迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

まがきがしまぞうろうよ。

2015-11-08 22:02:21 | 浮世見聞記
水道橋の能楽堂で、宝生流の「融」を観る。



左大臣源融が心を寄せた陸奥国千賀浦の風景も、今は昔のものがたり。


籬島はあの日のままに見ゆれども、

汐汲む翁の涙はとどまらず、

やがて涸れ池を満面に浸したまふ。





おりからのぼる満月に、

左大臣(おとゞ)の衣は白く映え、

錦糸に彩られし鳳凰は、

金色に翼を翻し、

月の都へ入りたまふ。




ふと目覚めてあたりを見れば、

朽ちし屋敷の枯れたる庭に、

異国の船が浦を行く。


しかし籬島はあの日のまま。



籬島は、

あの日のまま。






夢なりとも現なりとも、

出逢ひたまふはこれすなはち、

ご縁のなせる力なり。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« あめふりたまふはしんりょなり。 | トップ | ニッポン徘徊―もみぢごろもの... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。