への輸送を想定したケースのようだ。従来、自衛隊の活動範囲については9条の制約を受けて「非戦闘地域」に限定している。

 アフガニスタン戦争では、インド洋に展開する米軍などの艦船への給油支援活動にとどめた。今回の想定でも戦闘に参加するわけではないが、紛争地への輸送は大きな方針転換となる。ほかの想定ケースにはどのようなものがあるのか、国際貢献の名の下に歯止めがなくなるのは許されないだろう。

 行使容認が決まれば、米軍に対する自衛隊による有事支援が、格段に向上するとされている。日米同盟が強化されるのは明白だが、従来は実施してこなかった海外での治安維持活動に加わる事態も考えられる。その際、武器使用は不可避で犠牲者が出る危険性は高まる

 検討の舞台となっている有識者懇談会は、首相の私的な諮問機関であり、メンバーも限られている。その結果を基に政府が原案をつくり、直ちに閣議で方針決定するのは事の重大性からして拙速すぎる。与党内協議を入れることにしたのは当然だろう。

 解釈変更の是非とともに、運用のあり方など論点は多い。さらに国会審議を通して国民的合意を目指すべきだ。

 今国会で首相は論戦相手によって答弁態度を変える姿勢が目立つ。安全保障問題は党派による主張や考えの開きが大きいものの、国内世論を二分する可能性もあるだけに、ギャップを埋める丁寧な説明が必要だ。長年にわたる議論を積み重ねてきた憲法解釈を変更するには、それだけ明確な理由がいる。恣意(しい)的な憲法解釈とならないよう慎重な承認手続きを求めたい。(宇都宮忠)(引用ここまで

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憲法九条を使って中国の軍拡を批判できない朝日毎日読売産経社説とNHK解説委員室の体質はこれだ!

2014-03-07 | 憲法

昨日の記事で、ネットウヨから左翼と言われている朝日や毎日、安倍首相から安倍内閣打倒を社是としていると言われても抗議もしない朝日と安倍首相の応援団・プロパガンダとなっている読売と産経、実は中国「脅威」論を煽るという点で、また憲法九条を無視・軽視するという点で、奇妙にも一致していることを検証しました。

そこで、今日は、その部分を抽出して、全文を掲載しておきます。一見批判しているようでいながら、実は、大筋で安倍首相派を応援している現在日本のマスコミの実態をご覧いただければと思います。

愛国者の邪論が、こうした視点に拘るのは、一つには、戦前において、天皇制政府が国民を総力戦としての戦争に動員できたのは何故か、という問題意識があるからです。そこには、新聞やラジオ、雑誌など、メディアがどのような役割を果たしたかということ。二つには、教育が。第三には、地域が。第四には、家庭が。第五には、会社など、生産拠点がどのような役割を果たしか、ということです。このことの事例は、以下のように、すでに記事にしました。

徴兵忌避者三國連太郎さんの思いを正確に伝えないマスコミに大喝安倍政権にも!思いを伝え憲法をこそ! 2013年4月16日

更に言えば、今NHKの朝ドラで放映されている「ごちそうさん」、そして山田洋二監督の「小さいおうち」に描かれている平凡な家庭が戦争に巻き込まれていく「プロセス」です。このことは現代においても同じです。「政治改革」「決まらない政治」「ねじれ解消」「身を切る政治」「社会保障のための消費税」「思いやり予算」「自虐史観」「自由主義史観」「積極的平和主義」などの日本語のウラにある本質を考えないまま、その時その時の「感情」「ムード」「風評」によって政治が展開していく。結果は、皆「神話」であって、暮らしはちっとも改善されないのです。

そして、そういう政治の結果に対しては、ホットスポット化させた伊勢の神様にお願いするとか、増税前の駆け込み買いに走るとか、政治を変えていこうというよりか、それを受け入れて、そのうえで、個人的に対応して、しかも、「風評」にもとづいて。

以上の日常生活が、先にあげたメディアをとおして日々垂れ流されているのです。今日放映された「ごちそうさん」でも、長男が「こんなやりたいことをやらせてくれない国を変えてやる」「死なないで帰ってくる」と言って出征していくのです。ここには、三国さんを含めて、反戦運動をしていた人たちを、「国賊・非国民」として「祭り上げ」、「孤立させ」一網打尽に捕縛していった政府のネライと装置の問題は出てきません。同時に、そうしたなかで、国民意識の中には、全国民的反戦運動・徴兵忌避運動などは想定すらできないのです。ただ自らの身体を傷つけて忌避をした人たちは、相当数いたことは、記録されています。しかし、これらは、あくまで孤立した個人的な「反抗」でした。

こうした構図は現代にも当てはまります。国民のたたかいを国民に報せないマスコミが、あまりにも多いということに象徴的です。このことについても、日々明らかにしているところです。その証拠記事が、以下一覧する朝日・毎日・読売・産経・NHKの記事なのです。

以下の記事にもとづく「諸事実」が、「これでもか、これでもか」と日々垂れ流されているのです。この情報に接した国民が、中国に対して、どのような「感情」を醸成するか、そして、また、それを批判し、それを口実に「積極的平和主義」の名の下に、集団的自衛権の行使から憲法改悪論を振り撒く安倍政権の口実の根拠となり、安倍政権を応援する一手一手となっていることは明らかです。ここに情報・印象操作の果たす役割が浮き彫りになってくるのです。こうした策略が「世論」となって、政策推進の根拠となり、あたかも国民の暮らしを改善してくれるかのような「錯覚」に放り込んでいくのです。しかし、結果は、一つです。

以下、本来であれば、憲法九条を語らねばならない部分について抽出し検証してみます。

朝日 軍拡が軍拡を呼ぶ悪循環の末路は人類の戦争史が物語る。過ちを繰り返さないためには何が必要か。各国指導者は今こそ真剣に考えねばならない。(引用ここまで

「何が必要か」って、こんなこと、戦後直後に出てますよ!憲法九条でしょう。「あたらしい憲法のはなし」を勉強すべきです。

毎日 ナショナリズムを利用した国内引き締めの意図を疑う。経済成長が鈍っているのに、国防費は12%増と群を抜く。習政権は「富国強軍」を掲げ、李首相も報告に日本の歴史認識批判を入れた。改革の本道は富を社会保障に回し強い民をつくる「富国強民」だ。(引用ここまで

「圧迫と偏狭」を排除することは憲法前文に明記されています。自国を尊重することと同時に他国をも尊重することについても「人類普遍の原理」として憲法前文に明記されています。「経済成長が鈍っている」のは、日本も同じ!まして消費税増税で国民生活と日本は疲弊します!「富国富民」は、憲法に明記された「福利」「恐怖と欠乏から免れる平和的生存権」「国民の幸福追求権」「生存権」の具体化です。それは国家の責任です。毎日は、このことを確認し、安倍政権にこそ、迫るべきです。

読売 日本は…艦船や航空機の偶発的衝突を避けるための対話も必要となろう…戦後秩序を揺さぶっているのは、むしろ中国…社会に動揺が広がっている。…財政難や、アフガニスタンでの戦争に区切りがつくこと…身勝手な中国の海洋進出を抑止する…日米同盟を強化するため、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更を急ぐべき…米軍のアジアでの抑止力を将来どう維持していくのか。QDRは日本や豪州、韓国などに「補完的指導力」を期待している。同盟諸国の知恵と能力も問われる。(引用ここまで

「対話」は、まさに憲法九条の思想です。それを「変更すべき」!自己矛盾でしょう!その矛盾に気づかない脳みそは、中国に対する「抑止力」に対抗して、憲法解釈を変更して日米の「抑止力」を「維持」する、というのです。これは最悪の悪循環です。この言葉そのものが、「抑止力」論の破綻を白状していますね。

産経 より重大なのは、そうした中国式の軍備増強が日本周辺の軍事力均衡を崩しつつあること…政府は防衛予算や自衛隊員数のさらなる確保に、国民の理解を求めるとき…力を背景に現状変更を狙い戦後秩序を壊そうとしているのは、当の中国ではないか。…その財源を環境の改善や社会保障の充実などに振り向けて、社会の足元を固める方が急務だろう。 (引用ここまで

「中国式の軍備増強が軍事力の均衡を崩しつつある」って、大爆笑です!産経の短絡的思考が浮き彫りに!日本の軍備に対して、中国が増強したから均衡が崩れるから中国は許せない、だから日米で更に軍備増強を!と言っているのです。可笑しいですね!こんなアホなことをやっているのではなく、そのカネをフクシマや東日本大震災、消費税増税ではなく国民の懐を温めることに使いなさい!ということです。産経の倒錯した、大ウソがバレバレです。

NHK 「戦後レジーム、つまり戦後体制からの脱却」をめざす日本の安倍政権を強くけん制する意図…安倍政権とは容易には妥協しないという強硬な意思表示…日本の一般国民と安倍政権とは、分けて、揺さぶりをかける…万が一の、不測の事態が起こらないよう、中国には、自らの軍備増強の透明性を高めることやまた、日本の防衛当局者との緊急連絡体制の整備など、平和を守るための努力を求めたい(引用ここまで

「安倍政権を強くけん制」って、ポツダム宣言を受諾した後につくられた国家の基本中の基本を定めた憲法体制からの「脱却」=否定を容認すると言っているようなものですね。頭が頭だと、こんな解説をするのですね。「一般国民と安倍政権」を区別するのは当然です。「揺さぶりをかける」って、これって安倍政権の見方ですよね。オイオイ!NHK!ってところです。「不偏不党・中立」って、こういうことですか?「万が一の、不測の事態が起こらないよう」にするためには、「安倍政権には」ではなく、「中国には」平和を守るための努力を求めたい」とNHKは、言っているのです。憲法九条を持つ日本国としては、違うでしょう!

 

それでは、以下全文を掲載しておきます。ご覧ください。

朝日新聞 中国の国防費/危うい軍拡をやめよ 2014/3/6 4:00
http://www.asahi.com/paper/editorial.html?

 中国の軍拡が止まらない。ことしの国防予算は昨年に比べて12・2%増えた。日本円にして13・4兆円にのぼる。日本の防衛予算の実に3倍近い。きのう始まった中国の全国人民代表大会(国会に相当)で報告された。財政支出の全体の伸びは9・5%だから、国防費の伸びは抜きんでている。 最近だけではない。89年以来、10年を除いてずっと2けた台の伸びだった。経済成長はペースを落としても、軍備は増強が加速している。 この頑強な軍拡のねらいは一体、何なのか。世界が強い懸念を抱くのは当たり前だ。 李克強(リーコーチアン)首相は「国防科学技術研究とハイテク武器装備の発展に力を入れる」と述べた。「海洋強国づくりに力を入れる」というのも気にかかる発言だ。一昨年、空母「遼寧」が就役し、2隻目として初の国産空母を建造中と伝えられる。核戦力も増強し、米大陸に届く長射程の大陸間弾道ミサイルの配備を進め、宇宙、サイバーへも手を広げている。発表分だけでも巨額だが、外国からの装備購入や研究開発費は別枠とされる。国際的に批判され続ける中国軍の不透明さは本質的に変わっていない。 周辺国が警戒する理由は、兵器のハード面にとどまらない。軍の強引な振る舞いが国の姿に色濃い影を落としている。昨秋、習近平(シーチンピン)国家主席は「周辺国との善隣友好関係を発展させる」と明言した。だが、ほどなく中国軍は東シナ海に不穏当な防空識別圏を設けた。李首相のインド訪問直前だった昨春にはカシミールの国境未確定地帯で、中国軍部隊が侵入して居座る事件もあった。責任ある大国としての地位を築きたいならば、近隣のアジア各国に理解され、信頼される必要がある。まるで前世紀初頭までのような強兵政策にひた走り、力による覇権を唱えるかのような姿は国際的な尊敬に値しない。核を含む国防政策と軍事費の情報を開示するのは、国連安保理常任理事国で、核保有を認められた国としての最低限の責務である。中国政府は説明責任を果たすべきだ。米国政府も、4年ごとに更新する軍事戦略を発表した。中国の軍拡を強く意識し、20年までに海軍艦船の6割をアジア太平洋地域に配置する。

 軍拡が軍拡を呼ぶ悪循環の末路は人類の戦争史が物語る。過ちを繰り返さないためには何が必要か。各国指導者は今こそ真剣に考えねばならない。(引用ここまで

毎日新聞 中国全人代/改革すたれ軍拡栄える 2014/3/6 2:00
http://mainichi.jp/opinion/news/20140306k0000m070173000c.html

 中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が開幕した。李克強首相が政府活動報告を行った。首相は、7.5%という成長率を目標として示す一方、軍備増強を強調した。世界の関心は中国経済が安定成長を続けるか、失速するかに集まっている。楽観論は多いが、前提は中国が大胆な経済改革を実行することだ。改革なくして中国の安定なしだ。だが改革の実権が昨年、李首相から習近平国家主席に移った。

 昨年の全人代では、首相に就任したばかりの李氏が国有企業改革などの改革に「壮士断腕」の決意を語った。毒蛇にかまれた指は自ら腕ごと切り落とす。李首相の改革姿勢は「リコノミクス」と称賛された。ところが中国共産党は昨年11月、党中央委員会総会で総書記の習主席を組長にした全面深化改革指導小組(深改組)を新設した。改革政策の立案権限は党に移り、2人の副組長には保守派が任命された。同時に、安全保障と治安を統括する国家安全委員会という新組織を設立した。今年1月、李首相も深改組副組長に加わったが、実権は習主席にある。習主席は最近「改革でおいしい肉は食べ尽くした。あとは硬い骨ばかり」「ひっくり返るようなことは避ける」と語った。中国の改革派は、市場経済化を進め、民間企業の雇用を増やし、社会保障制度を作ろうとしている。保守派は、共産党幹部やその子女が経営する大型国有企業の市場独占体制を守りたい。この勢力が「権益集団」だ。中国の改革は権益集団の抵抗を排除できるかどうかにかかっている。たしかに習政権は石油系の大型国有企業出身幹部を次々に汚職容疑で逮捕したが、勝負はその先の制度改革にある。国家安全委員会を作ったのは、経済の先行きに危惧があるからではないか。「内憂」が危険水域に達したとき、国民の目を「外患」に向けるのは珍しくない。

今年の全人代には、12月13日を南京大虐殺公式追悼の日に、9月3日を抗日戦勝記念日にする法制化案が出ている。毎年、柳条湖事件の9月18日に国恥記念日の行事がある。今年からは秋冬、反日行事が続く。すべて中華民国の時代に起きた事件だ。中華民国を武力で倒した中国共産党が、なぜ中華民国時代を記念するのか。歴史認識だけではあるまい。ナショナリズムを利用した国内引き締めの意図を疑う。経済成長が鈍っているのに、国防費は12%増と群を抜く。習政権は「富国強軍」を掲げ、李首相も報告に日本の歴史認識批判を入れた。改革の本道は富を社会保障に回し強い民をつくる「富国強民」だ。中国の改革の先行きを危惧する。引用ここまで

読売新聞 中国国防費膨張/平和を脅かす露骨な軍拡路線 2014/3/6 4:00
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20140306-OYT1T00018.htm

 アジア太平洋で覇権を握ろうと、中国の習近平政権が急速な軍備増強を進めている。中国脅威論にも拍車がかかろう。北京で全国人民代表大会が開幕した。中国政府が公表した今年の国防予算は、前年実績比12・2%増の約8082億元(約13兆円)となった。4年連続2桁の伸びで、日本の防衛費の3倍近くに膨れあがった。今回は、習国家主席と李克強首相が主導する初めての全人代だ。軍備増強への意思を露骨なまでに示したと言える。中国の国防費は、一段と不透明になった。昨年まで含まれていた地方分予算が、今年は除外されたためだ。研究開発費などを含めた実際の国防予算は、公表分の2倍程度に上るとの見方が強い。菅官房長官が、「国際社会の懸念事項になっている」として、中国に透明性の向上を働きかける意向を示したのは当然である。

 李首相は、施政方針演説にあたる政府活動報告で、「海洋強国の建設に大いに力を入れる」と強調した。「平時における戦闘への備えと、国境・領海・領空防衛の管理を強化する」とも宣言した。東シナ海や南シナ海で、権益拡大を図る意図が読み取れる。

 日本は、尖閣諸島周辺での領海侵入といった、中国の力による現状変更の試みが長期化することを覚悟せねばなるまい。同時に、艦船や航空機の偶発的衝突を避けるための対話も必要となろう。一方、李首相は、「中国は、戦後の国際秩序を守り抜く。歴史の流れを逆行させることは、決して許さない」と述べた。安倍首相の靖国神社参拝を念頭に置いた日本批判だとしたら、見当違いだ。一方的な防空識別圏設定などで、戦後秩序を揺さぶっているのは、むしろ中国である。

 首相報告は、難しい内政運営も浮き彫りにした。今年の経済成長率の目標を、3年連続で7・5%に据え置いたのは、景気の先行きに不安が広がる中で、安定成長を維持したい姿勢の表れだ。国民の反感が強い汚職について「いかなる腐敗分子も容赦しない」と断じ、大気汚染対策では石炭ボイラー廃棄などの数値目標を示した。具体的成果が問われよう。雲南省で無差別大量殺人事件が起こるなど、社会に動揺が広がっている。李首相は、治安対策をさらに強める考えを示した。国内での引き締めは、国民の不満をそらすための対外強硬姿勢につながりやすい。日本も、その動きを注視しなければならない。引用ここまで

読売新聞 米国防計画/「アジア重視」の実効性高めよ 2014/3/6 4:00
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20140306-OYT1T00023.htm

 国防予算削減を進める米国が、「アジア重視」を堅持する国防戦略を打ち出した。中国の海洋進出への対抗姿勢を示したことを評価したい。

 米国防総省が、オバマ政権で2度目の「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)を発表した。財政難や、アフガニスタンでの戦争に区切りがつくことを踏まえ陸軍兵力を第2次大戦後の最低水準に縮小する一方、特殊部隊やサイバー対策を強化する。安全保障環境の変化に応じて機動力や技術力を重視するのは妥当だ。アジア政策では、地域の平和と安定が、米国の「中心的な国益になりつつある」として、軍事的プレゼンス強化の方針を示した。中でも、2020年までに海軍の装備の6割を太平洋地域に配備すると明記したのは重要である。日本における海軍力も増強するという。在沖縄海兵隊などのグアム移転を進め、空軍の偵察能力を高めるとした点も注目される。こうした一連の措置は、身勝手な中国の海洋進出を抑止するためには、米国の存在感を改めて示すほかないと考えたからだろう。実際、QDRは中国について、海洋で米軍の接近を拒む戦略の展開や、軍の透明性欠如、サイバー・宇宙関連技術の向上などを指摘し、強い警戒感を示している。

 北朝鮮の核・ミサイル計画を懸念して、日本に2基目の早期警戒レーダーを配備するとした。不安定な金正恩政権を「脅威」と見ているためである。米国の「アジア重視」戦略の実効性を高める上で、日本も相応の役割を果たさねばならない。日米同盟を強化するため、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更を急ぐべきだ。年末に予定される日米防衛協力の指針(ガイドライン)の再改定によって、平時から自衛隊と米軍がより密接に連携する体制を構築することも必要である。

 気がかりなのは、アジアにおける米軍の抑止力が将来も継続するかどうか、不透明なことだ。米国の国防予算は10年間で約5000億ドル(約51兆円)もの削減を義務づけられている。QDRによると、このまま削減が続けば、現在の空母11隻態勢を維持できなくなり、米軍全体の危機対応能力が低下するという。米軍のアジアでの抑止力を将来どう維持していくのか。QDRは日本や豪州、韓国などに「補完的指導力」を期待している。同盟諸国の知恵と能力も問われる。(引用ここまで

産經新聞 中国国防費/秩序を崩すのはどっちだ 2014/3/6 6:00
http://sankei.jp.msn.com/column/topicslist/../../world/news/140306/chn14030603420000-n1.htm

 これでは、「中国の国防力は防御的」との説明は全く説得力がない。

 中国の全国人民代表大会(全人代)に提出された2014年予算案の国防費は、8082億3000万元(約13兆4460億円)と前年実績に比べ12・2%膨らんだ。経済成長率の目標が前年並みの7・5%にとどまる中での4年連続2桁増である。しかも、中国軍事費の財源全体は、表に出ている国防費の2倍以上ともいわれる。とどまるところを知らぬ中国の軍拡には警戒を強めざるを得ない。特に尖閣諸島などへの海洋進出攻勢の裏付けとなる海軍力の著しい増強は、日本はもちろん、東南アジア諸国にも脅威である。小野寺五典防衛相は国際的懸念に言及する形で「公表する数字と実態の数字にかなり疑問が残る」と述べ、米国防総省の「4年ごとの国防計画見直し(QDR)」も、中国軍の急速な装備近代化とその不明朗さを指摘した。中国指導部には、軍事費の透明性の確保を改めて求めたい。より重大なのは、そうした中国式の軍備増強が日本周辺の軍事力均衡を崩しつつあることだ。日本の平成26年度予算案の防衛費は前年度比2・8%増の約4兆8800億円ながら、公務員給与復活分を除けば実質0・8%増にすぎない。しかも、全人代の政府活動報告で李克強首相は「国境、領海、領空防衛の管理強化」を明言した。尖閣周辺を含む東シナ海や、南シナ海で中国海軍の動きがさらに活発化するのは間違いない。政府は防衛予算や自衛隊員数のさらなる確保に、国民の理解を求めるときではないか。

 報告では、「第二次世界大戦の勝利の成果と戦後の国際秩序を守り抜き、歴史の流れを逆行させることは決して許さない」と、厳しい対日姿勢も打ち出した。だが、力を背景に現状変更を狙い戦後秩序を壊そうとしているのは、当の中国ではないか。

 国内にはPM2・5に代表される環境破壊、格差拡大、腐敗、少数民族など深刻な課題が山積し、国民の不満を抑えるため巨額の治安対策費を投じている軍や治安機関の拡張で内外に脅威を広げるのではなく、その財源を環境の改善や社会保障の充実などに振り向けて、社会の足元を固める方が急務だろう。引用ここまで

 

全人代開幕 中国はどこへ向かうのか 加藤 青延  解説委員 2014年03月06日(木)午前0時~ 

(冒頭VTR)
先週末中国南西部で発生した無差別殺人事件。死傷者の数はおよそ百七十人にも上りました。去年秋には、北京の天安門付近に車が突入し観光客を次々にはねた上、炎上するという衝撃的な事件も発生。中国ではこのところ社会を揺るがす事件が続いています。今晩は。ご覧いただきましたように、著しい経済成長を遂げてきた中国も、ここ一年、その成長のひずみが次々と噴き出してきた格好です。こうした中、北京では、向こう1年の重要政策を決める全人代が開幕しました。そこで、今夜は、初日に示された政府活動報告をもとに、中国が今後どこへ向かうのか、冷え切った日中関係の課題も含めて考えてみたいと思います。 

  (VTR:全人代開幕)
中国の議会にあたる全人代は、毎年一回、この時期に総会を開き、今後一年の重要政策や予算などを取り決めます。初日の5日は、李克強首相が政府活動報告を行い、政府がめざす具体的な目標や施政方針を示しました。 

 この政府活動報告では、まず、ことしの経済成長率の目標を7.5%前後としたうえで、近年深刻化する環境破壊への対策や、ますます顕著化してきた経済格差の是正、さらに全国に蔓延する汚職腐敗に対する厳罰の方針が示されました。そしてもう一点、日本の安倍政権を強く意識した「異例の批判」が盛り込まれたことも注目されます。このうち、中国の国内政策を見る限りは、去年、中国共産党が開いた中央委員会総会の決定を、より具体化するような中身と見ることができると思います。 

 それ以前、李克強首相の下、経済の活性化につながると期待された、民営企業の重視政策。
つまり経済の主体を、国有企業から民営企業へ変えてゆこうという構造改革については、既得権益にしがみつく国有企業側の激しい抵抗を受けていることが浮き彫りになりました。
活動報告では、「奥深い部分の矛盾が浮き彫りになり、構造調整の陣痛期を迎えている」との表現で、その難しさを物語っています。実は、今回の活動報告でも重ねて強調されましたように、中国は国内に、非常に多くの矛盾や問題を抱えています。 

 ますます深刻度を増すPM2.5など、環境汚染問題しかり、体制を蝕む汚職の蔓延しかり。貧富の差や土地収用問題などをめぐって高まる国民の不満。冒頭にもお伝えしたような、凄惨な事件につながる民族問題。そして、いわゆる「影の銀行」の不良債権や不動産バブル崩壊の回避などに象徴される経済問題など、いずれも対策を誤れば、共産党の一党支配体制を崩壊させかねない深刻な難問ばかりです。こうした中、注目されたのが、新たにトップとなった習近平国家主席に、権力を集中させる動きでした。 

具体的にいいますと、中国では日本と異なり、大きな権力といえば、これまで国家のトップ国家主席と、共産党のトップである総書記、さらに軍のトップである中央軍事委員会主席の三つありました。習近平国家主席は、この三つだけでなく、この一年で、新たに作られた二つの権力、つまり、軍も含めた改革の司令塔となる「改革指導グループ」と、国内のテロ防止や周辺国との安全保障を統括する「国家安全委員会」のトップの座にもつき、はたから見ると、一人で完全に権力を独占した形になったのです。しかし、それが中国共産党内の権力闘争の結果そうなったのかといえば、私は違うのではないかと思います。実は、中国では、これまで、中央の指導部がいくら大声で号令をかけても、地方など下の組織にまで十分行き届かない。よほど強い力で抑え込まなければ、大きな国の隅々にまでその政策を徹底させることは難しかったのです。そこで、当面の山積する難問を解決するためには、権力の分散ではなく、逆に集中させ、統一した意思の下で、大ナタを振るわなくてはならない。さもなくば、もはや中国共産党は、その支配体制を長くは維持できなくなるという、引退長老ら実力者たちの危機感を、この権力の集中は、反映しているのではないかと私は見ています。そこで、力を握った習近平主席が真っ先に打ち出したのが、汚職取締り強化です。
 

そのスローガンは、「虎も蠅も一緒にたたく」というものです。蠅というのは、末端の役人。虎というのは、高級幹部のことを意味します。これまでは汚職摘発といってもほとんど、トカゲのしっぽ切りのような、「蠅たたきばかり」と揶揄されてきたのに対して、どんなに地位の高い権力者でも不正があれば、容赦なくたたくという、身を切るような決意を示したわけです。 

 とりわけ注目されるのが、共産党内に大きな政治的な影響力を及ぼしてきた石油閥といわれる、石油開発の利権にかかわってきた人たちの摘発です。すでに中堅幹部はかなり摘発しましたが、ここにきて「大虎」を退治できるかどうかが焦点となってきました。その大虎とは、前の最高指導部、政治局常務委員の一人で石油閥の重鎮。さらに公安部門を一手に握ってきた実力者・周永康氏です。これまでは、政治局常務委員という最高指導部ポストをつとめた人物は、逮捕されないという不文律がありました。しかし、その一線を越えられるのかどうか、注目を集めているのです。さて、今回の全人代で、もうひとつ大変気になることは、財政報告のなかで、中国の今年の国防予算が、またしても、大幅に増えたことです。 

 中国の国防予算、つまり軍事費は、25年前の1989以降、2010年を除き、ずっと二桁の勢いで伸びてきました。今年も、去年の実績と比べて12.2%増え、およそ13兆4000億円と大きな伸びとなりました。アメリカなどには、実際には、その2倍近くが軍備増強に使われているとの見方もあります。そして、そうした軍備増強を背景に、中国は、去年東シナ海に独自の防空識別圏を設定したほか、やはり周辺諸国と対立が続く南シナ海にも、防空識別圏を設定する計画があるとも伝えられています。中国は、「海洋強国」を目指すとして、やがて西太平洋と南シナ海全域の覇権を握ろうとしているのではないか日本をはじめ、中国の周辺国が不安や脅威を感じるようになるのも無理なからぬところです。ところが、今回の政府活動報告では、名指しを避けつつも、日本を強く意識した、異例ともいえる厳しい言葉が盛りこまれていました。 

今回の活動報告の中で、李克強首相は、「第二次世界大戦後の国際秩序を守り、歴史の逆行は決して許さない」と強調したのです。そこには「日本」という具体的な国名は出てきませんでしたが、「戦後レジーム、つまり戦後体制からの脱却」をめざす日本の安倍政権を強くけん制する意図があることは、ほぼ間違いないでしょう。単なる発言ではなく、政府活動報告という政策の柱となる文章にこのように明記した以上、安倍政権とは容易には妥協しないという強硬な意思表示と考えられます。ただ、同じ活動報告の中には、「周辺国との外交を全面的に推進し、善隣友好と相互協力を深める」との方針も書き込まれ、日本の一般国民と安倍政権とは、分けて、揺さぶりをかけるということなのかもしれません。ただ、このまま、政府間で十分な意思疎通を図れないまま、軍備拡張競争が進むこと。それは両国関係を、大変危険な方向に向かわせることにもつながるでしょう。万が一の、不測の事態が起こらないよう、中国には、自らの軍備増強の透明性を高めることやまた、日本の防衛当局者との緊急連絡体制の整備など、平和を守るための努力を求めたいと思います。(加藤青延 解説委員)(引用ここまで

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