ため息をつくと、幸せが逃げるなどと言われ、
ため息をつくことは、良くないことと
私たちは、教えられてきました。
しかし、ため息には、多くの効能があるらしいです。
コメントに、
深く息をすることは、ため息のような?と、質問をいただきました。
私は、深く息をするのと、ため息は、近いものだと思っています。
そこで、ため息のススメ!
その根拠となるため息の効能について、イギリスの科学誌 ネイチャーに載った論文より引用します。
ため息は、生理学的反射運動である。
人は、疲労や安堵の状態にあるときだけでなく、これといった理由がなくても定期的にため息をつく。
ため息は、肺を大きく開かせる働きがあり、これは生命の維持に不可欠な動作なのだ。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校とスタンフォード大学の新しい研究で、
通常の呼吸をため息に切り換える役割を持つ脳幹内の2つの小さなニューロン群を特定したと述べている。
Nature誌オンライン版に2016年2月8日付で発表された研究論文によると、
呼吸に問題をかかえる人や強迫神経症的に頻繁にため息をつく人にも利益をもたらす可能性がある。
スタンフォード大学医学部の生物化学教授でハワード・ヒューズ医学研究所インベスティゲーターのマーク・クラスノウ教授によると、
「脳の呼吸中枢は、呼吸の速度を調整する単なるペースメーカーではなく、呼吸のタイプも制御している。
これは、少数の異なる種類のニューロンで構成され、それぞれが異なる呼吸のタイプを起動するボタンのように機能する。
あるボタンは通常の呼吸をプログラムし、
別のボタンはため息、ほかのボタンはあくびや鼻息、咳といった具合で、笑いや叫びのボタンもあるかもしれない」
クラスノウ教授の研究チームは
マウスモデルを用いて、動物の脳細胞における1万9000以上の遺伝子発現パターンをスクリーニングした。
そして、脳細胞同士の情報交換を可能にする2種の神経ペプチドのうち1つを生成し放出する、脳幹内の約200のニューロンを発見した。
しかしそれでも、これらのニューロンがどの脳細胞と交信しているのか、またそれがなぜなのかはわからなかった。
一方でフェルドマン教授は、
ヒトにもある同じファミリーのペプチドが呼吸に関係し、
ため息に重要な役割を持つ脳領域で高い活性状態にあることに気づいた。
「ため息を制御するこの経路をターゲットとする薬剤を見つけることも可能ではなかろうか」。
ため息は肺機能に必須であり、したがって生命維持にも必須であると言う。
「ため息は深い呼吸ではあるが、自発的な深呼吸とは違う。
通常の呼吸としてスタートするが、呼気の前に、2回目の吸気が行われる」。
人は平均して5分おきに、つまり1時間に12回のため息をしているという。
ため息の目的は、両肺で約5億ある肺胞を膨らませることだ。
肺胞は小さく繊細な風船のような袋で、血流に酸素を取り込み二酸化炭素を排出している。
しかし、個々の肺胞は時折つぶれる。
「肺胞がつぶれると、肺の酸素と二酸化炭素の交換機能が損なわれる。
元通りふくらませる唯一の方法がため息をつくことで、通常の呼吸の2倍の空気が運ばれる。
ため息をやめると、肺の機能は時間とともに落ちていく」
と、述べている。
自ら深い呼吸ができない人にとって、ため息を発動することは有効だ。
初期の人工呼吸装置は定常的に患者に深い呼吸をさせず、多くの患者が命を失った。
現在の人工呼吸器は、
ため息にならった量の多い空気を定常的に送り込むようになっているそうだ。
フェルドマン教授は、
「5分おきにため息をしていないと、肺胞はしだいにつぶれてゆき、肺の機能不全を引き起こす。
初期の人工肺患者は、ため息ができなかったために、このような問題をかかえていた」
と話す。
これと逆に、ため息反射を抑制できれば、
不安障害などのため息が衰弱をもたらしている精神医学的な患者に有効な治療となる可能性がある。
意識的なため息の感情的根源の背後にあるメカニズムは、まだ明らかではない。
「ある感情状態に関連してため息を引き出す要素があるのは確かだろう。
たとえばストレスを感じたときは、ため息の回数がふえる。
感情を処理する脳領域のニューロンが、ため息の神経ペプチドを解き放つということかもしれない。」
とフェルドマン教授は話している。
Nature - The peptidergic control circuit for sighing
http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature16964.html