迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

天命難陳。

2024-12-14 18:00:00 | 浮世見聞記
その流派の大事な戰力であった能樂師が、まだ五十代になったばかりの若さで今秋に急逝してゐたことを知り、息が詰まりさうになるほど驚く。

年齢よりずっと若く見える男前な方で、演能會では後見や地謠方で、その名前と優れた容姿を認識してゐた。

その方がいよいよ「道成寺」を披くにあたっては、一觀客として電話で切符を申し込んだところ、本人が電話口へ出て、とても丁寧な應對をして下さった。

その後、私が舞薹に立って仕舞をつとめるにあたっては賛助出演として地謠をつとめて下さり、この時に樂屋廊下でお目に掛かった際には、能樂について實にお素人な質問をしたにも拘はらず、やはり真摯に答へて下さった。

その數ヶ月後に再び仕舞をつとめた際にも地謠で賛助出演して下さったのがお會ひした最後、それから長い月日を經て今日接した訃報に至る。




「死」とは何人たりともいづれ平等に訪れるもの、と忘人の云ったのを聞いたか讀んだかした覺えがあるが、“いづれ”についてはまるで平等ではない、不公平なものをかういふ時に感じる。


さうした納得のいかない思ひを抱いたのは、これで何度目だらう。




合掌










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