昨日の晴天は昨日だけの夢、今日は朝から再びシトシト濡れる天気に戻り、さういふ日に外へ出る用事のあることは、傘を持たねばならぬ──常に片手が塞がると云ふ意味におゐて、面倒くさく思ふ。
用事と云っても、せいぜい地元の數驛、十數分間だけ電車に乗って移動するだけのことだが、
かつて人災疫病禍の真っ只中にあった令和二年、官が自宅軟禁令を發令して町からヒトの消えたなか、“有要有急”の用事で今日と同じ區間電車を利用し、久々の外出ゆゑに常ならば何も思はぬたった十數分間の乗車が、鐵道小旅行のやうな愛おしいひとときに感じられたことを、あの時と同じ雨模様の車窓を眺めてゐて、ふぅと思ひ出す。
そしてそれが、もふ昔の光景のやうに思へたのだから、ヒトの時世狎れとは恐ろしいものだ。