太陽の照り返しがしばらく続ひた坂道から、ようやく木陰に入ると、そこの道端には紫陽花が咲ひてゐた。
その涼しげな色は、
今日の暑さで煮立ったやうになった私の心に、
一服の清涼をもたらした。
目的地へは遠回りになるが、この坂道を選んだことは誤りではなかったと、私は自身をもった。
さうだ、この坂道の頂きには水飲み場があった。
涼しく休めるベンチもあった。
陽は長い。
目的地には、日 . . . 本文を読む
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- 嵐悳江(あらし とくえ)──手猿樂師にして、傳統藝能創造家にして、鐵道愛好家にして、古道探訪者にして、文筆家氣取り。
雅号は「李圜(りかん)」。
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