昨日は今日の記憶。

通りかかった午前中の町なかで、突然に訓練用の避難警報が轟き、私は驚いて宙を見上げた。

“安全な場所へ避難してください”

どこ、どこ、どこ……？

私は身が固まり、頭のなかは真っ白になった。

明日で十二年となる、あの三月十一日の記憶が蘇る。

同じだ……。

あの瞬間と。

為す術なしに立ち尽くした、あの時あの瞬間──

体に刻み込まれた記憶は、

決して風化しない。