詩集『雷がなっている』(朝倉裕子著・編集工房ノア刊・2000円+税)を読ませていただいた。
著者の朝倉さんは元「火曜日」同人。
帯文が以倉紘平さん。今は以倉さんのところで書いておられるんだ。
以倉さんはわたしも尊敬する素晴らしい人格の詩人。いいところへ行かれた。
朝倉さんの詩はともすると平凡に見えてしまうことがあって読み流してしまいそうになるが、実は油断ならない。
ひとつ短い詩を紹介しよう。
「ささやかな」です。
一見何でもないような詩。でも最後の一行に彼女の思いがさりげなく隠されています。味わえる詩といえるでしょう。
こんなのもどうでしょうか。
「ぼくのこと君にはどう見えるのか」
情景描写が上手いですねえ。
しみじみと読ませてくれます。味わい深い詩。
表題詩「雷がなっている」も良かった。特にその出だし。「急いでも急がなくても/歩調が変らないのはとしのせいだろう」なんて、ドキッとさせられます。読めば当たり前のことですが、こうして書かれてみると「そうだった!」と突きつけられるような衝撃。このあとは軽いユーモアが漂っている詩なのですが、最後は「遠くで/雷がなっている」で締められています。上手いものです。
ほかにわたしが衝撃を受けたのが「「抑留のあとさき」」ほか、何篇かの義父のシベリヤ抑留に関する詩。
ここには上げませんが重い詩群です。
実はこの「抑留のあとさき」は、もう十数年前に、この詩の元になる資料をわたしは彼女から戴いています。
A4版大型の冊子。144ページもあるもの。
貴重な写真もふんだんに使われており、日本の戦時資料としても貴重なものと思われます。
彼女の詩「抑留のあとさき」はそのことを取り上げて書かれていますが、難しい取り組みだったと思います。
でもこうして残しておかなくてはならなかったのでしょう。
また改めて散文にすることも考えてもらいたい気がしますが。
『雷がなっている』は編集工房ノア(06-6373-3641 )へご注文下さい。