東京都世田谷區の九品佛淨眞寺にて、東京都と淨土宗の無形文化財に指定されてゐる、「二十五菩薩 来迎會」を見物する。
人生の終はり──すなはち“お迎へ”の有様を視覺的に再現した法要行事で、實際に金色の佛頭を被った二十五人の菩薩役が、淨土に見立てた三佛堂と、
現世に見立てた本堂とをつなぐ通天(木橋)を行列して渡ることから、通稱“おめんかぶり”云々、
かつて初めて九品佛を訪ねた際にさういふ行事があることを知り、金色の佛頭を被った人々の冩真を目にしてその特異さに驚かされて以来、一度は生で觀たいと願へど間もなく發生した人災疫病禍のために延引が續き、やっと今日に御縁を結ぶ。
まずはいよいよ臨終の迫った往生人(九品佛開山の珂碩上人)のもとへ二十五体の菩薩が来迎(いわはゆる“お迎へ”)し、
そして上人を淨土へお連れしたあと、
衆人救済のため上人は再び現世に還って来る(還相)、と云ふ流れで、
一時間近くかけて現世と淨土とを一往復半する。
二十五体の菩薩役は一般公募の人々らしく、最年少(した)は三十代、最年長(うへ)は九十代と幅廣く集まり、大昔の大衆信仰のにほひを今日に傳へる。
通天からは時おり撒きものが行なはれ、衆庶はこぞって双手を挙げてそれを求め、或ひは地面に落ちたそれを貪り拾ふ。
……ああ、これぞ人間の“欲”。
この“欲”を捨て去った先に、たったいま再現された極樂淨土行きはあると思ふのだが、しょせんヒトはタダでくれる物には弱い、俗物でしかないのだ。