◇蛍火の杜へ(2011年 日本 44分)
監督・脚本/大森貴弘 音楽/吉森信
出演/内山昂輝 佐倉綾音 辻親八 沢田泉 田谷隼 山本兼平 町田政則 後藤ヒロキ
◇上色見熊野座神社
そして少女はおとなになっていくのだけれども、こうした物語はここ半世紀あまり、漫画では常に語られてきた。
そうしたことをおもえば、異世界に足を踏み入れかけることのできる少年あるいは少女は、初恋という胸のときめきをときに幻想的な映像詩に変えてしまうちからを秘めているのだなとつくづくおもってしまうのだな。
かくいうぼくにもこうした物語に胸をときめかせた時代があったような朧な記憶はあるものの、それはやはり朝露のように儚いものでしかなく、今はほらこんなに老いてしまったんだよね。
ただまあ、この物語においてこれまでとは違った新鮮さを感じられたのは、少年にしか見えない異界の彼は、どうやら赤ん坊のときに死んでしまっているわけで、けれど魂を実体化させているため、この神秘的な森の中でだけ生きていることを許されているというか、まあいってみれば物の怪たちに守られていることになる。
だからこの森の生きものでない、つまり外部の人間に触れられてしまったとき、泡になって消えてしまうのではなく、実体化していた幻のような光が単に正体を現してしまうわけで、それを死というのか、ほんとうの消滅というのかわからないけれども、ともかく魂そのものまで失われてしまうんだね。
なるほど、そういうことだったのかと、観終わって想った。