迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

しょうしょうこうこう。

2014-05-30 20:02:33 | 浮世見聞記
横浜ユーラシア文化館の企画展「福を呼ぶ中国版画の世界」を見る。


眼を射るような強い色彩に、むかしの庶民の、幸福へのふかい羨望を感じる。


もっとも、一握りの悪人をのぞいて、古今東西、庶民はしあわせにはなれない。


これは宿命ではない。


そのように仕組まれている。


そのかわり善良なる一般人は、“夢”を見ることだけは、許されている。

見るだけならば、何事も起こり得ないからだ。


よって衆人はそこに、あらゆる思いを託す。


託された側は、もちろん何もしない。


しかし衆人は、どこまでも善良だ。


「来年こそ……」


すべてが仕組まれたこの世界に、次などない。

あるのは、いまそこに見えている、現実のみ。


それでも善良なる一般人は、明日の幸福を夢見て、今日も版画を刷る。



そんな虚しい習慣を繰り返し、受け渡し、受け継いでいくうちに、それは伝統的風習となった。




今日のこされている数十点の版画は、破れるべくして破れた夢の、残片でもある。


それでもわたしはいつものように戸口へ護符を貼り、祈りを捧げる。



“みんなみんな、しあわせになれますやうに……”
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