Creator's Blog,record of the Designer's thinking

毎月、おおよそドローイング&小説(上旬)、フィールド映像(中旬)、エッセイ(下旬)の3部構成で描き、撮り、書いてます。

ドローイング777. 小説:小樽の翠689.幕間 海の風景を描く HD 1080p

2023年08月12日 | field work

 小樽には銭函海岸があり、数少ないビーチレジャーができる。この小説でもしばしば登場する。
 当初私は銭函海岸が函館本線の線路際にあると考えていた。こんな狭くてショボいところだから車窓の景色で十分だ。イラストだから大いにイメージを増幅させちゃえというつもりでいた。
 改めて地図をみると銭函海岸は、銭函駅から函館本線とは反対方向に海にむかって続く広い陸地にあり、この地域でも有数の海水浴場だということもわかった。おおっ!、小説で膨らませたイメージが現実に存在しているではないか。
 多くの街がイメージをつくってから現実の風景をみると萎んでくる。しかしイメージ通りに現実の舞台が存在するのが小樽の街である。だから小樽は好きですね。
 北海道を撮影する写真家は多い。その多くが自然の風景ばかりだ。私は自然ならダイビングで水中の世界を撮影しているので、それに興味はない。むしろ雪の古い集落の撮影ができれば出歩きたい気分になるが、今は集落そのものが存在しない。
 石川啄木は随筆「雪中行 小樽より釧路まで」の中で小樽を通過している。

「中央小樽駅に着きは着いたが、少しの加減で午前九時の下り列車に乗後れて了つた。仕方なさに東泉先生のお宅へ行つて、次の汽車を待つことにする。馳せ参ずる人二人三人。暖炉ストーブに火を入れてイザ取敢へずと盃が廻りはじめる。不調法の自分は頻りに煙草を吹かす。話はそれからこれへと続いたが就中の大問題は僕の頭であつた。知らぬ人は知るまいが、自分の頭は、昨年十一月の初め鬼舐頭病とくとうびやうといふのに取付かれたので、今猶直径一寸余の禿が、無慮三つ四つ、大きくもない頭に散在して居る。東泉先生曰く、君の頭は植林地か、それとも開墾地か、後者だとすれば着々成功して居るが、植林の方だと甚だ以て不成績ぢやないか!
 火を入れた暖炉の真赤になる迄火勢のよくなつた時は、人々の顔もどうやらほんのりと色づいて居た。今度こそは乗遅れぬやうにと再び停車場に駆け付ける。手にした切符は、
「ちうおうおたるよりくしろまで」

 現代では瀬尾明男さんの写真集「遠い海」が北海道最後の集落を昭和の最後の頃に取材している。彼の写真集とともに雪の北海道を旅している感覚になるところが素晴らしい。私も、こんなところで映像化したいと思うが、すでに古い集落やそこでの暮らしは存在しないだろう。

ドローイング777 海の風景を描く HD 1080p
映像:SONYα6000,E30mm/F3.5Macro.
ブログトップ画像:iPhon13pro
コメント
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