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『少年百科箱日記』

2020-11-05 14:18:44 | 
滋賀県のH氏賞詩人、森哲弥さんから新詩集『少年百科箱日記』(土曜美術社)をお贈りいただいた。

これが9冊目の詩集だという。
精力的に書いておられる。
この詩人は豊富な語彙を駆使して見事に詩を織り上げるといったイメージがわたしにはある。
織り上がった織物は正に森哲哉ワールド。他の追従を許さない氏独特の世界である。
多少理屈っぽく感じられるときもあるが、それは思いもしない飛躍とともに展開されるもの。
そここそが森ワールドともいえる。
さて今回のこの詩集。これまでのとはちょっと違う。
まず「あとがき」をお読みください。

これ、笑えますねえ。
《「次の詩集は私にも分かる詩を」と妻にいわれました。妻のこの言葉は、詩に深く関わっていないがぼくにとっては親しい多くの友達の言葉でもありました。ぼくは基調イメージの幻想思考を組み立てての詩(難しいといわれている詩)以外の作品で詩集を編もうと考えました。》
ということで、この詩集はこれまでのとは趣が違う。
持って回ったような理屈は登場しない。
読んで、あっけないほど、一見淡泊とさえ思えるような詩がいくつかある。
しかし、よく読むと、理屈の小味もちゃんと残してあるが。

わたしが気に入った作品をいくつか紹介しよう。
「短刀」です。

イメージが凄いです。

「妻の手」

なんと心優しい詩だろうか。

「人、字を書く」

このあと二行ある。
《世界と人間の間は、まだ当分のあいだ/大丈夫だという気がしてうれしい。》
字を書く人の姿をこのような詩にした人がかつてあっただろうか。

「安楽椅子」

椅子のことが書かれているのか、人の形のことが書かれているのか?視点がユニーク。跋文を寄せておられる苗村吉昭さんが書いておられる。《年を忘れた少年。》と。その通り、童心なくしてこの詩は書けない。

童心といえばこの詩も。
「パンツのゴム」

ただの童心ではないが。

「肉弾」

子どもの頃の遊びが実に具体的に書かれている。これ、なかなか難しいと思う。
これによく似た遊びをわたしもした。私たちは「肉弾」とは言わず、「凱旋」だった。

ほかにも楽しい詩がいっぱい。
森さん、ありがとうございました。
どうかお元気で。
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