横浜都市発展記念館の企画展「後世に残したい、都市横浜の宝─館蔵コレクション展─」を、冩真の持つ価値(ちから)に重點をおひて観る。
昭和27年(1952年)に奥村泰宏氏撮影の異様に肥満な米兵の一枚、また同氏が前年に伊勢佐木町の街頭で撮らへた、物乞ひする傷痍軍人とその前を素通りする二人連れの米兵の一枚──
横浜の都市部は終戰直後から七年、爆撃し破壊した張本人たちである米國軍に接収され、米兵は自分たちでさうした一面の焼け野原を、我が物顔で闊歩した。
米國軍はその後視覺的には撤退したが、實際には現在(いま)も、その影は見え隠れしてゐる。
それらが、この國の自活力を奪っていったことは、確かである。
──今日の企画展で目にした二枚の冩真は、決して“過去の”風景ではないのだ。