喫茶 輪

コーヒーカップの耳

『小さな窓から』

2015-09-01 14:27:23 | 
いい詩集を読ませて頂いた。
桂木恵子詩集『小さな窓から』(編集工房ノア)である。
桂木さんとはお会いしたことはないが、この詩集を読ませて頂いてなんだか身近に感じさせて頂いた。

どの詩もいいのだが、取りあえず表題詩を、
 クリックで大きくなります。


著者は病院の薬局で働く薬剤師さんである。
あ、そうだ。「あとがき」を読んで頂くのが早い。
 

薬局の窓口を通しての人間模様が展開される。
人生の機微が、喜怒哀楽が淡々と叙されてゆく。無駄な言葉を省き、感情を抑えて、人の生死にかかわることを含め、人間模様が静かな筆致で書かれている。
作者の静かな、それでいて温かな視線が印象的。
一篇を取り立てて言うのではなく、全篇を通じて読むと、ある世界が立ち上がってくる。そこでは生身の人間が右往左往している。しかし騒がしくはない。これは作者の観察の細やかさの故だろう。患者のちょっとした日々の変化を見逃さない。それをキチッと書いてゆくことによって、滋味ある人間模様が描かれてゆく。
一篇一篇を紹介することはやめておこう。どうか、この詩集『小さな窓から』をお読みください。そして投薬口の内と外とを体験してみて下さい。
とは言いながら二編ほど紹介しよう。

これは「大きな目」。


最後の2行に作者の優しさが見える。

そしてもう一篇。巻末の「さよならも言わないで」です。
わたしは熱いものが込み上げてきた。



現代詩として最先端を行くというような詩ではないが、わたしはこんなのが好きなんです。もちろん作者もこの詩集で詩壇に認められようなんてことは考えておられない。誠実にご自分の心の中を見せて下さっているだけなのである。
桂木さん、ありがとうございました。
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