◇日本の夜と霧(1960)
ほぼ舞台劇なんだけど、台詞の失敗くらいじゃNGにできないほど予算がなかったのか、それとも大島渚は「それがリアルなんだ」というんだろうか?
で、戸浦六宏、哲学論争で気張る。
「歌や踊りがマルクス主義とどういう関係があるんだ?ロシアやスイスの民謡を女の子と歌うことが革命となんの関わりがある?」
映画の中でたったひとつほっとできた台詞なんだけど、この舞台劇のような大仰な台詞と長回しは、つまり、撮影期間が足りなかったってことね?長回しだし、フィルム不足だし、台詞を噛んだくらいじゃあNGは出してられないしね。
しかし、この学生運動と戦前の青年将校たちはどうちがうんだろう?
「宗教なら信じるか信じないかの二者択一でいい。しかし、政治というメカニズムの中ではあれかこれかという押しつけはよくないとおもう。それではあらゆるエネルギーを汲み上げることはできない」
戸浦六宏と渡辺文雄に向けられたこの台詞は学生運動にだけ向けられるものでもないような気がするんだが。ま、渡辺文雄は反論する。
「ひと握りの前衛が戦えば、あとの者はついてくるよ」
「しかしそのひと握りの前衛が前衛であるためにはあらゆる大衆の支援を必要とする。信じるか否かで切っていけば、それはもう政治じゃない。組織を抜きで学生運動は考えられないな」
まあ、こうした主義主張のつよい自己陶酔したような台詞の応酬なんだけど、時代だけは感じるものの、映画に入り込むのは辛いなあ。