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シェイプ・オブ・ウォーター

2018年08月22日 21時35分43秒 | 洋画2017年

 ☆シェイプ・オブ・ウォーター(2017年 アメリカ 123分)

 原題/The Shape of Water

 監督・原案/ギレルモ・デル・トロ 音楽/アレクサンドル・デスプラ

 出演/オクタヴィア・スペンサー リチャード・ジェンキンス マイケル・スタールバーグ マイケル・シャノン

 

 ☆なるほど、人魚姫か

 1962年、アメリカ、航空宇宙研究センター。どこにあるのかわからないんだけど、どうやら、地方の港町のほど近くにあるようで、だから最後に海へ消えていけるわけだね。

 最初にいってしまえば、サリー・ホーキンスの夢から始まったとき、ふ~ん、夢っていうか昔の記憶かしらねって、ふわっとおもった。人間がふわふわした夢を見るのは太古から続いてきた血のせいで、人間が海の生き物だったときの記憶なんだとかって手塚治虫も言ってたけど、その記憶のなせる夢を見てるんだろうなっていうくらいにおもってたんだけど、そうか、人魚姫だったのかあ。

 人魚姫は歌が得意で、その美しい声とひきかえに海でひと目惚れした男に再会したいと願いを起てるんだそうな。なるほど、だから、途中で、サリー・ホーキンスがタップダンスのかたわら歌を歌うんだね。そのとき、心の声のようでもあり、でも現実の声のようでもある複雑な発声による奇蹟的な台詞が「愛している」とひと言だけ発するんだね。このひと言のために、彼女にもともとあったのかなかったのかわからないけど、ともかく声帯が機能したんだね。

 サリー・ホーキンスが一度ならず二度までもバスタブの中で自慰をするのはなるほど陸の上では彼女はエクスタシーを感じられず、それはつまり陸上の生物ではなかったことの証のひとつってことでもあるんだね。なるほど。それにしても、半魚人のペニスは貝殻のようなもので、中に仕舞われてるんだね。知らなかったな~。

 ふたりがようやく結ばれた後、通勤バスの中で、雨の水滴がふた粒だけ、風に逆らいながら窓ガラスの上をうごめき、やがてひとつの水滴になっていくのは、水の生物がひとつになったっていう象徴なわけだけれども、ここでも手塚治虫の『火の鳥・未来篇』をおもいだしてしまった。なんだか『海のトリトン』もだけど、どうも手塚治虫に匂いがするんだよな~。

 ただまあ、サリー・ホーキンスの首の両側が虐待によるものでないのは最初から明らかで、いかにもエラのような三筋の赤い傷跡なんだけど、そうか、最後の最後、ハリウッドのお約束の主人公の半魚人と悪役のマイケル・シャノンがふたりきりの戦いの後、ラストシーンでようやく彼女が物心がつく前に人魚姫だったときのエラが復活するってわけなんだね。

 ちょいと驚いたのは、半魚人を演じているのが怪奇な役ならお任せあれのダグ・ジョーンズだったってことだ。役者やな、ほんま。

 サリー・ホーキンスはこの後、変態するんだろうか。たぶんするんだろうな。半魚人になるのか人魚になるのかわからないけど、ともかく海の生物に戻るんだろう。

 小さい頃、怪獣の絵が一枚ずつになってる図鑑のようなものがあって、いろんな怪獣や妖怪が百枚くらい入った絵を買ってもらった。ぼくはそれが好きで、いつも見てた。その中に、半魚人があった。アマゾンに行ったらこいつに出くわすんだろうかとはおもわなかったけど、でもその絵でアマゾン川を憶えた。そうか、半漁人は海につながるアマゾンの神だったんだね。

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