迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

くされゑん。

2012-04-18 20:47:32 | 浮世見聞記
「おや」

「あら」

「お久しぶり
お久しぶり」

「どちらまで行かれますの?」

「この切符が使える駅まで」

「ふふ。変わっていませんのね」

「わたしは変わるつもりなんてないさ。それであなたは?」

「“あの町”まで」

「ほう。またどういう風の吹き回しで?」

「そうねえ…。時が解決してくれたから、かしら?」

「なるほど。あれから…」

「七年、ですわ」

「そうだ、七年だ。あなたにとっては、長い時間だったろうな」

「そうね。決して短い時間ではありませんでしたわ。その間、色々な事がありましたもの…」

「あれらの出来事が、時効にしてくれたのかもしれないよ」

「まあ、時効だなんて…。いまはそんなもの、廃止になりましたのよ。ご存知なくて?」

「知っているさ。でも…」

「時効だなんて、そんなものわたくしの中にはありませんわ」

「……」

「わたくしの心は、法律なんかで縛れやしないのよ」

「まあ、その話しは止めにしようか」

「そうね。その方がいいわ。お互いのためにも」

「破滅はごめんだからな。それで“あの町”へ、何をしに行くつもりだい?」

「ふふふ。当ててご覧なさい」

「だいたい想像はつくがね…」

「でしょ?あの町には、思い出がありすぎますものねぇ。あなたも、わたくしも…」
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