携へた夏扇も、この緑地帯では涼を取るより、虫を払ふのに役立つくらゐだ。
どこかの大學で『山岳部員募集』と、いかにも太平楽どもらしい立看板を見かけたが、これから社会へ出ればいくらでも、人生の谷やら崖やらを、滑り落ちることが出来るわえ──
などと憎まれ口をきひてゐるうち、彩重(いろへ)なる梢の間から、藁葺きの大屋根の覗くのが見えた。
この先に里があるらしい──
私は心が躍った。
……だが . . . 本文を読む
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- 嵐悳江(あらし とくえ)──手猿樂師にして、傳統藝能創造家にして、鐵道愛好家にして、古道探訪者にして、文筆家氣取り。
雅号は「李圜(りかん)」。
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