◎日本列島(1965)
日本はアメリカに255の基地を提供している、ていうナレーションから始まる。これだけでも十分に衝撃的だ。
物語は、CIDのリミット曹長が殺されたことから始まる。死体が、否も応もなくアメリカに運ばれる。これに対して日本の警察は憤るが、CIDもまた困惑する。この不可思議な事態について、宇野重吉はいう。
「米軍に圧力が掛かった事件ですね」
では、圧力をかけたのは誰か。上層部か?
「いや。軍じゃないでしょうね。もっと強大な、おそらく…」
捜査会議は揉める。刑事は歯嚙みする。
「被害者は日本国内で死んでるんだ、われわれにも調べる権利がある。占領下ではない。日本は独立国としてお互いに協定を結んでるんですからね。それを無視して…」
宇野重吉の教え子のオンリーが死ぬんだけど、その蒲団の口許に包丁が置かれてる。小刀のかわりに包丁を置くしかないっていうことなんだろうけど、当時はみんなこういう風習を守っていたんだろうか?
神奈川県稲田登戸の陸軍化学研究所が登場してくる。紙幣の贋造が為されているのは、ドイツの印刷機だと。ここで映されてるのは本物だろうか?
黒幕は元キャノン機関の唐沢栄一郎。大滝秀治だ。悪党がよく似合うなあ。
宇野重吉は芦川よしみにいう。
「戦後七年の間に、スパイ機関は大変な資金を稼いだんですね。それらの金は、イラン、イラク、ラオス、ベトナムなど東南アジアにまで流れていったらしい」「なんに使われたんでしょうか?」「経済攪乱による兵器、戦略物資の購入など。あの辺じゃ、内乱とかクーデタとか、いろんな事件がつぎつぎと起こったでしょう?日本でもなにが起こるかわからん。最近、どっからかまた大量の麻薬が日本に流れ込んできてる。それに、新しい偽ドルも。(略)さらにもうひとつ、極東ブランチというスパイ機関があってね、リミット事件もそこからの圧力で揉み消されたんじゃないかと(略)こうした世界中のスパイ組織が入り乱れ、絡み合って対立し、政治そのものにまでなってきているのが日本の現実です。だから怖いですよ。それが外からはなにひとつわからないんで」
下山事件からスチュワーデス殺人事件につづく。これらがみんな一連の極東ブランチによる仕業だというのが熊井啓の主張するところなんだけど、松本清張をおもいだしたわ。