迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

木漏れ日にいまを知るなりほととぎす。

2018-06-05 23:44:47 | 浮世見聞記
携へた夏扇も、この緑地帯では涼を取るより、虫を払ふのに役立つくらゐだ。 どこかの大學で『山岳部員募集』と、いかにも太平楽どもらしい立看板を見かけたが、これから社会へ出ればいくらでも、人生の谷やら崖やらを、滑り落ちることが出来るわえ── などと憎まれ口をきひてゐるうち、彩重(いろへ)なる梢の間から、藁葺きの大屋根の覗くのが見えた。 この先に里があるらしい── 私は心が躍った。 ……だが . . . 本文を読む
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