喫茶 輪

コーヒーカップの耳

「父さんごめんね母さんばかりひいきして」

2021-01-28 15:10:59 | 文芸
昨日いただいた川柳集『われもこう』島村美津子著を読ませていただいた。



これは凄い句集です。
いくつかご紹介します。
敢えて解説しません。
しだすときりがありません。しかも素人がやるとろくなことありませんので。

全部で130句あるのですが、いいですねえ。飽きさせません。


さくらにはなれずごめんねお兄ちゃん

老人も生きたいのですお月さま

生きてゆく軽いさみしい咳をして

変わりたくない変わりたいともふと思う

父かも知れぬ一つ大きな蝉の声

打たれ強いふりをしている雨蛙

針仕事こんなに平和だったのか

来るものは来る大根を煮ています

うつ伏して泣いた机のニスの香よ

父さんごめんね母さんばかりひいきして

あの人も話し相手がほしかった

どうしよう後ろに誰もおりません

父と兄とてんこち釣った須磨の海

悲しみのどん底ふっと眠くなる

花びらは死者の冷たさみんな死ぬ

動くものみんなさみしくなる日暮れ

夜よりもさみしい朝がはじまりぬ

さよならのかたちぼんやり見えてくる

詩を記す他には何も残さない

あかり消し誰にともなくありがとう


さすがに新子さんの愛弟子さんです。
こんなにシンプルで平易な言葉を使って、読む者の心を動かす。
まるで優れた童謡みたいです。
読む者の心に応じて、働きかけてくるような。

自分なりの解説を披露したくなってしまいますが、辛抱してやめておきます。


『完本コーヒーカップの耳』
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