わが敬愛する五島慶太翁の収蔵品で目に滋養を与えんと、五島美術館の「至高の陶芸─日本・中国・朝鮮─」展に出かける。
そこに展示されてゐるものはすべて真物、ゆゑに素直な気持ちで一つ一つを眼に焼き付ける。
さうすることが、浮世の真物と偽物愚物──ヒトも含めて──とを判別する、心の修練ともなるのだ。
見てゐて樂しくなるものが真物、
見てゐて可笑しくなるのが偽物愚物──
そして、十六世紀から十七世紀にかけての支那で景徳鎮の模造品として生産された漳州窯の粗放な繪付けを、「かえって雅味がある」と称賛できるやうな境地に達したとき、粋人は"ほんもの"となる。