コタツ評論

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御社の営業がダメな理由

2006-11-21 00:41:25 | ブックオフ本
藤本篤志 新潮選書 680円

営業コンサルティング会社代表の著者が説く「凡人だけで最強の部隊」をつくる営業組織論。居着くという保証のないスターセールスマンは不要、大人は成長しないから研修は無意味、嘘ばかり書いてあって誰も読まない営業日報は無駄、上位2割は放置、下位2割を切り捨てて、真ん中の6割の「営業量」を上げよという指摘。もちろん、早朝出勤やサービス残業を当てにするのではなく、営業日報など書く数時間があれば、1本1件でも多く客先に電話し訪問させよ、働いているつもりで実は働いていない「結果的怠慢時間」を失くせ、それで「営業量」は増大し、売り上げ増につながるというわけだ。


では、営業日報なくして営業マンの管理はどうするか? マネージャーの「ヒアリング」と「同行営業」が有効だとする。1日30分の「ヒアリング」で形式化した営業日報とは比較にならない、その営業マンの日常の営業活動と営業能力を把握できるというのは説得力がある。営業マンとしてベテランのマネージャーが「同行営業」するOJT(オンザジョブトレーニング)によって、もっとも難しく経験値が高いクロ-ジング(受注)という営業能力を確実なものにできるというのもその通りだと思える。営業現場にいまだ根深く残る根性論や精神論を支えているのは、努力すれば人間は無限に成長するという一種の民主主義幻想である。

著者は、
営業能力=営業知識量+営業センス力+グランドデザイン力
とする。

このうち、訓練によって増やせるのは、営業知識量であって、第一印象や洞察力、ヒアリング能力などの営業センス力や、営業先への改善提案や次世代商品の予測などのグランドデザイン力は獲得するのが難しい非凡な資質と著者は語る。大器晩成の稀な例外はあるが、それを当てにして経営をするのは、宝くじが当たるのを予定して資金繰りをするようなものという。現有の、平凡だが勤勉な営業マンの営業量だけが当てにできるというわけで、タイトルは社長や営業幹部向けのようでいて、実は何百万といる平凡な営業マンの溜飲を下げるには役立つだろう。

だが、著者自身も繰り返し認めているように、以上のような指摘や分析に科学的な根拠やデータなどの裏づけはなく、ほとんどがかつて優秀な営業マンであり、営業コンサルタントとして活躍する著者の経験則によって導かれたものに過ぎない。

また、唯一の具体的な施策提案といえる営業マネージャーの営業マンに対する「ヒアリング」にしても、実現性に乏しいといわざるを得ない。1日30分のヒアリングを6人の営業マンに行えば180分、約3時間を要する。著者のいうように、営業マネージャーを営業ノルマから外して管理に専念させたとしても、彼は毎日5時間くらいはサービス残業しなければならないだろう。

さらに、営業センスを語るなかで著者もヒアリング能力は重要な資質のひとつと認めているように、なかなか獲得するのは難しい。他人の話を黙って聞くという過酷な抑制を毎日課せられるのは、法外な料金が得られる精神科医以外に耐えられるものだろうか。誰しも話したいのであって、聞きたくはないのだ。これも、自己表現・自己実現という一種の民主主義幻想なのだが。

正味の営業量の把握して問題点を正視しようという指摘、営業マンを叱咤する前に営業マネージャーがもっと働けという改善策、に留まり、営業量の増大がどのように仕事の質の転換に結びつき、組織を変えるのか、という組織論にはまだ至っていない。営業組織論は政治組織論にも汎用性があって魅力的なだけに、無いものねだりといえ、もう少し歴史的な考察がほしかった。

たとえば、「受注を取るまで帰ってくるな!」と部下を怒鳴る営業マネージャーの悪しき根性論や精神論が本書では自明のように否定されている。無理無体なだけの根性論や精神論はたしかに論外である。が、一方に日本人はプラグマティックな知性の持ち主だという証拠は山ほどあるのに、それと矛盾する根性論や精神論がなぜ残っているのか、いつから必要とされたのか。迷妄と簡単に否定し去ることができるものかどうか。

また、著者の営業方程式を成立させる企業とは、営業部門を外部化して、アルバイトや契約社員で代替しようとする日本の会社の大多数を占める中小企業に限られるように思える。著者の営業コンサルタントとしての蓄積が本書を書かせたのだから、それは当然のことでもあるが、はたして営業部門のアウトソーシングが不可逆な流れなのかどうか。「カイゼン」に代表されるようなプラグマティックな知性は、一時置き場のような組織に担われていくだろうか。

営業量の増大=売り上げの増大=利益の増大という等式は、営業コストの増大を見逃しがちだ。現有の平凡な営業マンの営業量を増やすという「原始的」な方策により、スターセールスマンへの高額なインセンティブや中途採用の募集費、新人研修費が不要となるというが、「ヒアリング」や「同行営業」に宛てる営業マネージャーの増員と管理者研修は避けられない。2割の優秀なセールスマンはクレームの予防と処理においても優秀だが、6割の平凡な営業マンではクレーム対応や処理が増大すると容易に予測できる。営業事務職の増員と残業も予想される。

このあたり著者がどのように解決するか、続編を読みたい。




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県知事の事件相次ぐ

2006-11-17 00:06:02 | ノンジャンル
田中康夫長野県知事選敗北以降(おいおい、中国語みたいだな)、建設汚職の疑いで佐藤栄佐久福島県知事が辞任、和歌山トンネル工事談合で木村和歌山県知事が辞職、と県知事の事件が相次いでいる。これらの動きと前後するように、

自民党の党改革実行本部(本部長・石原伸晃幹事長代理)は、10月30日に総会を開き、知事と政令指定市長の多選に制約を設けることで一致。4選目は推薦しないなどの基準を新たに設けて対応する考えが浮上している。首長の多選禁止は、前福島県知事の事件を受けて中川秀直幹事長が検討を指示。総会では、複数の出席者が、知事や政令指定市長の多選について「権限が強くて弊害が大きすぎる」などとして禁止を支持した(ASAHI COM)。

北海道警の裏金問題をスクープして日本新聞協会賞を受けた北海道新聞は、道警から陰日向なく反撃されて屈服しつつあるという話も聞く。時節柄、戦前の内務省復活か?と警戒感を抱くのは杞憂かな。信頼できない筋によると、次は岐阜だそうだ。
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永沢光雄が死んだ

2006-11-15 00:48:45 | ノンジャンル
AV女優にインタビューした『AV女優』(ビレッジセンター)は名著だった。いわゆるエロ雑誌で糊口をしのぐフリーライターにも、こんな優れものがいたのかと驚いた。一読すれば、誰しも小説を書かしたいと思うほど、インタビューの一編一編に短編小説の味わいがあった。AV女優たちは、かなり不幸な生い立ちだったり、変な考えの持ち主だったりだが、まぎれもなく俺たちの妹や娘であることが、永沢の筆によってわかった。身体を壊しながら、ひどい酒飲みだったらしい。冥福を。

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嫌われ松子の一生

2006-11-15 00:14:08 | レンタルDVD映画
な、な、中谷美紀が素晴らしい。というか、川尻松子は、この時期の中谷美紀しかできない。『オズの魔法使い』のジュディ・ガーランドのように。そう思わせるほど、中谷美紀は完璧。映画としても10年に一度の傑作。


一言でいえば、メルヘン映画だ。『オズの魔法使い』のように。また、メルヘンでなければ松子の一生は描けない。そんなギリギリのところで成立した映画だと思う。これほど凝った造りをするには、大変な苦労と苦心があったろう。だから、笑えるし、泣ける。しかし、ズンと骨太の人間賛歌だ。

「人は何をされたかではない。人に何をしてあげたかだ」。
松子は、「何をされたか」。そりゃあ、酷い目に遭わされた。しかし、松子は挫けなかった。それでもいいが、こうともいえる。無事平穏の日常より、まるで1時間が1分のように過ぎ去る濃い時間を松子は選んだのだ。

中小企業の社長が騙されて返しきれない借金を背負い、死に物狂いで資金繰りに駆け回り、強盗しようか一家心中しようかという日々を、何とかしのいで社業順調になった現在から振り返ったとき、もちろん懐かしくなんかない。酷い目に遭った、と思うし、いうだろう。しかし、現在とその時とどちらが濃い時間だったか。それは決まっているのだ。

「曲あげて伸ばあして~お星様をつかもう~♪」。
お星様はけっしてつかめない。だが、それでも腕と身体を曲げ伸ばそうとする。星には近づくことすらできないのは本人がいちばん知っている。それが濃いということだ。でも、曲げて伸ばしているその瞬間は、誰のものでもないその人の時間だ。嫌われても松子の一生なのだ。かけがえのないただひとつの時間。そんな一生はどうだい? メルヘンに乗せて、観客の私たちを指さしているのだ。

「曲あげて伸ばあして~お星様をつかもう~♪」。当分、頭のなかでリフレインしそうだ。それにしても、松子がヒンズースクワットで、曲げて伸ばしている場面が繰り返し挿入されるのは、可笑しくて涙が滲む。滑稽な聖女。こんなメルヘン観たことない。ざまあみやがれハリウッド!

香川照之(脂がのって旬!)、黒沢あすか(初見、こんなよい女優がいたのか!)、伊勢谷友介(よい。ただ、若かった頃の北村一輝に演じさせたかった!)など、映画で育った俳優たちがこの映画に貢献している姿は嬉しい。あのね、韓流映画なんぞちょっと休んで、ぜひこれ観てください。いずれ古典になります、世界の。
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嫌われ松子の一生

2006-11-14 01:18:44 | ノンジャンル
明日はこれを観る予定。ただ中谷美紀がなあ、色気ないしなあ、借りちゃったしなあ、中谷美紀がなあ、骨張ってるしなあ、借りちゃったしなあ、中谷というと、中谷 巌と中谷一郎と中谷彰宏の顔を思い浮かべるしなあ、借りちゃったしなあ、中谷美紀がなあ、「ケイゾク」で「オマエ、頭臭いぞ」といわれた女だしなあ、嫌だよなあ、そんな女。
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