<金曜は本の紹介>
「これからのリーダーに贈る17の言葉(佐々木常夫)」の購入はコチラ
この「これからのリーダーに贈る17の言葉」という本は、東レという会社で約40年勤めた経験や家族のリーダーとしての経験から、リーダー論をエッセイとしてまとめたものです。
著者が本物のリーダーとして敬愛する経団連会長などを務めた土光敏夫氏、宅急便事業を成功させたヤマト運輸の小倉昌男氏などについても書かれています。
著者の佐々木恒夫さんは、東レでは主に企画や管理などいわゆる「スタッフ部署」を歩み、取締役を務めたあと、東レの子会社である東レ経営研究所の社長となり、この間に赤字事業・会社を再建したり、新事業の開発や開発事業の展開などの陣頭指揮をとってきたほか、東レ3代の社長に仕える機会にも恵まれたようです。
一方、家庭では数多くの苦難が訪れたようです。長男は自閉症をもって生まれ、彼をサポートするために多くの時間を費やし、その後、妻は肝臓病を煩い入退院を繰り返し、家族に負担をかけていることを気に病んだことからうつ病も併発して絶望的な気持ちになったこともあるようです。
そうした経験や苦労を踏まえたリーダー論はとても説得力があり、また胸を打つものがありました。
特に以下には考えさせられ、また勇気づけられました。
・己のなかに「自分の志をなんとかしても実現したい」というピュアな思いが必要
・人間の究極の幸せは、人に愛されること・ほめられること・役に立つこと・必要とされること
・無私の心が必要
・ほうぼうでカベにぶつかりながら、とことん悩み抜くこと
・自ら約束を守る、嘘をつかない、間違いを正す、悪口は言わない
・うまく行かなかったら自分に原因があると考えること
・あえて批判を求めること
・相手を変えようとしてはならない
・お互いを活かす方法を考える
・組織全体を底上げするには特に落ちこぼれの2割を育てること
・企業の存立基盤は「世のため人のため」に貢献すること
・今日の行いを昨日よりよくしようという真摯な気持ちが必要
・苦しみこそ志の源であり、志こそリーダーシップの源
とてもオススメな本だと思います!
以下はこの本のポイントなどです。
・現実に組織を動かすときに「武器」は欠かせない。それを象徴するのが、中坊公平さんの「正面の理、側面の情、背面の恐怖」という言葉である。言うことを聞かない部下がいれば、きちんと理をつくして従うように説得をするとともに、従いづらい理由があるならば、その心情にも理解を示す。それでも言うことを聞かないならば、「わかっているな?」ということである。「恐怖」はできるだけ使ってはならないが、これがなければリーダーの仕事ができないのは否定しようのない現実である。しかし、この「武器」は諸刃の剣である。これに頼りすぎると、リーダーはその本来の力を失ってしまうからだ。
・大切なのは、己のなかに「自分の志をなんとしても実現したい」というピュアな思いがあるかどうかなのだ。そして、つらくても、苦しくても、その思いをとげるために自らを、その志に向けてリードし続けることができるかどうかなのだ。その思いが本物であれば、きっと周りの人は動き出す。そのとき、私たちは初めてリーダーシップを発揮することができるのだ。
・人間の幸せは、ものやお金ではありません。人間の究極の幸せは次の4つです。人に愛されること、人にほめられうこと、人の役に立つこと、そして、人から必要とされること。愛されること以外の3つの幸せは、働くことによって得られます。障害をもつ人たちが働こうとするのは、本当の幸せを求める人間の証なのです。
・「無私」とは、己を滅することではない。「無私」とは、「私欲」のために生きるのではなく、社会のために貢献しようという「志」に従うことである。それこそ、リーダーシップそのものであり、己を最大に活かす道なのだ。
・上を見て生きろ、下を見て暮らせ-。
これは、私が大切にしている言葉である。「上を見て生きる」とは、志に従って生きるということであり、「下を見て暮らせ」とは、目の前の仕事で一つひとつ結果を出すことによって足下を固めていくということである。志に価値が生まれるのは、なんとしてもそれを実現しようと全力を尽くすときである。たとえ、失敗してもあきらめずにやり抜こうとする姿にこそ人は共感を寄せるのだ。だから、とことん結果にこだわらなければならない。そのような姿勢こそが、リーダーシップを磨き上げるのだ。
・現実にぶつかることだ。修羅場のなかに飛び込んでいけば、いやでも自分の頭で考えざるをえなくなる。そして、ほうぼうでカベにぶつかりながら、とことん悩み抜くことだ。現場の現実こそが、私たちの最高の教科書なのだ。そして、現実と苦闘していない人に、決してリーダーは務まらないのだ。
・いったい、信頼とは何であろうか?それは、きわめてシンプルなものである。約束を守る。嘘をつかない。間違ったことをすれば、謝ったうえで改める。人の悪口は言わない。こんな幼少時に教わったことを、愚直に実行することである。それは、他者に求めるのではなく、自らが実践することである。ときに相手に裏切られることもあるだろう。しかし、それでもなお、これを自らに課し続ける。そうすれば、いつか必ず相手も信頼を寄せてくれるようになる。リーダーシップとは、このような信頼の循環を生み出す「起点」となることにほかならない。
・「問題が発生したら、考えて考え抜く、悩み抜く。寝ても醒めても考える。すると不思議なもので、何かの拍子にアイデアが出てくる。それでもどうにかならなかったら他人に相談すること。上司・同僚・取引先に相談できる相手がいるのといないのでは何倍も知恵に差がつく。そして最後は決断。人の判断など完璧なものはあり得ない。半分は間違う。間違いが分かったら意地をはらずすぐに改める。こういう行動=リスクテーキングにおってはじめて経験として君の身についていく」
・私たちは肝に銘じなければならない。異質な者を尊重せよ。あえて批判を求めよ。そういう生き方こそが、ダイバーシティを生み出すのだ。そして、自らを過ちから遠ざけることができるのだ。
・相手を変えようとしてはならない。小異を認めて、お互いを活かす方法を考える。それが、明日を切り拓くリーダーの発想なのだ。
・世間では「2ー6ー2の法則」とよく言われる。職場で優秀なのは2割の人で、6割は普通の人、残りの2割は”落ちこぼれ」というわけだ。これは、一面の真実である。たしかに、現実の職場を見渡せば、ほぼそういう構成になっている。そこで、勘違いする管理職がいる。”落ちこぼれ”の2割をできるだけ早く異動さsて、優秀な人材を獲得しようとするのだ。しかし、そんなことをしても強い職場をつくりあげることはできない。当たり前のことで、新たな「2ー6ー2」が形成されるだけのことだからだ。社長の立場からすれば、”落ちこぼれ”の2割を育てもせず、手放そうとする管理職など「リーダー不適格」と判断せざるをえない。求めているのは、優秀な部下こそ手放し、”落ちこぼれ”を優秀な人材に育て上げるリーダーだ。そのサイクルが回ってこそ、組織全体の力も底上げされるからだ。そもそも、人間の能力にそれほど大きな差があるわけではない。いわば、100mを14秒で走るか16秒で走るか程度の差でしかないのではないだろうか。にもかかわらず、ほんお小さな差をことさらに取り上げて、「あいつはできる、こいつはできない」と評価をつけたがるほうがどうかしている。「こいつはできない」と評価された人がやる気をなくすだけではないか。どんな”落ちこぼれ”でも、手をかければ必ず育てることができる。
・”落ちこぼれ”の2割を育てようとするリーダーのいる職場は、おしなべて士気が高い。なぜか?「このリーダーは、われわれを育てようとしている。そして、何があっても自分たちを見捨てない」そういう信頼感をメンバー全員が共有するからだ。そして、メンバー同士で競争するのではなく、お互いに支え合って職場全体で成果を勝ち取ろうという気運が生まれる。それこそ、孟子のいう「人の和」なのだ。だから、私は断言したい。すべての人を活かすー。これこそ、リーダーの基本なのだ、と。
・何かのきっかけで「やり方」を身につけたとたんに”化ける”というのはよくあることだ。リーダーがその可能性をつぶすようなことを決してしてはならない。その意味では、「人間に対する信頼」こそがリーダーの条件なのだろう。
・利益とは、あくまでも企業が生きていくための条件にすぎない。決して、利益は企業の存立基盤とはなりえないのだ。では、企業の存立基盤とは何か?それは、社会のよき構成員として、顧客のため、社員のため、株主のため-すなわち「世のため人のため」に貢献するという倫理観にほかならない。企業の行動基準の第一に安全・防災・正直・真摯という、社会のなかで揺るがせにしてはならない倫理観が貫かれていなければならないのだ。
・私が心底、丹羽さんを「本物のリーダー」だと思ったのは、その「退き際」をみたときだ。社長就任時に「任期は6年」と明言していたが、実際にあっさりと後任にゆずり会長に就任。その会長職もまたあっさりと手渡した。世間はよくみているもので、これほど優れた経営者を放ってはおかない。政府は中国特命全権大使という重責を用意。懇請を受けた丹羽さんは、現在、その職で力を振るっている。なかなか本人のいう”タダの小父さん”にはなれないというわけだ。考えてみれば、不思議なものだ。自分は人の上に立つ地位に昇ったと得意がっている人は世の中からはそうとは見られず、丹羽さんをはじめ、”タダの小父さん”になりたい人ほどリーダーとして担がれるのだからー。
・「今日の行いを昨日よりよくしよう」という真摯な気持ちこそが、周りの人のポジティブな気持ちを引き出すのだ。そして、それはリーダーシップそのものなのだ。このときに気づいたときに、私は強く勇気づけられるとともに、自分もそうありたいと思った。人間は、器の大小が問題なのではない。大きい者も小さい者も、それぞれの悩みを抱え、それぞれの人生を生きている。その大小を比べたところで意味はない。大切なのは、天地開以来はじめて訪れた「今日」という日である。貧乏人にも王様にも、みな平等にやってくる「今日」という日を、それぞれ「日々新」に生きることだ。大きい者は大きいなりに、小さい者は小さいなりに、己を高めようとする「志」こそが大切なのだ。
・首相であれ、社長であれ、課長であれ、新入社員であれ、フリーターであれ、主婦であれ、高齢者であれ、全体のために、社会のために貢献しようというリーダーシップに上も下もない。すべて、対等な関係にあるのだ。そして、お互いのリーダーシップを尊重し合い、高め合うことによって、社会や組織の力は最大化されていくのだ。
・小倉さんは、「福祉」の考え方にも疑問を投げかけた。特に印象に残るのは次の言葉だ。「障害者はかわいそうだから保護しなくてはいけない、というのも間違っていると思う。(中略)働くというのhつらいことだ。つらいからこそ、喜びもある。最初から保護したら、「働こう」という気持ちがなくなってしまう。障害者から働く喜びを取り上げてはいけない」。
・「人間にとって何がつらいといって、自分が何の役にも立っていないと感じることほどつらいことはないのだ」私は思う。小倉さんは、「死にたい」と思うほどの苦しみのんかで、「世のため人のために役に立ちたい」という志を心の奥底に固められたのではないだろうか。それこそが、生きる意味であり、生きる喜びなのだと、心に深く刻まれたのではないだろうか。だからこそ、「利用者の視点」を徹底的に追及するビジネスとして、宅急便を成功に導くことができたのではないか。荷物を届けたお客様から「どうもありがとう」と言われる、そんな宅急便ドライバーの生き甲斐を大事にされたのではないか。
・逆境、苦しみ、悲しみ・・・・・。私たちの人生は試練に満ちている。ときに、受け入れがたいほどの苦しみを味わうこともあるだろう。しかし、忘れないでいたい。苦しみこそ、志の源であるのだ。そして、志こそ、リーダーシップの源であり、命に輝きを与えてくれるものなのだ。だから、最後にこの言葉を贈りたい。私も、この言葉を生き抜きたいと考えているのだ。「志」を旅しよう。それが、リーダーという生き方である。
<目次>
第1章 自分自身のリーダーであれ
1 己のなかに、熱意を抱け。
2 リーダーとは、「志」に従う者である。
3 「無私」こそ、己を最大に活かす道である。
4 上を見て生きろ。下を見て暮らせ。
第2章 自分の頭で考え抜く
5 現実に全力でぶつかれ。それが、「考える」ということだ。
6 信頼を求めるな。それは、自らつくり出すものだ。
7 「志」をもつとは、言葉をもつことである。
8「常識」を磨き上げろ。
第3章 本物の自信をもつ
9 異質な者を尊重せよ。そして、あえて批判を求めよ。
10 相手を変えようとするな。「小異」を活かす人間になれ。
11 すべての人を活かせ。
12 倫理は語るものではなく、どこまでも実践するものである。
13 本物の自信をもて。
第4章 「志」を旅せよ
14 大きい者は大きいなりに、小さい者は小さいなりに、己を高める「志」こそ大切だ。
15 リーダー湿布とは、高め合うものである。
16 逆境こそ「志」の源である。
17 「志」を旅しよう。それが、リーダーという生き方である。
面白かった本まとめ(2012年上半期)
<今日の独り言>
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この「これからのリーダーに贈る17の言葉」という本は、東レという会社で約40年勤めた経験や家族のリーダーとしての経験から、リーダー論をエッセイとしてまとめたものです。
著者が本物のリーダーとして敬愛する経団連会長などを務めた土光敏夫氏、宅急便事業を成功させたヤマト運輸の小倉昌男氏などについても書かれています。
著者の佐々木恒夫さんは、東レでは主に企画や管理などいわゆる「スタッフ部署」を歩み、取締役を務めたあと、東レの子会社である東レ経営研究所の社長となり、この間に赤字事業・会社を再建したり、新事業の開発や開発事業の展開などの陣頭指揮をとってきたほか、東レ3代の社長に仕える機会にも恵まれたようです。
一方、家庭では数多くの苦難が訪れたようです。長男は自閉症をもって生まれ、彼をサポートするために多くの時間を費やし、その後、妻は肝臓病を煩い入退院を繰り返し、家族に負担をかけていることを気に病んだことからうつ病も併発して絶望的な気持ちになったこともあるようです。
そうした経験や苦労を踏まえたリーダー論はとても説得力があり、また胸を打つものがありました。
特に以下には考えさせられ、また勇気づけられました。
・己のなかに「自分の志をなんとかしても実現したい」というピュアな思いが必要
・人間の究極の幸せは、人に愛されること・ほめられること・役に立つこと・必要とされること
・無私の心が必要
・ほうぼうでカベにぶつかりながら、とことん悩み抜くこと
・自ら約束を守る、嘘をつかない、間違いを正す、悪口は言わない
・うまく行かなかったら自分に原因があると考えること
・あえて批判を求めること
・相手を変えようとしてはならない
・お互いを活かす方法を考える
・組織全体を底上げするには特に落ちこぼれの2割を育てること
・企業の存立基盤は「世のため人のため」に貢献すること
・今日の行いを昨日よりよくしようという真摯な気持ちが必要
・苦しみこそ志の源であり、志こそリーダーシップの源
とてもオススメな本だと思います!
以下はこの本のポイントなどです。
・現実に組織を動かすときに「武器」は欠かせない。それを象徴するのが、中坊公平さんの「正面の理、側面の情、背面の恐怖」という言葉である。言うことを聞かない部下がいれば、きちんと理をつくして従うように説得をするとともに、従いづらい理由があるならば、その心情にも理解を示す。それでも言うことを聞かないならば、「わかっているな?」ということである。「恐怖」はできるだけ使ってはならないが、これがなければリーダーの仕事ができないのは否定しようのない現実である。しかし、この「武器」は諸刃の剣である。これに頼りすぎると、リーダーはその本来の力を失ってしまうからだ。
・大切なのは、己のなかに「自分の志をなんとしても実現したい」というピュアな思いがあるかどうかなのだ。そして、つらくても、苦しくても、その思いをとげるために自らを、その志に向けてリードし続けることができるかどうかなのだ。その思いが本物であれば、きっと周りの人は動き出す。そのとき、私たちは初めてリーダーシップを発揮することができるのだ。
・人間の幸せは、ものやお金ではありません。人間の究極の幸せは次の4つです。人に愛されること、人にほめられうこと、人の役に立つこと、そして、人から必要とされること。愛されること以外の3つの幸せは、働くことによって得られます。障害をもつ人たちが働こうとするのは、本当の幸せを求める人間の証なのです。
・「無私」とは、己を滅することではない。「無私」とは、「私欲」のために生きるのではなく、社会のために貢献しようという「志」に従うことである。それこそ、リーダーシップそのものであり、己を最大に活かす道なのだ。
・上を見て生きろ、下を見て暮らせ-。
これは、私が大切にしている言葉である。「上を見て生きる」とは、志に従って生きるということであり、「下を見て暮らせ」とは、目の前の仕事で一つひとつ結果を出すことによって足下を固めていくということである。志に価値が生まれるのは、なんとしてもそれを実現しようと全力を尽くすときである。たとえ、失敗してもあきらめずにやり抜こうとする姿にこそ人は共感を寄せるのだ。だから、とことん結果にこだわらなければならない。そのような姿勢こそが、リーダーシップを磨き上げるのだ。
・現実にぶつかることだ。修羅場のなかに飛び込んでいけば、いやでも自分の頭で考えざるをえなくなる。そして、ほうぼうでカベにぶつかりながら、とことん悩み抜くことだ。現場の現実こそが、私たちの最高の教科書なのだ。そして、現実と苦闘していない人に、決してリーダーは務まらないのだ。
・いったい、信頼とは何であろうか?それは、きわめてシンプルなものである。約束を守る。嘘をつかない。間違ったことをすれば、謝ったうえで改める。人の悪口は言わない。こんな幼少時に教わったことを、愚直に実行することである。それは、他者に求めるのではなく、自らが実践することである。ときに相手に裏切られることもあるだろう。しかし、それでもなお、これを自らに課し続ける。そうすれば、いつか必ず相手も信頼を寄せてくれるようになる。リーダーシップとは、このような信頼の循環を生み出す「起点」となることにほかならない。
・「問題が発生したら、考えて考え抜く、悩み抜く。寝ても醒めても考える。すると不思議なもので、何かの拍子にアイデアが出てくる。それでもどうにかならなかったら他人に相談すること。上司・同僚・取引先に相談できる相手がいるのといないのでは何倍も知恵に差がつく。そして最後は決断。人の判断など完璧なものはあり得ない。半分は間違う。間違いが分かったら意地をはらずすぐに改める。こういう行動=リスクテーキングにおってはじめて経験として君の身についていく」
・私たちは肝に銘じなければならない。異質な者を尊重せよ。あえて批判を求めよ。そういう生き方こそが、ダイバーシティを生み出すのだ。そして、自らを過ちから遠ざけることができるのだ。
・相手を変えようとしてはならない。小異を認めて、お互いを活かす方法を考える。それが、明日を切り拓くリーダーの発想なのだ。
・世間では「2ー6ー2の法則」とよく言われる。職場で優秀なのは2割の人で、6割は普通の人、残りの2割は”落ちこぼれ」というわけだ。これは、一面の真実である。たしかに、現実の職場を見渡せば、ほぼそういう構成になっている。そこで、勘違いする管理職がいる。”落ちこぼれ”の2割をできるだけ早く異動さsて、優秀な人材を獲得しようとするのだ。しかし、そんなことをしても強い職場をつくりあげることはできない。当たり前のことで、新たな「2ー6ー2」が形成されるだけのことだからだ。社長の立場からすれば、”落ちこぼれ”の2割を育てもせず、手放そうとする管理職など「リーダー不適格」と判断せざるをえない。求めているのは、優秀な部下こそ手放し、”落ちこぼれ”を優秀な人材に育て上げるリーダーだ。そのサイクルが回ってこそ、組織全体の力も底上げされるからだ。そもそも、人間の能力にそれほど大きな差があるわけではない。いわば、100mを14秒で走るか16秒で走るか程度の差でしかないのではないだろうか。にもかかわらず、ほんお小さな差をことさらに取り上げて、「あいつはできる、こいつはできない」と評価をつけたがるほうがどうかしている。「こいつはできない」と評価された人がやる気をなくすだけではないか。どんな”落ちこぼれ”でも、手をかければ必ず育てることができる。
・”落ちこぼれ”の2割を育てようとするリーダーのいる職場は、おしなべて士気が高い。なぜか?「このリーダーは、われわれを育てようとしている。そして、何があっても自分たちを見捨てない」そういう信頼感をメンバー全員が共有するからだ。そして、メンバー同士で競争するのではなく、お互いに支え合って職場全体で成果を勝ち取ろうという気運が生まれる。それこそ、孟子のいう「人の和」なのだ。だから、私は断言したい。すべての人を活かすー。これこそ、リーダーの基本なのだ、と。
・何かのきっかけで「やり方」を身につけたとたんに”化ける”というのはよくあることだ。リーダーがその可能性をつぶすようなことを決してしてはならない。その意味では、「人間に対する信頼」こそがリーダーの条件なのだろう。
・利益とは、あくまでも企業が生きていくための条件にすぎない。決して、利益は企業の存立基盤とはなりえないのだ。では、企業の存立基盤とは何か?それは、社会のよき構成員として、顧客のため、社員のため、株主のため-すなわち「世のため人のため」に貢献するという倫理観にほかならない。企業の行動基準の第一に安全・防災・正直・真摯という、社会のなかで揺るがせにしてはならない倫理観が貫かれていなければならないのだ。
・私が心底、丹羽さんを「本物のリーダー」だと思ったのは、その「退き際」をみたときだ。社長就任時に「任期は6年」と明言していたが、実際にあっさりと後任にゆずり会長に就任。その会長職もまたあっさりと手渡した。世間はよくみているもので、これほど優れた経営者を放ってはおかない。政府は中国特命全権大使という重責を用意。懇請を受けた丹羽さんは、現在、その職で力を振るっている。なかなか本人のいう”タダの小父さん”にはなれないというわけだ。考えてみれば、不思議なものだ。自分は人の上に立つ地位に昇ったと得意がっている人は世の中からはそうとは見られず、丹羽さんをはじめ、”タダの小父さん”になりたい人ほどリーダーとして担がれるのだからー。
・「今日の行いを昨日よりよくしよう」という真摯な気持ちこそが、周りの人のポジティブな気持ちを引き出すのだ。そして、それはリーダーシップそのものなのだ。このときに気づいたときに、私は強く勇気づけられるとともに、自分もそうありたいと思った。人間は、器の大小が問題なのではない。大きい者も小さい者も、それぞれの悩みを抱え、それぞれの人生を生きている。その大小を比べたところで意味はない。大切なのは、天地開以来はじめて訪れた「今日」という日である。貧乏人にも王様にも、みな平等にやってくる「今日」という日を、それぞれ「日々新」に生きることだ。大きい者は大きいなりに、小さい者は小さいなりに、己を高めようとする「志」こそが大切なのだ。
・首相であれ、社長であれ、課長であれ、新入社員であれ、フリーターであれ、主婦であれ、高齢者であれ、全体のために、社会のために貢献しようというリーダーシップに上も下もない。すべて、対等な関係にあるのだ。そして、お互いのリーダーシップを尊重し合い、高め合うことによって、社会や組織の力は最大化されていくのだ。
・小倉さんは、「福祉」の考え方にも疑問を投げかけた。特に印象に残るのは次の言葉だ。「障害者はかわいそうだから保護しなくてはいけない、というのも間違っていると思う。(中略)働くというのhつらいことだ。つらいからこそ、喜びもある。最初から保護したら、「働こう」という気持ちがなくなってしまう。障害者から働く喜びを取り上げてはいけない」。
・「人間にとって何がつらいといって、自分が何の役にも立っていないと感じることほどつらいことはないのだ」私は思う。小倉さんは、「死にたい」と思うほどの苦しみのんかで、「世のため人のために役に立ちたい」という志を心の奥底に固められたのではないだろうか。それこそが、生きる意味であり、生きる喜びなのだと、心に深く刻まれたのではないだろうか。だからこそ、「利用者の視点」を徹底的に追及するビジネスとして、宅急便を成功に導くことができたのではないか。荷物を届けたお客様から「どうもありがとう」と言われる、そんな宅急便ドライバーの生き甲斐を大事にされたのではないか。
・逆境、苦しみ、悲しみ・・・・・。私たちの人生は試練に満ちている。ときに、受け入れがたいほどの苦しみを味わうこともあるだろう。しかし、忘れないでいたい。苦しみこそ、志の源であるのだ。そして、志こそ、リーダーシップの源であり、命に輝きを与えてくれるものなのだ。だから、最後にこの言葉を贈りたい。私も、この言葉を生き抜きたいと考えているのだ。「志」を旅しよう。それが、リーダーという生き方である。
<目次>
第1章 自分自身のリーダーであれ
1 己のなかに、熱意を抱け。
2 リーダーとは、「志」に従う者である。
3 「無私」こそ、己を最大に活かす道である。
4 上を見て生きろ。下を見て暮らせ。
第2章 自分の頭で考え抜く
5 現実に全力でぶつかれ。それが、「考える」ということだ。
6 信頼を求めるな。それは、自らつくり出すものだ。
7 「志」をもつとは、言葉をもつことである。
8「常識」を磨き上げろ。
第3章 本物の自信をもつ
9 異質な者を尊重せよ。そして、あえて批判を求めよ。
10 相手を変えようとするな。「小異」を活かす人間になれ。
11 すべての人を活かせ。
12 倫理は語るものではなく、どこまでも実践するものである。
13 本物の自信をもて。
第4章 「志」を旅せよ
14 大きい者は大きいなりに、小さい者は小さいなりに、己を高める「志」こそ大切だ。
15 リーダー湿布とは、高め合うものである。
16 逆境こそ「志」の源である。
17 「志」を旅しよう。それが、リーダーという生き方である。
面白かった本まとめ(2012年上半期)
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