入院中に、東京の小関智弘さんから分厚い封書が届いた。
小関さんは、芥川賞直木賞の候補に何度もなった作家さん。
家内が病院に届けてくれて、「なんだろう?」と思ったのだが、開けてびっくり。
《たまたま知り合いの方から送られた「別嬢」を読んでいたところ、貴君のお名前を知りました。》とある。
加古川の詩誌「別嬢」112号を読まれてのことだった。
その号には編集者の高橋夏男氏のお誘いでわたしも駄文を書かせていただいている。
それを読まれたのだ。
まず、小関さんのことだが、氏と知り合ったのはもう20年以上も昔のこと。
わたしが初めてともいえる詩集『工場風景』を30部ほど私家版で出した時、
詩人杉山平一先生がそれを絶賛して下さり、そして、小関さんにもお送りするようにと紹介して下さったのだった。
以後、ずっと交流が続いていて、西宮に講演に来られた時、一度だけお会いしている。
なぜ小関さんの所に「別嬢」が行ったかというと、中に猪狩洋という人の文章が5ページにわたって載っている。
そこに小関さんが登場しているのだ。
猪狩洋さんは、農民詩人猪狩満直のご子息。
満直は高橋夏男さんが、坂本遼、木山捷平と並んでその事跡を追いかけている農民詩人である。
その過程で夏男さんは洋さんを取材し、交流が生まれていたというわけ。
そして、小関さんと洋さんも旧知だった。
小関さんと洋さんの関係もドラマチックで面白いのだが、それは『働きながら…』をお読みいただきたい。
小関さんが送って下さった資料に、ご自身の著書『働きながら書く人の文章教室』(岩波新書)からのコピーがあった。
そこに、猪狩満直と洋さんが登場している。
この本、わたしも以前読んでいるはずだったが、内容は忘れていた。
一部紹介します。
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前後なんページかに、満直さんと洋さんのことが小関さんの温かい筆致で感動的に書かれている。
そして、洋さんが「別嬢」に書かれた一部。
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左側ページに小関さんのことが書かれている。
ということで、小関さんの便りにあった「知り合いの方」というのは洋さんだったというわけ。
ホントに世間は広いようで狭いもの。人の世、面白いものです。
人の世の本。
『完本コーヒーカップの耳』