京浜急行の800形が、今月十九日をもってつひに引退した。
登場からどんなに時間を経ても、つねに“新車”らしい雰囲気を失はない、昭和らしい個性に溢れた車両だったと思ふ。
1500形はいかにも新型車じみたあざとい外観が嫌ひなので論外として、これで京浜急行の車両は総て、同じ顔だらけになってしまったわけだ。
駅で、
「どんな車両が来るかな……?」
との楽しみは、現在(いま)どの鉄道からも喪はれつつある。
確かに、電車を写真に撮るといふ楽しみも、私から喪はれつつある。
しかし、それでもよい。
用事がある時だけ利用する、移動用電動箱と割り切るだけのこと。
過去ばかりを見る人はまう終わってゐる──
と、亡き學者は言った。
そこで、私は付け加へさせていただかせていただく。
『いまの浮世から未来への期待(ゆめ)を語る人は、もっと終わってゐる』
みずからの手で記録し集めた資料から、
明日の計画を練る──
それが私の生き方。
京浜急行800形、
お疲れさまでした!