ぼんやりしさうなくらゐの暖かさに、つひ身を任せさうになって、これはいかん、と頭を振る。そして古道沿ひに手入れの行き届いた色鮮やかな躑躅に、やうやく目が覺める。人災疫病禍元年だった三年前の春に初めて知った、地元の花回廊のひとつ。もふ三年。町から人の姿が消えて、初めて町がきれいに見えたあの時にも、花たちはいつものやうに生きてゐたものだ。今宵はまた風が強い。花はどんどん散るだらう。今年は . . . 本文を読む
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- 嵐悳江(あらし とくえ)──手猿樂師にして、傳統藝能創造家にして、鐵道愛好家にして、古道探訪者にして、文筆家氣取り。
雅号は「李圜(りかん)」。
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