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ジョコビッチの生まれ変わる食事という本は、2012年、2014年と世界1位を維持したプロテニスプレイヤーであるノバク・ジョコビッチ選手が書いたもので、小麦粉などに含まれるグルテンや乳製品等をやめる食事に変えることによって、劇的に健康な身体になったことについて書かれたものです。
ジョコビッチが小麦やチーズを使うピザ屋の息子で、そのピザが体調不良の原因だったというのは皮肉です^_^)
特に自分も特定の食物に対する不耐性を調べるELISAテストを受けて、より健康に留意したいと思いましたね。
また、本書ではジョコビッチがセルビアのベオグラードでコソボ戦争により空爆を受けながらも困難をクリアしていることや、テニス人気がないセルビアで6歳でウィンブルドンで優勝することを心に誓ったことなど驚くべきことが満載です。
特にエレナというコーチがスポーツだけを教えた訳ではなく、クラシック音楽を聴かせ、詩も読ませたのは素晴らしいと思います。
そして家族が外国語の勉強を勧めたので、母国語のセルビア語に加えて英語・ドイツ語・イタリア語も学び、今ではフランス語も操るマルチリンガルというのは素晴らしいと思いました。
本書では具体的には以下等について書かれています。
・体調不良だった頃の状況から人生を一変させた食事に出会うまで
・空爆を受けていた少年時代の状況とテニスとの出会い
・食事を変えた後のウィンブルドン・ナダルとの戦い
・試合がないふつうの一日の過ごし方
・新しい食事の14日間
・食物アレルギーの検査方法
・グルテン及びグルテンが入った食べ物
・砂糖や乳製品について
・4つの食事に関するルール(ゆっくり食べる、体に明確な指示を与える、前向きであれ、量ではなく質を追求)
・具体的な朝食や昼食、一週間分の栄養
・オープンマインドなる
・ポジティブなエネルギーが不可欠
・瞑想する時間が大切
・睡眠が大切
・具体的なフィットネスプラン
・おすすめ食品ガイド
・王者のレシピ
「ジョコビッチの生まれ変わる食事」という本は、食事だけでなく前向きな思考についても書かれていて、真の健康を考える上でとても参考となる良書だと思います。
とても勇気づけられましたし、とてもオススメな本です!!
以下はこの本のポイント等です。
・ノバク・ジョコビッチは、わずかな可能性を手繰り寄せてそんな障壁を乗り越えた、テニス史上に残るほど稀な人間である。そもそも彼はまったくと言っていいほどテニスの人気がない国・セルビアで練習と経験を重ねてきた。そしてコソボ戦争により空爆が続いた故郷のベオグラードで厳しい練習を続け、家族とともに数ヶ月にわたり避難用シェルターで空爆をしのいだ。そのような困難をもクリアしてきたこの王者はさらなる強敵に倒されるところだった。問題は小麦だったのだ。2010年全豪オープン準々決勝の対ジョー・ウィルフリード・ツォンガ戦において、ジョコビッチに異変が起きていることはだれの目にも明らかだった。ミスショットがあり、1000分の1秒のタイミングのずれがあり、難しいリターンの際に苦悶の表情を浮かべ、第4セット中には明らかな腹痛により倒れ込み、メディカルタイムアウトをとっていた。結果は、数時間の激闘の後の敗北だった。その後、2010年全豪オープン決勝の対ラファエル・ナダル戦は正反対だった。ジョコビッチの動きはなめらかで、自信に満ちあふれ、試合を完全に支配していた。端的に言って、見事だった。どうして、これほど変貌することができたのか?答えは単純だ。ジョコビッチは心理的・肉体的に「ピーク・パフォーマンス」に達するために、世間一般のあらゆる栄養士が勧めることと正反対のことをした。彼は食事から一般的には健康的とされる全粉穀物を排除したのだ。その結果、彼は2011年に3つのグランドスラム大会(全豪・ウィンブルドン・全米オープン)を制し、12ヶ月間で51戦中50勝という圧倒的な記録を挙げ、男子ランキング世界1位に躍り出た。
・小麦は消化機能を劣化させることがあり、胃酸逆流から潰瘍性大腸炎、その他の腹部機能不全を引き起こすことがあるのだ。またさまざまな炎症(典型的なものは腹痛や張り)、自己免疫性症状(リューマチ神経痛や慢性甲状腺炎<別名:橋本病>)を引き起こすこともありえる。さらに悪いことに、パラノイアや統合失調症といった精神疾患、そして行動障害や自閉症の子どもの学習障害をさらに悪化させることさえある。そして特有の食欲増進作用により腹部を中心とした肥満を促し、毎日何時間も練習を積んでいるアスリートにさえ体重増を引き起こしてしまう。競技の最中にこのような症状を引き起こすと、思考に「霧」が発生し、他にも疲労やホルモン不全を作り出すため、どんな優れたアスリートでも肉体・感情面で激しい変調に襲われ、可能性を閉ざしてしまうのだ。
・ほとんどの人は、人生でなにをしたいのかを6歳で決めることはないだろう。でも、私は決めていた。13年前、セルビアの山岳地帯にあるコパオニクという街で両親がやっていたピザ屋の小さなリビングルームで、私はピート・サンプラスがウィンブルドンで優勝する姿を見て、心に誓ったのだ。「いつの日か、あそこで優勝するのはボクなんだ」と。それまで、テニスなど一度もしたことはなかった。知人の中にもテニス経験者はいなかった。セルビアにおいて、テニスとは、まあフェンシングのように全然人気がないスポーツだった。そして、光り輝くロンドンの街は、私の家族が暮らすちっぽけなリゾート街とはあまりにもかけ離れた場所だった。だが、まさにあの瞬間に、私は自分が他の何よりもほしいものを悟ったのだ。それは、頭上にウィンブルドン大会優勝カップをかかげ、観衆の歓声を浴び、世界一の選手になった瞬間を味わうことだ。4歳のときに、両親は虹色の小型ラケットとボールを買ってくれて、以来私は毎日何時間も飽きることなくレストランの壁にボールを打ち続けて遊んでいた。だがサンプラスのプレーを見たあの瞬間から、私にはわかっていた。その後13年間にわたり、人生のすべてをこのゴールのために捧げ、家族もまた途方もない犠牲を払ってくれた。当初から応援し続けていてくれる友人、トレーナー、コーチ、ファン、そんな人たちが一つになって私が生涯の夢に近づけるよう支えてくれた。
・私の人生が大きく変わったのは、体に合った正しい食事を始め、体が求めるとおりに従ったからだ。新しい食事にしてから最初の3ヶ月で、体重は82kgから78kgまで落ちた。家族と友人がやせすぎではないかと心配するほどだった。だが体のキレがよくなり、神経はさらに研ぎ澄まされ、かつてないほど活力がみなぎるようになっていた。さらに動きが速くなり、柔軟性も増し、他の選手ならラケットが届かないボールにも届くようになり、かつ強さも増し、精神面の集中力も今までになくしっかりしてきた。疲れを感じることも、息切れすることもなくなった。アレルギー症状も消えた。喘息も出なくなった今まであった恐怖や疑念はすべて自信と置き換えられた。もう3年近くひどい風邪やインフルエンザにかかったこともない。一部のスポーツライターは私の2011年のシーズンを「プロテニス史上最高の一年」と呼んだ。タイトルを10個獲得し、グランドスラムで3勝、そして43連勝だ。そのあえに変えたのはただ一つ、食事だけだったのだ。
・私が一番驚かされたのは、わずかな変化なのに、もたらす結果があまりにも劇的だったということだった。私はただ、グルテン(小麦に含まれているタンパク質)を数日間排除しただけなのに、私の肉体はすぐに良い方向に向かったのだ。心身ともに軽くなり、速くなり、クリアになった。2週間後、私は人生が大きく変わったことを実感した。その後さらにいくつかの要素(砂糖を減らし、乳製品を除いた)を付け加えたが、毎朝目覚めたその瞬間に、かつての自分、幼少時代の私とは全然違うことが感じられた。ベッドから跳びだせるようになり、その後の一日が楽しみになった。そして、私が学んだこの素晴らしい内容を、せっかくだから皆さんと分かち合わねばならないと考えるようになった。
・私の体が重くて、動きが鈍くて疲れやすかったのは、ふつうの人とほとんど同じような食生活をしていたからだ。私はまさにセルビア人のように(またアメリカ人のように)ピザやパスタ、パンなどのイタリア料理を、少なくとも一日数回は肉料理と一緒に口にしていた。そして試合中もこれでエネルギー補給になると信じて甘いスナックバーやその他の糖分が含まれた食べ物を口にして、これだけ練習しているのだからと近くのトレイにあるクッキーまで存分に食べていた。だが、当時の私が気づいていなかったのは、こういう食べ方をしていると体内に炎症という症状を引き起こしてしまうことだった。要は、体が受け付けない食べ物を口にしていると、体は鼻づまり、関節痛、内蔵のけいれんといった形で信号を送ってくる。医師によると、私の体に発生した喘息から関節炎、心臓病やアルツハイマー病に至るまで、すべてある種の炎症なのだという。
・わずか数日のうちに、エレナは私のことを「ゴールデン・チャイルド」と呼ぶようになった。そして両親に対して「この子は今まで私が見た中でもモニカ・セレシュ以来の才能を持っていますよ」と語り、私を成長させることをミッションとして自らに課すようになった。毎日学校が終わると、私は他の同級生たちとの遊びの約束を無視して、練習に向かうために大急ぎで家に帰った。毎日、私は何百本ものフォアハンド、何百本ものバックハンド、何百本ものサーブといったテニスの基本的な動きを、歩くのと同じく自然にできるようになるまで打ち込み続けた。両親が無理矢理私を練習させることはなかった。コーチがガミガミ言うこともなかった。私が練習したくないときに強制する人はいなかった。いつも私はテニスをしていたかったのだ。エレナはスポーツだけを教えてくれたわけではない。私の知的成長を促すために両親のパートナーになった。私たちを囲む世界は大きく変わっており、私が産まれたときにはあったはずの共産主義は崩壊していた。両親は将来が今までとはまったくの別世界になることを理解しており、子どもが世界のどこにいても学べる人間になることが大切だと認識していた。エレナは私を精神面で落ち着かせ、集中力を高めるためにクラシック音楽を聴かせ、詩も読ませた。-ちなみにプーシキンがエレナの好みだった-。そして家族は外国語の勉強を勧めたので、私は母国語のセルビア語に加えて英語・ドイツ語・イタリア語を学ぶようになった。こうしてテニスの練習と人生における学習が一体となり、たびひたすらエレナとコートで時間をともにして、スポーツについて、自分自身について、そして世界についてもっと学びたいと望むようになった。
・いつも私は自分の夢に集中していた。しろいろなカップやボウル、プラスチックを取り出してはトロフィーに見立て、鏡の前に立ち、「ノールが王者だ!ノールがチャンピオンだ!」と言い続けた。
・戦争さえも、私がテニスをすることを止めることはできなかった。日中に、私はベオグラードのどこかでエレナと練習をするために落ち合った。そして、彼女は妹が崩れた壁の下敷きになって、致命傷になってもおかしくないほどの大怪我をしたときでさえ、私がふだんどおりの生活ができるよう配慮してくれた。私たちはいつも、まさか昨日襲った場所を今日続けて攻撃することはないだろうと考えて、一番最近に空爆を受けた場所に行った。私たちはネットなしの環境や、破壊されたコンクリートの上でプレーすることさえあった。私の友人でもある女子プロテニス選手アナ・イヴァノヴィッチは、使われなくなったプールで練習しなければならなかったという。
・世界最高の選手になるには何が必要なのだろう?毎朝目覚めるたびに、私はコップ1杯の水を飲み、ヨガと太極拳を組み合わせたストレッチ運動を約20分行う。そしてこれから始まる一日に備えて肉体に栄養を与えるべく、ほぼ毎日同じ朝食をとる。朝8:30頃になると、毎日寝るまでほぼつきっきりで私の食事、飲み物、すべての動きを見守るコーチおよびフィジオセラピストと合流する。2人は毎日毎日ほぼ1年中を通して私と一緒にいる。5月のパリ、8月のニューヨーク、1月のオーストラリア、どこでも同じだ。それから毎朝1時間半にわたり練習パートナーとともに打ち込みを行い、お湯で水分補給をする。それから現在の私の体の状態に合わせて必要なビタミン・ミネラル・電解質を配合したトレーナー特製のスポーツドリンクを飲む。さらにストレッチを重ねてスポーツマッサージを受け、ランチに入る。食事は、糖分とタンパク質を避け、私が必要とするグルテンフリー・乳製品なしの炭水化物だけを摂取できるようにしている。今度はワークアウトの時間だ。1時間少々使ってウエート及びレジスタンスバンドを用いたトレーニングを行う。ハイレップス(高回数トレーニング)を1セット、軽めのウエートで必要な動きを最高で約20種類取り入れている。午後半ばにさしかかると、フィジオ特製の医療用の豆製プロテインドリンクを飲む。再びストレッチに入り、もう一度トレーニングのセッションを始め、90分間ボールを打ち続け、サーブとリターンの精度を高める。4回目のストレッチが終わったら、もう1回マッサージだ。この時点で私はほぼ8時間連続でトレーニングに励んでいることになるが、ここから少しの時間を割いて私のビジネス関連の仕事に手をつけていく。ほとんどの場合、記者会見かチャリティーイベント参加といった用事だ。それから夕食の時間となる。高タンパク質で、サラダ付き、炭水化物とデザートはなしだ。それから1時間少々読書をすることもある。おもにパフォーマンス向上や瞑想をテーマとしたものだ。あるいは日記を少々書くこともある。そして、やっと就寝時間だ。これが私の「試合がないふつうの」一日だ。
・ついに5ー3となり、ウィンブルドン優勝に向けてのサーブを打つことになった。ついにここまできた。今までやってきたすべてはこの瞬間のためにあり、もう手が届くところまできていたが、さすがにナダルは簡単に明け渡してはくれなかった。あちらは素早くリードをとって15ー15となり、われわれは恐るべき長さのラリーに突入した。お互いをコートの隅に追い込み続ける姿を見て観衆はさらに熱狂し、ラリーはナダルがフォアハンドをネットに打ち込むまで続いた。しかし、再び彼は強烈なフォアハンドのスマッシュで30ー30まで戻してきた。われわれはもうしばらく接近戦を続けることもできたが、私の内なる声はこのベースラインゲームでもう少し揺さぶりをかけ、彼にとどめを刺せと叫んでいた。私はサーブして、すぐにネットに近づいてナダルを驚かせた。サーブアンドボレー!そして相手のリターンを叩きつけた。相手の予想外だった。そして相手が何よりも予測していなかったのは、「チャンピオンシップポイント、ジョコビッチ」だ。私がサーブして、お互いリターンを返す。そしてその瞬間はやってきた。ナダルはバックハンドをライン近くに打とうとしたが、ショットが長すぎてベースラインを越えてバックアウトになるのは明らかだった。勝利を決めた後、私は芝生に背中から倒れ込み、6歳の頃に戻って地面に寝そべった。今回のトロフィーは6歳の頃抱いたプラスチックではなかった。今回は、本物なのだ。この24時間で、私の生涯をかけた2つの夢が実現した。ウィンブルドン制覇、そして世界1位の選手になるということだ。数日間の成果としては悪くないものだ。自分に合った食べ方を知らなければこんなことは絶対に不可能だった。
・セトジェヴィッチ博士は、特定の食物に対する私の不耐症をもっと正確に計測する方法があることを話してくれた。その中でもっとも信頼に足る正確さを誇るのがELISAテストと呼ばれるもので、これは薬物中毒からマラリア罹患、HIV感染、そして食物アレルギーに至るまで、あらゆることがわかる血液検査だ。ELISAテストを行えば、食物の不耐症について非常に具体的な点まで知ることができる。不耐症でよくあるのがグルテン、乳製品、卵、豚肉、大豆、ナッツなどだ。人によっては珍しい不耐症を持っている場合もあるし、意外な組み合わせが問題となることもある。たとえば、私のトレーナーをしてくれているミルヤン・アマノヴィッチはパイナップルと卵白に対して過敏であることがわかった。とにかく、自分が何に対して過敏で不耐症があるのかがわかると、大した努力もせずに劇的な変化をもたらすことができる(実際、上記2つの食べ物を外しただけで、ミルヤンやわずか数週間のうちに約4.5kgも体重を落とすことができた)。私の血液検査結果が戻ってきたときの衝撃は大きかった。私は小麦と乳製品に対して強い不耐症があり、トマトに対しても少し敏感だったのだ。「今後、君の体の機能を上げたいのであれば、パンを食べるのはやめなさい」。セトジェヴィッチ博士が言い渡した。「チーズもダメだね。トマトも減らすことだ」。「先生、待ってくださいよ」。私は抵抗した。「うちの両親はピザ屋なんですよ!」
・東洋医学で私にとって一番参考になったのは体内時計の概念だった。つまり、われわれの肉体には毎日のスケジュールがあり、それぞれの臓器が休息を求める時間帯があるという考え方だ。この中国の伝統の知恵によると、体内のそれぞれの臓器は次のような順番で修復していくのだという。
▼肺:午前3-5時。喫煙車ではなく日々体に気を遣っている人でも目覚めの際に咳をするのは、就寝中に肺が体内のゴミの処理をしているからなのだという。悪い食事をしていると肺の負担がさらに重くなるという。
▼大腸:午前5-7時。起きてすぐに水を飲むのが大切なのは、この時間帯に大腸は体内の毒素を排出しようとするからだ。水はこのプロセスの補助になる。
▼胃:午前7-9時。胃が一番活発に動いているのはこの時間帯なので、朝食をとるには最高の時間帯なのだ。
▼脾臓:午前9-11時。
▼心臓:午前11-午後1時
▼小腸:午後1ー3時。もし体に間違った食物を与えたとしたら、この時間帯に体から一番強いシグナルが発せられる。この時間帯に消化不良や何らかの痛み、膨満感を覚えたとしたら、ついさっき食べた物の何かに対して体が過敏に反応しており、食事内容を見直す必要があるという証拠だ。
▼腎臓と膀胱:午後3-7時。慢性的にこの時間帯で疲れを感じるとしたら、何か体が過敏に反応する食べ物をとりすぎているという意味だという。午後遅い時間はもっとも活力にあふれる時間帯であるべきで、昼寝のための時間ではない。
▼膵臓:午後7-9時 膵臓は血液内の糖分を作り出すインシュリンを制御している。食事に問題があると、この時間帯にやたら糖分・スイーツを欲しがるようになる。
▼動脈と静脈:午後9-11時
▼肝臓と胆嚢:午後11時-午前3時。睡眠に難があるとすれば、食べ物に問題がある可能性があるという意味だ。もしこの時間帯に寝つけないとすれば、肝臓が体内の毒素を排除するためにフル稼働していると考えられる。
・私は6歳のときに世界一になりたいと言い、最初のコーチとなったエレナ・ゲンチッチは私の言葉をなぜか真剣に捉えてくれた。そして彼女は世界の頂点に立つためには、単なるテニス以上のことを学ばなければならないと信じていた。クラシック音楽を聴く、詩を読む、人間のコンディションについて深く考える。こういったことが初期の私に課せられたトレーニングの一部だった。これは両親と住む自宅と、エレナとともに過ごしたコートの両方で行われた。コーチが開発してくれたのは私の思考だけではなかった。前進し続けるためのツールも与えてくれた。コーチのおかげで、私は太極拳からヨガに至るまであらゆるコンディショニングの手法を試し、専門家を求めていった。もし本当に世界最高になれるのであれば、そのためのあらゆる可能性を試しておきたかった。だから私はセトジェヴィッチ博士が奇妙な理論をひっさげて連絡してきたときに、耳を傾ける気になったのだ。
・「2週間でいい」。博士は言った。「14日間だけこういう食べ物をやめてみてくれ。それから私に電話をくれ」最初は辛かった。あのソフトで噛みごたえもあるパンが恋しくてならなかった。今まで食べてきたピザ、甘いロール(菓子パン)、その他諸々の小麦が入っている好物が欲しくて仕方がなかった。とにかく最初の1週間はそういう食べ物が欲しかったのだが、毎日自制して乗り切った。そして幸いにも家族や友人-私のことを気がふれたと思っていたらしいが-が支えてくれた。だが日が進むに連れて、気分が変わってきた。体が軽くなり、活力が湧いてきたのだ。それまで14年間悩まされていた夜間の鼻づまりが突如消え去った。1週間目が終わる頃には、もはやロールからクッキーやらパンやらが欲しくなくなっていた。まるで生まれてからずっと付きまとっていた煩悩が奇跡的に消滅してしまったかのようだった。翌週は毎日、最高の目覚めを迎えることができた。すでに私は信じるようになっていた。2週間の体験を終えた私にセトジェヴィッチ博士はベーグルを食べるように指示を出した。「これが本当のテストなのだ」と博士は説明した。ある食べ物を14日間避けてみて、そこでもう一度それを食べて反応をみるのだ。そして驚くべきことに、グルテンを再び食事に取り入れた次の日、私は一晩中ウィスキーを飲んでいたかのような感覚に襲われたのだ!10代の頃そうだったように、ベッドを這い出るのがやっとだった。私はめまいを覚えていた。鼻づまりも再発していた。まるで二日酔いのような状態だった。「これが何よりの証拠だ」。博士は断言した。「つまり、君の体がグルテン不耐症だと知らせてくれていのだよ」。それ以来、私は体が伝えようとしている声にはすべて耳を傾けるようにしている。
・たかだか数年前と比べても、現在ではグルテンの弊害が広く知られるようになり、おかげで何千万人もの人々が以前より健康になっている。グルテンとは、小麦やライ麦、大麦など穀物に含まれているタンパク質である。これがパンに柔らかさを出す「糊(グルー)」の働きである。グルテンがなければ、ピザを空中に放り投げることもできないし、くるくると回すこともできない。世間で健康的だとされている全粒穀物製品も含め、あらゆる小麦製品にはグルテンが含まれている。つまり、グルテンは私たちが口にする大多数の食物に含まれているということだ。具体的には、どんな食べ物に?ここに例を挙げよう。
▼パン:ここで言うパンにはイングリッシュ・マフィン、ハンバーガーのバンズ、小麦粉のトルティーヤ、サンドイッチ、そしてイーストが遣われていないマッツォ(ユダヤ教の祭りで食べるパン)のようなパンも含まれている。
▼小麦粉から作られた麺・パスタ類:すなわち全小麦パスタ、生地にホウレン草を練りこんだようなパスタ、その他小麦を含むパスタすべてがここに含まれる。
▼ケーキ、マフィン、ドーナツ、粘り気があるバンズ、パイの皮などスイーツ全般
▼小麦粉で作られたクラッカー、プレッツェル、その他のスナック類
▼朝食のシリアル:一見小麦など含まれていなさそうなコーンフレーク類も含む。他にも子供向けの甘味付きシリアルや、大人向けの「健康的」な無加糖製品も含む。
▼ビールその他麦芽から蒸留されたアルコール飲料:一部のワインも麦芽入りである。いくつかのウォッカも小麦から蒸留されている。
・以下の食品には小麦製品が入っていたり、どこかで小麦製品が混ざり込んでいる可能性がある。一部の物には驚かれるだろう・・・。
▼肉の詰め物:これに含まれるのは冷製の加工肉、ミートローフ、ミートボール、ホットドッグ、ソーセージ、煮出し汁のかかった鶏肉などである。
▼一部の卵・ナッツ製品:卵類の代用品、乾燥卵、乾燥ローストナッツ、またピーナッツバターがグルテン不耐症の真犯人という場合もある。
▼マリネおよび調味料:タンパク加水分解物入りの製品は避けること。マリネ、味噌、醤油、タコス調味料、あるいはクリームソースやグレービーで味付けされた食品、さらにケチャップの原材料には気をつけよう。一部には大麦から作られた麦芽酢が使われている場合がある。
▼一部の乳製品:チョコレートミルク、ミルクセーキ、フローズンヨーグルト、風味付きヨーグルト、チーズスプレッド、チーズソースといったところだ。当然だが、麦芽入りミルク及び麦芽入りミルクパウダーは避けること。
▼加工チーズ:加工チーズ、カッテージチーズ、加工デンプン、あるいは原料不明の保存料はすべて除くこと。
▼代用パンと穀物:ブルグアやクスクス(ともに小麦を加工した食品)、デュラム小麦、ヒトツブコムギ、シリアルに使われるエマー、ファリナ(小麦粉の種類)、麦芽や麦芽調味料、麦芽エキスなどの大麦製品には気をつけること(なお、ソバ粉は完全に安全だ)。
▼一部の果物と野菜:ファストフード店で出されるフライドポテト、市販のドレッシング、フルーツパイのフィリング、クリーム付き野菜、バターをかけた野菜にはグルテンが入っている恐れがある。また、パン粉は一部のドライフルーツのコーティングに使われることがある。
▼ベジタリアン食品:ベジーバーガーからベジタリアンチリ、ベジーソーセージにはグルテンが含まれていることがある。
▼デザート類:一部のアイスクリーム(特にクッキーやブラウニーが入っているもの)、糖衣(フロスティング)、キャンディ、スナックバー、マシュマロ、ケーキ、クッキー、ドーナツといった物は小麦、ライ麦、大麦で作られている。小麦粉入りのプリン、グルテン安定剤を含んでいるアイスクリームとシャーベット、アイスクリームのコーン、カンゾウのエキスには要注意。
▼飲料品:インスタントのお茶とコーヒー、コーヒー代用品、チョコレートドリンク、ホットココアミックスは避けること。ビール、麦芽飲料、シリアル飲料、人工ミルクによるクリームも同様。
▼揚げ物の肉と魚:ファストフード店のフライドチキンからステーキハウスで出されるイカフライに至るまで、パリパリのコーティングが付いている物はすべて外すこと。
▼意外なもの:カラメル、キリスト教のミサでの聖体拝領の際のウエハース、一部の封筒用の糊、米国の合成粘土・プレイドー、一部の薬、またリップスティックなどのコスメ製品にもグルテンが隠されていることがある。
・私はインシュリン増加をもたらすすべてを排除しているが、これはすなわち小麦だけではなく砂糖やチョコレートやソフトドリンクといった糖製品も避けているということだ。その結果、私の食事はシンプルそのものになっている。野菜、豆、白身肉、魚、果物・・・こういった食物の大部分は天然であり加工されていない。小麦を食事から排除し、そこからくるインシュリン急上昇もなくなると、その他の糖製品をやめるのも楽になる。
・私は、グルテンフリーの食事をすべての人々に勧めることができる。たとえグルテン不耐症でなくとも、小麦によってもたらされるインシュリンの急激な分泌が体にいいはずがないのだ。そして私たちの多くはラクトース不耐症を抱えているので、乳製品でも同じことを試してみる価値がある。
・もし乳製品に別れを告げることを決めたら、一つ注意が必要だ。乳製品を受け付けない人にとって大問題とんおは体質強化(特に骨だ)に必要なカルシウムを十分な量とれないことだ。だからといって私はあまりサプリメントは好きではない。栄養はできるだけ自然の食物からとったほうがよいという考えだ。カルシウム源として代わりになるのは、ブロッコリー、そしてツナやサーモンなどの魚類で、これぞ私のカルシウム源だ。私はこういう食品が大好きだ。アーモンドミルクのようなミルク代用品も非常にカルシウムが多い。一部のラクトース不耐症の人たちは食品内のラクトースを減らす発酵プロセスを経た乳製品なら食べることができる。「生きた乳酸菌」とラベルでうたっている商品なら大丈夫だ。ただし、一つだけ要注意だ。ヨーグルトは生きた乳酸菌を含む典型的な食品だが、多くのヨーグルトには糖分がたくさん添加されており、これはスナックバーと同じくらい体に悪い。買う前に必ず原材料のラベルを確認するようにしよう。
・乳製品が貴重なタンパク源であることは確かだが、それが「低炭水化物」食品とは限らない。もちろん、スナックバーやコカ・コーラほどではないが、グラス1杯の乳脂肪分1%の牛乳には102キロカロリーが含まれていて、うち半分は糖分から来ていることをどれだけの人がご存知だろう?もう一度繰り返す。グラス1杯の1%牛乳のカロリーの半分は糖分なのだ。金輪際、乳製品と牛乳をやめろとあなたに言うつもりはない。ただ、私は食べるべきではないということだ。
・私はどこへ行っても、以下の食べ物をつねに探している。
▼肉、魚、卵:鶏肉、七面鳥肉と、あらゆる種類の魚は私の好物だ。こういったものを少なくとも一日に1回か2回は食べている。赤身肉を食べるときは、できるだけ魚や鶏肉にし、可能なかぎり脂肪を落とすようにしている。そして、どんな種類の肉または魚を食べるにせよ、最高の品質であることを確かめてほしい。魚で言えば、養殖ではなく天然の物を選んでほしい。肉なら、牧場で草を与えられた牛と平飼いの地鶏がいい。これまで多くの研究で、天然に近い環境で育った動物のほうが健康的で栄養価も優れていることが明らかになっている。卵について言うと、私自身は朝にタンパク質をそれほどとらないので、卵はあまり食べない。だが卵は一日の終わりに肉を調理すのが面倒くさいときに、健康的に手軽に栄養を与えてくれる。
▼低炭水化物野菜:野菜は、人類が必要とするあらゆる栄養を含む天然の食べ物だ。ビタミン各種、ミネラル、食物繊維、抗酸化物質などだが、すべての野菜においてこれらのバランスが整っているわけではない。ビート、ジャガイモ、その他の根菜、そして瓜、カボチャなどの野菜はデンプンと炭水化物が多すぎる。私はつねづね最大限のエネルギーを得るために、日中のうちに炭水化物を集中的に摂取するようにしているので、タンパク質を重視している夕食時にはこういった物は避ける。一方で葉野菜や茎野菜、たとえばブロッコリー、カリフラワー、インゲン豆、アスパラガスなどは、私の言葉で言えば「中庸」の野菜だ。これなら炭水化物もそれほど多くないし、一日の中でいつでも食べることができる。
▼果物:あくまでも糖分をとりすぎないように抑え目にしている。それでも、糖分をとるにあたって、果実に含まれるフルクトース(果糖)は一番上質な物だ。加えて、果物は栄養価も高い。特に私が好きなのはあらゆる種類のベリーで、少しずつ食べている。
▼穀物類:私がいつも食べているのはほとんどがキノア(アンデス高原地帯が原産のアカザ科の穀物)、ソバ、玄米、オート麦だ。キノアとソバ粉があれば美味しいグルテンフリーパスタができる。
▼ナッツおよび豆類:一番良いのは火が通っていない生の物だ。練習が丸一日続く日に活力となってくれるのがこういった食物だ。体重を増やさずにタンパク質を補ってくれて、他にも食物繊維や一価不飽和脂肪酸など、体に良いものも与えてくれる。私のお気に入りは、アーモンド、クルミ、ピーナッツ、ヒマワリの種、カボチャの種、ブラジルナッツ、ピスタチオといったところだ。
▼健康的なオイル:私はいつもオイルについては可能なかぎりオリーブオイル、ココナッツオイル、アボカドオイル、亜麻仁油だけを使うようにこだわっている。
▼豆果(マメ科植物):私が好きなのはヒヨコ豆(ホムスの原料)とレンズ豆だ。繊維と栄養価が豊富な黒豆とインゲン豆もいい。ただし塩分が高すぎる缶詰の豆は避けたほうがよい。
▼調味料:カギとなるのはケチャップやバーベキューソースのように糖分を加えすぎた調味料を避けることだ。マスタード、ワサビダイコン、酢、ホットソース、ワサビなどは非常に良い。あとはサルサ、それも自家製の物を忘れてはいけない。
▼ハーブとスパイス:ここで挙げきれないくらいたくさんの種類がある。テーブル上のバスケットのパンが恋しくなるくらい、いろいろな食事に取り入れて使ってほしい。
・私が一種の宗教として守っている4つの原則
①ゆっくり、意識的に食べよ
②肉体に明快な指示を出せ
③前向きであれ
④量ではなく、質を求めよ
・私がベッドから出て真っ先に行うのが、グラス一杯の室温の水を飲むことだ。それまで8時間にわたり何も飲まずにいるので、体は機能し始めるために水分補給を必要としている。水は肉体の修復プロセスにおいて必要不可欠なものだ。水分補給が不十分だと、体調維持に大きな支障をきたすことになる。私は理由があって氷水は避けている。私の予定には絶えずトレーニングと練習がつまっている。ほとんどの日において、私はまずいくつかのヨガの動きから始める。あらゆる運動において、それが単なるストレッチ運動であっても、筋肉への良好な血流が必要となる。氷水を飲んでしまうと、体は水を体温まで温めるために消化器官へ余計な血液を送り込む必要がある。冷水を温める過程ではいくばくかのカロリー燃焼につながるが、それにより消化が遅くなるうえに、私が本当に求めている筋肉への血流が妨げられてしまう。よって朝だけでなく一日を通して、私はおもに温かい水を飲むようにしている。
・私の朝の習慣の2つ目はあなたを驚かせるかもしれない。スプーン2杯の蜂蜜を口にするのだ。それも毎日だ。できるだけマヌカハニーというニュージーランド産の物をとるようにしている。これはマヌカという木で育てられたミツバチからとった色が濃い蜂蜜で、通常の蜂蜜よりもさらに大きな抗菌作用がある。蜂蜜は糖だ。だが肉体は糖分を必要としている。特に果実や野菜、そして蜂蜜に含まれている糖分であるフルクトースを必要としている。肉体が必要としていないのはチョコレートやソーダ、あるいは瞬時に糖分を補給することができる大部分のエナジードリンクなどに含まれていて、飲んだ瞬間に「ワオ!」と声が出てしまうような精製されたスクロースのふだ。
・ちょっとしたストレッチまたは軽い美容体操を終えたら、朝食の時間だ。ほとんどの場合、私はパワーボールと称して、通常サイズのボウルに以下の材料を混ぜた物を食べている。
▼グルテンフリーミューズリー、またはオートミール
▼一握りの分量のさまざまな種類のナッツ:アーモンド、クルミ、ピーナッツ
▼ひまわり、またはカボチャの種
▼スライスにしてボウルに入れる果物:バナナやあらゆる種類のベリー
▼ココナッツオイル:小スプーン1杯
▼ライスミルク、アーモンドミルク、またはココナッツウォーター
・私にとって、典型的なランチとは野菜入りグルテンフリーパスタだ。このパスタはキノアかソバで作られている。野菜について言うと、選択肢は膨大にある。アブラナ、新鮮なトマト、時にはキュウリ、大量のブロッコリー、大量のカリフラワー、インゲン豆、ニンジンなどなどだ。こういった野菜類とパスタとオリーブオイル、そして少量の塩を混ぜる。これらを混ぜると私好みの美味しい物ができる。私が食べないのはトマトソースのようなこってりとしたソースだ。
・多くの人たちがアルコールについて私に聞いてくる。どのみち私はビールまたは小麦から蒸留されたウォッカは飲めないので、そもそも考える意味がない。大会中にアルコールを飲んだことはない。これがすべての答えだ。ときどきグラス一杯の赤ワインを飲むことはある。これはアルコール飲料だとは思っていない。ある種の治癒薬のような物であり、聖なる飲み物だと考えている。
・かつて私が悪戦苦闘していた時期、つまり肉体のための適切な食事についてわかっていなかった頃、私はいざというときに肉体的に動けなくなっていただけではなかった。体のけいれんと同時に、脳もけいれんを起こしていたのだ。考えるかぎりでもっとも大きな重圧がかかる場面ですら、私の頭の中にはモヤがかかっていて集中しきれていなかった。ラファエル・ナダルが時速230kmのサーブをこちらへ打ち込んでくるという状況は、このうえもなく心身ともに集中している瞬間のはずだが、今だからこそ告白するが、心理的にも感情的にも、何かがうまくかみ合っていなかった。当時の問題は何か。それは、最近多くの医者たちが使い始めた「穀粒脳」(グレイン・ブレイン)だったのだ。グルテンを含む食物はうつ病や無気力、あるいは痴呆や精神疾患にさえもつながっている。よって「思考」を肉体と同じように遇する必要がある。つまり、適切な滋養を与えるということだ。
・東洋医学においては、思考、肉体、魂をつなげるようにと教えられる。もし前向きな思考-愛、喜び、幸福-があれば、それは間違いなく肉体に影響する。私は大観衆と対面するのが好きで、その中に子どもがたくさんいればなお嬉しくなる。子どもたちにはポジティブなエネルギーしかない。何に対してもオープンだ。熱意もあるし、好奇心に溢れ、次に笑うチャンスをいつもうかがっている。私はファンと出会い、サインに応じ、記念写真に収まるためによく遠出する。そう、これはファンにとって嬉しいことだと思うのだが、じつは私にとっても役立つことなのだ。こういう大観衆から大きな活力をもらっているし、今後も成功するためにはこのポジティブなエネルギーが不可欠なのだ。私を応援してくれる人、立ち止まって声をかけてくれる人が、どれほど私の成功に力を与えてくれているか、おそらくは想像もつかないだろう。だが多くの人々、特に閉ざされた思考の人たちは、恐怖によって動かされている。この恐怖と怒りは、私たちのエネルギーの中でもっともネガティブなものだ。閉鎖的な人たちは何を恐れているのか?いろいろなものが考えられる。間違いを恐れる、だれかが一枚上手なのを恐れる、何かを変えなければならないことを恐れている。恐怖は人生を謳歌する力を限定してしまう。
・瞑想を学んでしばらくすると、何かがかみ合ってくる。私の思考はそういう感じだった。おそらく、他の人の思考も同じように働くのだと思う。私は今まで自身の「内なる混乱」に惑わされ、多くのエネルギーと時間を無駄にしてきた。私は内なるバトルにばかり気を取られていて、身の回りで起きていること、今この瞬間の出来事を見失っていた。今まで数多くの瞑想を積み重ねてきたおかげで、今や私の脳機能は瞑想の時間が取れないときですらも自動的に向上した。かつての私はミスを犯すたびに凍りついていた。かつての私は、自分がフェデラーやアンディ・マレーとは決して同格ではないことをよくわかっていた。今でも、サーブを失敗したりバックハンドをしくじったときに、自己疑念にかられることはあるが、一方で対処法もわかっている。ネガティブな考えが浮かぶことをそのまま認めて、そのままやり過ごし、今の瞬間に集中するのだ。あのマインドフルネスが、痛みや負の感情と向き合うのにとても役立っている。このおかげで私は本当に大切なものに集中できている。そして脳内でそんなネガティブな声の音量を下げることができている。この技術がグランドスラム大会の試合真っ最中にどれほど役立つか想像がつくだろうか。だからこそミンドフルネスは、今の私のスポーツに関する原動力である哲学を作り上げてくれた。「この試合、この一日、今この瞬間に一番大切なものに集中できれば、結果は望みうるかぎりで最高のものになる」と。多くの人たちが「どうやって瞑想するの?何か変なことをしないといけないの?」と聞いてくる。実際はじつにシンプルなものだ。まずは小さく、ごく短時間から始めることだ。座禅を組むだの、お香を焚くだの、うなり声を上げるだのは必要ない。ただ静かに座り、自分自身の呼吸に集中する。あるいは外を散歩して、一歩一歩の歩みを意識すればそれでいい。どれくらい長くできるか競うのが目的ではない。これは我慢比べではないのだ。瞑想のゴールは静寂の中で、集中して、ポジティブなエネルギーを見つけることだ。
・かつての私は一日中ずっと「忙しい」ことが必要だと思いこんでいた。オープンマインドで見直してみた結果、自分にとって本当に必要な時間を確保することを学んだ。私の食事は神聖な時間だ。時間があればいつでも静寂を尊重するようにしている。瞑想があなたにも有効なものになるために、まずは一日の中でほんの短時間でいいから自分の時間というものを作ってほしい。健康的な食事をする、あるいは外に出て新鮮な空気を吸うことだ。間違ってもそんな静寂の時間をとる自分に「ワガママ」だの「怠け者」だのといったバカげたレッテルを貼らないでほしい。多くの人たちは忙しくしていないときは時間を無駄にしている、あるいは自分が役立たずか怠け者だと思い込んでしまいがちだ。実際、瞑想を始める前の私がそう思っていたのだ。瞑想をするとチャンスがよく見えるようになる。たとえばあなたに子どもがいて、一日中育児をしなければならないとしよう。突然、3人全員の子どもが何かに取り組むことになり、自分の時間を10分間だけ持てるとする。こういうときに「XとYとZをしないといけないな」と考える代わりに、この時間は自分のことだけを考えるようにしてほしい。浮かんでくる考えを認め、そのまま流していくのだ。これは練習すればするほどうまくなる。すぐにこの時間が一日の中でもっとも大切なものになるはずだ。その後、残りの一日全体における考え方に変化が見られるようになるはずだ。ネガティブなエネルギーが消失し、ポジティブなエネルギーが充満する、最高の気分を味わってほしい。
・私の一日でもっとも大切な時間・・・それは夜だ。具体的には、私の頭が枕に着地した瞬間だ。冗談ではなく本気である。私は睡眠を食事や練習予定、あるいはライバルと同じくらい丁重に扱っている。それほど睡眠は大切なのだ。大部分の人たちは睡眠を軽視している。そういう例を私はたくさん見ている。ある統計によると、少なくとも4人に1人は十分な睡眠をとっていないという。もしあなたもそんな睡眠不足の一人なら、毎日それを実感しているはずだ。これから、なぜ私が絶対に睡眠をないがしろにしないかを話そう。運動と睡眠は決してケンカをすることがない夫婦のようなものだ。この2つはお互いを支えあっている。どのように?快眠できれば強い負荷をかけたトレーニングができる。強い負荷をかけたトレーニングができれば、夜はぐっすり眠れるようになる。体を鍛えるために運動をして、睡眠により翌日にはさに回復して強くなる。運動をしてもっと寝られるようにしよう。そしてよく寝てもっと運動できるようにしよう。多くの人はこの”公式”を忘れたり無視したりする。実際、健康を約束する3つの大切な習慣のうち2つは良い食事と適度な運動なのだが、睡眠がおそらく一番無視されがちだ。何か悪い物を食べたり、運動をさぼったりすると、何となく気がとがめると思うし、少なくとも何かが足りないことを自覚しているはずだ。だが数時間の睡眠を削ったときはどうか?それこそ毎晩睡眠不足だったら?つまりあなたは忙しいということだ。そして忙しいとはいいことだ。忙しいことを気に病む人はいない。だが忙しくなければ?それは考えるだに恐ろしいことだ。だがもう一度睡眠を見直し、睡眠がどれほど活発な肉体に役立つかを考えて、願わくばあなたの睡眠に対する考えを変えてほしい。
・ウィンストン・チャーチルの言葉を思い出していただきたい。「私たちは得るもので生活するが、与えるものによって人生を形作る」つまり周囲の人たちに与えれば与えるほど、あなたの魂は大きく成長し、人間としても大きくなれるのだ。愛、喜び、幸福、健康。こういったものこそ私がつねに求め続けているものであり、決して当たり前だと思ってはいけないものだ。だから私は自分自身、人生、そしてこの世界のことをつねに意識するようにしていたいのだ。これが本当の意味での「マインドフルネス」(留意)ではあるまいか?これらすべてが私の成功に大きく寄与している。
・なぜ小麦がそこまで人体にとって危険な食物になったのでしょうか?人類が農耕を始めて約1万年が経ちますが、これは遺伝子の変異が発生するには短すぎる期間です。それまで人類は200~300万年以上のあいだ狩猟生活をしていたわけで、その頃の体内システムが今もそのまま残っています。ですから、アスリートであろうと一般人であろうと、まずは狩猟時代に最高のパフォーマンス・成果を発揮できた食生活に戻すべきというのが私の基本的な考えです。そしてもう一つ大きな問題があります。小麦は何度となく繰り返された激しい品種改良によって、今やかつての小麦とはまったくの別物になっています。そして、グルテンをはじめとするこのタイプの小麦の含有タンパク量はヒトの耐性限度を超え、さまざまな悪さをするようになってしまったのです。本書にあるとおり、グルテンは砂糖よりも早く急激に血糖値を上げてしまうものです。そのため、たとえ小麦アレルギーがない人でも、肥満や高血圧、糖尿病、心臓・内蔵疾患、脳疾患、皮膚疾患などを引き起こします。小麦によって「脳の霧」と呼ばれる症状が発生し、集中力が散漫になったり、短期記憶が不正確になったりといった軽度の認知障害を引き起こすことが学界でも報告されています。
良かった本まとめ(2015年上半期)
<今日の独り言>
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ジョコビッチの生まれ変わる食事という本は、2012年、2014年と世界1位を維持したプロテニスプレイヤーであるノバク・ジョコビッチ選手が書いたもので、小麦粉などに含まれるグルテンや乳製品等をやめる食事に変えることによって、劇的に健康な身体になったことについて書かれたものです。
ジョコビッチが小麦やチーズを使うピザ屋の息子で、そのピザが体調不良の原因だったというのは皮肉です^_^)
特に自分も特定の食物に対する不耐性を調べるELISAテストを受けて、より健康に留意したいと思いましたね。
また、本書ではジョコビッチがセルビアのベオグラードでコソボ戦争により空爆を受けながらも困難をクリアしていることや、テニス人気がないセルビアで6歳でウィンブルドンで優勝することを心に誓ったことなど驚くべきことが満載です。
特にエレナというコーチがスポーツだけを教えた訳ではなく、クラシック音楽を聴かせ、詩も読ませたのは素晴らしいと思います。
そして家族が外国語の勉強を勧めたので、母国語のセルビア語に加えて英語・ドイツ語・イタリア語も学び、今ではフランス語も操るマルチリンガルというのは素晴らしいと思いました。
本書では具体的には以下等について書かれています。
・体調不良だった頃の状況から人生を一変させた食事に出会うまで
・空爆を受けていた少年時代の状況とテニスとの出会い
・食事を変えた後のウィンブルドン・ナダルとの戦い
・試合がないふつうの一日の過ごし方
・新しい食事の14日間
・食物アレルギーの検査方法
・グルテン及びグルテンが入った食べ物
・砂糖や乳製品について
・4つの食事に関するルール(ゆっくり食べる、体に明確な指示を与える、前向きであれ、量ではなく質を追求)
・具体的な朝食や昼食、一週間分の栄養
・オープンマインドなる
・ポジティブなエネルギーが不可欠
・瞑想する時間が大切
・睡眠が大切
・具体的なフィットネスプラン
・おすすめ食品ガイド
・王者のレシピ
「ジョコビッチの生まれ変わる食事」という本は、食事だけでなく前向きな思考についても書かれていて、真の健康を考える上でとても参考となる良書だと思います。
とても勇気づけられましたし、とてもオススメな本です!!
以下はこの本のポイント等です。
・ノバク・ジョコビッチは、わずかな可能性を手繰り寄せてそんな障壁を乗り越えた、テニス史上に残るほど稀な人間である。そもそも彼はまったくと言っていいほどテニスの人気がない国・セルビアで練習と経験を重ねてきた。そしてコソボ戦争により空爆が続いた故郷のベオグラードで厳しい練習を続け、家族とともに数ヶ月にわたり避難用シェルターで空爆をしのいだ。そのような困難をもクリアしてきたこの王者はさらなる強敵に倒されるところだった。問題は小麦だったのだ。2010年全豪オープン準々決勝の対ジョー・ウィルフリード・ツォンガ戦において、ジョコビッチに異変が起きていることはだれの目にも明らかだった。ミスショットがあり、1000分の1秒のタイミングのずれがあり、難しいリターンの際に苦悶の表情を浮かべ、第4セット中には明らかな腹痛により倒れ込み、メディカルタイムアウトをとっていた。結果は、数時間の激闘の後の敗北だった。その後、2010年全豪オープン決勝の対ラファエル・ナダル戦は正反対だった。ジョコビッチの動きはなめらかで、自信に満ちあふれ、試合を完全に支配していた。端的に言って、見事だった。どうして、これほど変貌することができたのか?答えは単純だ。ジョコビッチは心理的・肉体的に「ピーク・パフォーマンス」に達するために、世間一般のあらゆる栄養士が勧めることと正反対のことをした。彼は食事から一般的には健康的とされる全粉穀物を排除したのだ。その結果、彼は2011年に3つのグランドスラム大会(全豪・ウィンブルドン・全米オープン)を制し、12ヶ月間で51戦中50勝という圧倒的な記録を挙げ、男子ランキング世界1位に躍り出た。
・小麦は消化機能を劣化させることがあり、胃酸逆流から潰瘍性大腸炎、その他の腹部機能不全を引き起こすことがあるのだ。またさまざまな炎症(典型的なものは腹痛や張り)、自己免疫性症状(リューマチ神経痛や慢性甲状腺炎<別名:橋本病>)を引き起こすこともありえる。さらに悪いことに、パラノイアや統合失調症といった精神疾患、そして行動障害や自閉症の子どもの学習障害をさらに悪化させることさえある。そして特有の食欲増進作用により腹部を中心とした肥満を促し、毎日何時間も練習を積んでいるアスリートにさえ体重増を引き起こしてしまう。競技の最中にこのような症状を引き起こすと、思考に「霧」が発生し、他にも疲労やホルモン不全を作り出すため、どんな優れたアスリートでも肉体・感情面で激しい変調に襲われ、可能性を閉ざしてしまうのだ。
・ほとんどの人は、人生でなにをしたいのかを6歳で決めることはないだろう。でも、私は決めていた。13年前、セルビアの山岳地帯にあるコパオニクという街で両親がやっていたピザ屋の小さなリビングルームで、私はピート・サンプラスがウィンブルドンで優勝する姿を見て、心に誓ったのだ。「いつの日か、あそこで優勝するのはボクなんだ」と。それまで、テニスなど一度もしたことはなかった。知人の中にもテニス経験者はいなかった。セルビアにおいて、テニスとは、まあフェンシングのように全然人気がないスポーツだった。そして、光り輝くロンドンの街は、私の家族が暮らすちっぽけなリゾート街とはあまりにもかけ離れた場所だった。だが、まさにあの瞬間に、私は自分が他の何よりもほしいものを悟ったのだ。それは、頭上にウィンブルドン大会優勝カップをかかげ、観衆の歓声を浴び、世界一の選手になった瞬間を味わうことだ。4歳のときに、両親は虹色の小型ラケットとボールを買ってくれて、以来私は毎日何時間も飽きることなくレストランの壁にボールを打ち続けて遊んでいた。だがサンプラスのプレーを見たあの瞬間から、私にはわかっていた。その後13年間にわたり、人生のすべてをこのゴールのために捧げ、家族もまた途方もない犠牲を払ってくれた。当初から応援し続けていてくれる友人、トレーナー、コーチ、ファン、そんな人たちが一つになって私が生涯の夢に近づけるよう支えてくれた。
・私の人生が大きく変わったのは、体に合った正しい食事を始め、体が求めるとおりに従ったからだ。新しい食事にしてから最初の3ヶ月で、体重は82kgから78kgまで落ちた。家族と友人がやせすぎではないかと心配するほどだった。だが体のキレがよくなり、神経はさらに研ぎ澄まされ、かつてないほど活力がみなぎるようになっていた。さらに動きが速くなり、柔軟性も増し、他の選手ならラケットが届かないボールにも届くようになり、かつ強さも増し、精神面の集中力も今までになくしっかりしてきた。疲れを感じることも、息切れすることもなくなった。アレルギー症状も消えた。喘息も出なくなった今まであった恐怖や疑念はすべて自信と置き換えられた。もう3年近くひどい風邪やインフルエンザにかかったこともない。一部のスポーツライターは私の2011年のシーズンを「プロテニス史上最高の一年」と呼んだ。タイトルを10個獲得し、グランドスラムで3勝、そして43連勝だ。そのあえに変えたのはただ一つ、食事だけだったのだ。
・私が一番驚かされたのは、わずかな変化なのに、もたらす結果があまりにも劇的だったということだった。私はただ、グルテン(小麦に含まれているタンパク質)を数日間排除しただけなのに、私の肉体はすぐに良い方向に向かったのだ。心身ともに軽くなり、速くなり、クリアになった。2週間後、私は人生が大きく変わったことを実感した。その後さらにいくつかの要素(砂糖を減らし、乳製品を除いた)を付け加えたが、毎朝目覚めたその瞬間に、かつての自分、幼少時代の私とは全然違うことが感じられた。ベッドから跳びだせるようになり、その後の一日が楽しみになった。そして、私が学んだこの素晴らしい内容を、せっかくだから皆さんと分かち合わねばならないと考えるようになった。
・私の体が重くて、動きが鈍くて疲れやすかったのは、ふつうの人とほとんど同じような食生活をしていたからだ。私はまさにセルビア人のように(またアメリカ人のように)ピザやパスタ、パンなどのイタリア料理を、少なくとも一日数回は肉料理と一緒に口にしていた。そして試合中もこれでエネルギー補給になると信じて甘いスナックバーやその他の糖分が含まれた食べ物を口にして、これだけ練習しているのだからと近くのトレイにあるクッキーまで存分に食べていた。だが、当時の私が気づいていなかったのは、こういう食べ方をしていると体内に炎症という症状を引き起こしてしまうことだった。要は、体が受け付けない食べ物を口にしていると、体は鼻づまり、関節痛、内蔵のけいれんといった形で信号を送ってくる。医師によると、私の体に発生した喘息から関節炎、心臓病やアルツハイマー病に至るまで、すべてある種の炎症なのだという。
・わずか数日のうちに、エレナは私のことを「ゴールデン・チャイルド」と呼ぶようになった。そして両親に対して「この子は今まで私が見た中でもモニカ・セレシュ以来の才能を持っていますよ」と語り、私を成長させることをミッションとして自らに課すようになった。毎日学校が終わると、私は他の同級生たちとの遊びの約束を無視して、練習に向かうために大急ぎで家に帰った。毎日、私は何百本ものフォアハンド、何百本ものバックハンド、何百本ものサーブといったテニスの基本的な動きを、歩くのと同じく自然にできるようになるまで打ち込み続けた。両親が無理矢理私を練習させることはなかった。コーチがガミガミ言うこともなかった。私が練習したくないときに強制する人はいなかった。いつも私はテニスをしていたかったのだ。エレナはスポーツだけを教えてくれたわけではない。私の知的成長を促すために両親のパートナーになった。私たちを囲む世界は大きく変わっており、私が産まれたときにはあったはずの共産主義は崩壊していた。両親は将来が今までとはまったくの別世界になることを理解しており、子どもが世界のどこにいても学べる人間になることが大切だと認識していた。エレナは私を精神面で落ち着かせ、集中力を高めるためにクラシック音楽を聴かせ、詩も読ませた。-ちなみにプーシキンがエレナの好みだった-。そして家族は外国語の勉強を勧めたので、私は母国語のセルビア語に加えて英語・ドイツ語・イタリア語を学ぶようになった。こうしてテニスの練習と人生における学習が一体となり、たびひたすらエレナとコートで時間をともにして、スポーツについて、自分自身について、そして世界についてもっと学びたいと望むようになった。
・いつも私は自分の夢に集中していた。しろいろなカップやボウル、プラスチックを取り出してはトロフィーに見立て、鏡の前に立ち、「ノールが王者だ!ノールがチャンピオンだ!」と言い続けた。
・戦争さえも、私がテニスをすることを止めることはできなかった。日中に、私はベオグラードのどこかでエレナと練習をするために落ち合った。そして、彼女は妹が崩れた壁の下敷きになって、致命傷になってもおかしくないほどの大怪我をしたときでさえ、私がふだんどおりの生活ができるよう配慮してくれた。私たちはいつも、まさか昨日襲った場所を今日続けて攻撃することはないだろうと考えて、一番最近に空爆を受けた場所に行った。私たちはネットなしの環境や、破壊されたコンクリートの上でプレーすることさえあった。私の友人でもある女子プロテニス選手アナ・イヴァノヴィッチは、使われなくなったプールで練習しなければならなかったという。
・世界最高の選手になるには何が必要なのだろう?毎朝目覚めるたびに、私はコップ1杯の水を飲み、ヨガと太極拳を組み合わせたストレッチ運動を約20分行う。そしてこれから始まる一日に備えて肉体に栄養を与えるべく、ほぼ毎日同じ朝食をとる。朝8:30頃になると、毎日寝るまでほぼつきっきりで私の食事、飲み物、すべての動きを見守るコーチおよびフィジオセラピストと合流する。2人は毎日毎日ほぼ1年中を通して私と一緒にいる。5月のパリ、8月のニューヨーク、1月のオーストラリア、どこでも同じだ。それから毎朝1時間半にわたり練習パートナーとともに打ち込みを行い、お湯で水分補給をする。それから現在の私の体の状態に合わせて必要なビタミン・ミネラル・電解質を配合したトレーナー特製のスポーツドリンクを飲む。さらにストレッチを重ねてスポーツマッサージを受け、ランチに入る。食事は、糖分とタンパク質を避け、私が必要とするグルテンフリー・乳製品なしの炭水化物だけを摂取できるようにしている。今度はワークアウトの時間だ。1時間少々使ってウエート及びレジスタンスバンドを用いたトレーニングを行う。ハイレップス(高回数トレーニング)を1セット、軽めのウエートで必要な動きを最高で約20種類取り入れている。午後半ばにさしかかると、フィジオ特製の医療用の豆製プロテインドリンクを飲む。再びストレッチに入り、もう一度トレーニングのセッションを始め、90分間ボールを打ち続け、サーブとリターンの精度を高める。4回目のストレッチが終わったら、もう1回マッサージだ。この時点で私はほぼ8時間連続でトレーニングに励んでいることになるが、ここから少しの時間を割いて私のビジネス関連の仕事に手をつけていく。ほとんどの場合、記者会見かチャリティーイベント参加といった用事だ。それから夕食の時間となる。高タンパク質で、サラダ付き、炭水化物とデザートはなしだ。それから1時間少々読書をすることもある。おもにパフォーマンス向上や瞑想をテーマとしたものだ。あるいは日記を少々書くこともある。そして、やっと就寝時間だ。これが私の「試合がないふつうの」一日だ。
・ついに5ー3となり、ウィンブルドン優勝に向けてのサーブを打つことになった。ついにここまできた。今までやってきたすべてはこの瞬間のためにあり、もう手が届くところまできていたが、さすがにナダルは簡単に明け渡してはくれなかった。あちらは素早くリードをとって15ー15となり、われわれは恐るべき長さのラリーに突入した。お互いをコートの隅に追い込み続ける姿を見て観衆はさらに熱狂し、ラリーはナダルがフォアハンドをネットに打ち込むまで続いた。しかし、再び彼は強烈なフォアハンドのスマッシュで30ー30まで戻してきた。われわれはもうしばらく接近戦を続けることもできたが、私の内なる声はこのベースラインゲームでもう少し揺さぶりをかけ、彼にとどめを刺せと叫んでいた。私はサーブして、すぐにネットに近づいてナダルを驚かせた。サーブアンドボレー!そして相手のリターンを叩きつけた。相手の予想外だった。そして相手が何よりも予測していなかったのは、「チャンピオンシップポイント、ジョコビッチ」だ。私がサーブして、お互いリターンを返す。そしてその瞬間はやってきた。ナダルはバックハンドをライン近くに打とうとしたが、ショットが長すぎてベースラインを越えてバックアウトになるのは明らかだった。勝利を決めた後、私は芝生に背中から倒れ込み、6歳の頃に戻って地面に寝そべった。今回のトロフィーは6歳の頃抱いたプラスチックではなかった。今回は、本物なのだ。この24時間で、私の生涯をかけた2つの夢が実現した。ウィンブルドン制覇、そして世界1位の選手になるということだ。数日間の成果としては悪くないものだ。自分に合った食べ方を知らなければこんなことは絶対に不可能だった。
・セトジェヴィッチ博士は、特定の食物に対する私の不耐症をもっと正確に計測する方法があることを話してくれた。その中でもっとも信頼に足る正確さを誇るのがELISAテストと呼ばれるもので、これは薬物中毒からマラリア罹患、HIV感染、そして食物アレルギーに至るまで、あらゆることがわかる血液検査だ。ELISAテストを行えば、食物の不耐症について非常に具体的な点まで知ることができる。不耐症でよくあるのがグルテン、乳製品、卵、豚肉、大豆、ナッツなどだ。人によっては珍しい不耐症を持っている場合もあるし、意外な組み合わせが問題となることもある。たとえば、私のトレーナーをしてくれているミルヤン・アマノヴィッチはパイナップルと卵白に対して過敏であることがわかった。とにかく、自分が何に対して過敏で不耐症があるのかがわかると、大した努力もせずに劇的な変化をもたらすことができる(実際、上記2つの食べ物を外しただけで、ミルヤンやわずか数週間のうちに約4.5kgも体重を落とすことができた)。私の血液検査結果が戻ってきたときの衝撃は大きかった。私は小麦と乳製品に対して強い不耐症があり、トマトに対しても少し敏感だったのだ。「今後、君の体の機能を上げたいのであれば、パンを食べるのはやめなさい」。セトジェヴィッチ博士が言い渡した。「チーズもダメだね。トマトも減らすことだ」。「先生、待ってくださいよ」。私は抵抗した。「うちの両親はピザ屋なんですよ!」
・東洋医学で私にとって一番参考になったのは体内時計の概念だった。つまり、われわれの肉体には毎日のスケジュールがあり、それぞれの臓器が休息を求める時間帯があるという考え方だ。この中国の伝統の知恵によると、体内のそれぞれの臓器は次のような順番で修復していくのだという。
▼肺:午前3-5時。喫煙車ではなく日々体に気を遣っている人でも目覚めの際に咳をするのは、就寝中に肺が体内のゴミの処理をしているからなのだという。悪い食事をしていると肺の負担がさらに重くなるという。
▼大腸:午前5-7時。起きてすぐに水を飲むのが大切なのは、この時間帯に大腸は体内の毒素を排出しようとするからだ。水はこのプロセスの補助になる。
▼胃:午前7-9時。胃が一番活発に動いているのはこの時間帯なので、朝食をとるには最高の時間帯なのだ。
▼脾臓:午前9-11時。
▼心臓:午前11-午後1時
▼小腸:午後1ー3時。もし体に間違った食物を与えたとしたら、この時間帯に体から一番強いシグナルが発せられる。この時間帯に消化不良や何らかの痛み、膨満感を覚えたとしたら、ついさっき食べた物の何かに対して体が過敏に反応しており、食事内容を見直す必要があるという証拠だ。
▼腎臓と膀胱:午後3-7時。慢性的にこの時間帯で疲れを感じるとしたら、何か体が過敏に反応する食べ物をとりすぎているという意味だという。午後遅い時間はもっとも活力にあふれる時間帯であるべきで、昼寝のための時間ではない。
▼膵臓:午後7-9時 膵臓は血液内の糖分を作り出すインシュリンを制御している。食事に問題があると、この時間帯にやたら糖分・スイーツを欲しがるようになる。
▼動脈と静脈:午後9-11時
▼肝臓と胆嚢:午後11時-午前3時。睡眠に難があるとすれば、食べ物に問題がある可能性があるという意味だ。もしこの時間帯に寝つけないとすれば、肝臓が体内の毒素を排除するためにフル稼働していると考えられる。
・私は6歳のときに世界一になりたいと言い、最初のコーチとなったエレナ・ゲンチッチは私の言葉をなぜか真剣に捉えてくれた。そして彼女は世界の頂点に立つためには、単なるテニス以上のことを学ばなければならないと信じていた。クラシック音楽を聴く、詩を読む、人間のコンディションについて深く考える。こういったことが初期の私に課せられたトレーニングの一部だった。これは両親と住む自宅と、エレナとともに過ごしたコートの両方で行われた。コーチが開発してくれたのは私の思考だけではなかった。前進し続けるためのツールも与えてくれた。コーチのおかげで、私は太極拳からヨガに至るまであらゆるコンディショニングの手法を試し、専門家を求めていった。もし本当に世界最高になれるのであれば、そのためのあらゆる可能性を試しておきたかった。だから私はセトジェヴィッチ博士が奇妙な理論をひっさげて連絡してきたときに、耳を傾ける気になったのだ。
・「2週間でいい」。博士は言った。「14日間だけこういう食べ物をやめてみてくれ。それから私に電話をくれ」最初は辛かった。あのソフトで噛みごたえもあるパンが恋しくてならなかった。今まで食べてきたピザ、甘いロール(菓子パン)、その他諸々の小麦が入っている好物が欲しくて仕方がなかった。とにかく最初の1週間はそういう食べ物が欲しかったのだが、毎日自制して乗り切った。そして幸いにも家族や友人-私のことを気がふれたと思っていたらしいが-が支えてくれた。だが日が進むに連れて、気分が変わってきた。体が軽くなり、活力が湧いてきたのだ。それまで14年間悩まされていた夜間の鼻づまりが突如消え去った。1週間目が終わる頃には、もはやロールからクッキーやらパンやらが欲しくなくなっていた。まるで生まれてからずっと付きまとっていた煩悩が奇跡的に消滅してしまったかのようだった。翌週は毎日、最高の目覚めを迎えることができた。すでに私は信じるようになっていた。2週間の体験を終えた私にセトジェヴィッチ博士はベーグルを食べるように指示を出した。「これが本当のテストなのだ」と博士は説明した。ある食べ物を14日間避けてみて、そこでもう一度それを食べて反応をみるのだ。そして驚くべきことに、グルテンを再び食事に取り入れた次の日、私は一晩中ウィスキーを飲んでいたかのような感覚に襲われたのだ!10代の頃そうだったように、ベッドを這い出るのがやっとだった。私はめまいを覚えていた。鼻づまりも再発していた。まるで二日酔いのような状態だった。「これが何よりの証拠だ」。博士は断言した。「つまり、君の体がグルテン不耐症だと知らせてくれていのだよ」。それ以来、私は体が伝えようとしている声にはすべて耳を傾けるようにしている。
・たかだか数年前と比べても、現在ではグルテンの弊害が広く知られるようになり、おかげで何千万人もの人々が以前より健康になっている。グルテンとは、小麦やライ麦、大麦など穀物に含まれているタンパク質である。これがパンに柔らかさを出す「糊(グルー)」の働きである。グルテンがなければ、ピザを空中に放り投げることもできないし、くるくると回すこともできない。世間で健康的だとされている全粒穀物製品も含め、あらゆる小麦製品にはグルテンが含まれている。つまり、グルテンは私たちが口にする大多数の食物に含まれているということだ。具体的には、どんな食べ物に?ここに例を挙げよう。
▼パン:ここで言うパンにはイングリッシュ・マフィン、ハンバーガーのバンズ、小麦粉のトルティーヤ、サンドイッチ、そしてイーストが遣われていないマッツォ(ユダヤ教の祭りで食べるパン)のようなパンも含まれている。
▼小麦粉から作られた麺・パスタ類:すなわち全小麦パスタ、生地にホウレン草を練りこんだようなパスタ、その他小麦を含むパスタすべてがここに含まれる。
▼ケーキ、マフィン、ドーナツ、粘り気があるバンズ、パイの皮などスイーツ全般
▼小麦粉で作られたクラッカー、プレッツェル、その他のスナック類
▼朝食のシリアル:一見小麦など含まれていなさそうなコーンフレーク類も含む。他にも子供向けの甘味付きシリアルや、大人向けの「健康的」な無加糖製品も含む。
▼ビールその他麦芽から蒸留されたアルコール飲料:一部のワインも麦芽入りである。いくつかのウォッカも小麦から蒸留されている。
・以下の食品には小麦製品が入っていたり、どこかで小麦製品が混ざり込んでいる可能性がある。一部の物には驚かれるだろう・・・。
▼肉の詰め物:これに含まれるのは冷製の加工肉、ミートローフ、ミートボール、ホットドッグ、ソーセージ、煮出し汁のかかった鶏肉などである。
▼一部の卵・ナッツ製品:卵類の代用品、乾燥卵、乾燥ローストナッツ、またピーナッツバターがグルテン不耐症の真犯人という場合もある。
▼マリネおよび調味料:タンパク加水分解物入りの製品は避けること。マリネ、味噌、醤油、タコス調味料、あるいはクリームソースやグレービーで味付けされた食品、さらにケチャップの原材料には気をつけよう。一部には大麦から作られた麦芽酢が使われている場合がある。
▼一部の乳製品:チョコレートミルク、ミルクセーキ、フローズンヨーグルト、風味付きヨーグルト、チーズスプレッド、チーズソースといったところだ。当然だが、麦芽入りミルク及び麦芽入りミルクパウダーは避けること。
▼加工チーズ:加工チーズ、カッテージチーズ、加工デンプン、あるいは原料不明の保存料はすべて除くこと。
▼代用パンと穀物:ブルグアやクスクス(ともに小麦を加工した食品)、デュラム小麦、ヒトツブコムギ、シリアルに使われるエマー、ファリナ(小麦粉の種類)、麦芽や麦芽調味料、麦芽エキスなどの大麦製品には気をつけること(なお、ソバ粉は完全に安全だ)。
▼一部の果物と野菜:ファストフード店で出されるフライドポテト、市販のドレッシング、フルーツパイのフィリング、クリーム付き野菜、バターをかけた野菜にはグルテンが入っている恐れがある。また、パン粉は一部のドライフルーツのコーティングに使われることがある。
▼ベジタリアン食品:ベジーバーガーからベジタリアンチリ、ベジーソーセージにはグルテンが含まれていることがある。
▼デザート類:一部のアイスクリーム(特にクッキーやブラウニーが入っているもの)、糖衣(フロスティング)、キャンディ、スナックバー、マシュマロ、ケーキ、クッキー、ドーナツといった物は小麦、ライ麦、大麦で作られている。小麦粉入りのプリン、グルテン安定剤を含んでいるアイスクリームとシャーベット、アイスクリームのコーン、カンゾウのエキスには要注意。
▼飲料品:インスタントのお茶とコーヒー、コーヒー代用品、チョコレートドリンク、ホットココアミックスは避けること。ビール、麦芽飲料、シリアル飲料、人工ミルクによるクリームも同様。
▼揚げ物の肉と魚:ファストフード店のフライドチキンからステーキハウスで出されるイカフライに至るまで、パリパリのコーティングが付いている物はすべて外すこと。
▼意外なもの:カラメル、キリスト教のミサでの聖体拝領の際のウエハース、一部の封筒用の糊、米国の合成粘土・プレイドー、一部の薬、またリップスティックなどのコスメ製品にもグルテンが隠されていることがある。
・私はインシュリン増加をもたらすすべてを排除しているが、これはすなわち小麦だけではなく砂糖やチョコレートやソフトドリンクといった糖製品も避けているということだ。その結果、私の食事はシンプルそのものになっている。野菜、豆、白身肉、魚、果物・・・こういった食物の大部分は天然であり加工されていない。小麦を食事から排除し、そこからくるインシュリン急上昇もなくなると、その他の糖製品をやめるのも楽になる。
・私は、グルテンフリーの食事をすべての人々に勧めることができる。たとえグルテン不耐症でなくとも、小麦によってもたらされるインシュリンの急激な分泌が体にいいはずがないのだ。そして私たちの多くはラクトース不耐症を抱えているので、乳製品でも同じことを試してみる価値がある。
・もし乳製品に別れを告げることを決めたら、一つ注意が必要だ。乳製品を受け付けない人にとって大問題とんおは体質強化(特に骨だ)に必要なカルシウムを十分な量とれないことだ。だからといって私はあまりサプリメントは好きではない。栄養はできるだけ自然の食物からとったほうがよいという考えだ。カルシウム源として代わりになるのは、ブロッコリー、そしてツナやサーモンなどの魚類で、これぞ私のカルシウム源だ。私はこういう食品が大好きだ。アーモンドミルクのようなミルク代用品も非常にカルシウムが多い。一部のラクトース不耐症の人たちは食品内のラクトースを減らす発酵プロセスを経た乳製品なら食べることができる。「生きた乳酸菌」とラベルでうたっている商品なら大丈夫だ。ただし、一つだけ要注意だ。ヨーグルトは生きた乳酸菌を含む典型的な食品だが、多くのヨーグルトには糖分がたくさん添加されており、これはスナックバーと同じくらい体に悪い。買う前に必ず原材料のラベルを確認するようにしよう。
・乳製品が貴重なタンパク源であることは確かだが、それが「低炭水化物」食品とは限らない。もちろん、スナックバーやコカ・コーラほどではないが、グラス1杯の乳脂肪分1%の牛乳には102キロカロリーが含まれていて、うち半分は糖分から来ていることをどれだけの人がご存知だろう?もう一度繰り返す。グラス1杯の1%牛乳のカロリーの半分は糖分なのだ。金輪際、乳製品と牛乳をやめろとあなたに言うつもりはない。ただ、私は食べるべきではないということだ。
・私はどこへ行っても、以下の食べ物をつねに探している。
▼肉、魚、卵:鶏肉、七面鳥肉と、あらゆる種類の魚は私の好物だ。こういったものを少なくとも一日に1回か2回は食べている。赤身肉を食べるときは、できるだけ魚や鶏肉にし、可能なかぎり脂肪を落とすようにしている。そして、どんな種類の肉または魚を食べるにせよ、最高の品質であることを確かめてほしい。魚で言えば、養殖ではなく天然の物を選んでほしい。肉なら、牧場で草を与えられた牛と平飼いの地鶏がいい。これまで多くの研究で、天然に近い環境で育った動物のほうが健康的で栄養価も優れていることが明らかになっている。卵について言うと、私自身は朝にタンパク質をそれほどとらないので、卵はあまり食べない。だが卵は一日の終わりに肉を調理すのが面倒くさいときに、健康的に手軽に栄養を与えてくれる。
▼低炭水化物野菜:野菜は、人類が必要とするあらゆる栄養を含む天然の食べ物だ。ビタミン各種、ミネラル、食物繊維、抗酸化物質などだが、すべての野菜においてこれらのバランスが整っているわけではない。ビート、ジャガイモ、その他の根菜、そして瓜、カボチャなどの野菜はデンプンと炭水化物が多すぎる。私はつねづね最大限のエネルギーを得るために、日中のうちに炭水化物を集中的に摂取するようにしているので、タンパク質を重視している夕食時にはこういった物は避ける。一方で葉野菜や茎野菜、たとえばブロッコリー、カリフラワー、インゲン豆、アスパラガスなどは、私の言葉で言えば「中庸」の野菜だ。これなら炭水化物もそれほど多くないし、一日の中でいつでも食べることができる。
▼果物:あくまでも糖分をとりすぎないように抑え目にしている。それでも、糖分をとるにあたって、果実に含まれるフルクトース(果糖)は一番上質な物だ。加えて、果物は栄養価も高い。特に私が好きなのはあらゆる種類のベリーで、少しずつ食べている。
▼穀物類:私がいつも食べているのはほとんどがキノア(アンデス高原地帯が原産のアカザ科の穀物)、ソバ、玄米、オート麦だ。キノアとソバ粉があれば美味しいグルテンフリーパスタができる。
▼ナッツおよび豆類:一番良いのは火が通っていない生の物だ。練習が丸一日続く日に活力となってくれるのがこういった食物だ。体重を増やさずにタンパク質を補ってくれて、他にも食物繊維や一価不飽和脂肪酸など、体に良いものも与えてくれる。私のお気に入りは、アーモンド、クルミ、ピーナッツ、ヒマワリの種、カボチャの種、ブラジルナッツ、ピスタチオといったところだ。
▼健康的なオイル:私はいつもオイルについては可能なかぎりオリーブオイル、ココナッツオイル、アボカドオイル、亜麻仁油だけを使うようにこだわっている。
▼豆果(マメ科植物):私が好きなのはヒヨコ豆(ホムスの原料)とレンズ豆だ。繊維と栄養価が豊富な黒豆とインゲン豆もいい。ただし塩分が高すぎる缶詰の豆は避けたほうがよい。
▼調味料:カギとなるのはケチャップやバーベキューソースのように糖分を加えすぎた調味料を避けることだ。マスタード、ワサビダイコン、酢、ホットソース、ワサビなどは非常に良い。あとはサルサ、それも自家製の物を忘れてはいけない。
▼ハーブとスパイス:ここで挙げきれないくらいたくさんの種類がある。テーブル上のバスケットのパンが恋しくなるくらい、いろいろな食事に取り入れて使ってほしい。
・私が一種の宗教として守っている4つの原則
①ゆっくり、意識的に食べよ
②肉体に明快な指示を出せ
③前向きであれ
④量ではなく、質を求めよ
・私がベッドから出て真っ先に行うのが、グラス一杯の室温の水を飲むことだ。それまで8時間にわたり何も飲まずにいるので、体は機能し始めるために水分補給を必要としている。水は肉体の修復プロセスにおいて必要不可欠なものだ。水分補給が不十分だと、体調維持に大きな支障をきたすことになる。私は理由があって氷水は避けている。私の予定には絶えずトレーニングと練習がつまっている。ほとんどの日において、私はまずいくつかのヨガの動きから始める。あらゆる運動において、それが単なるストレッチ運動であっても、筋肉への良好な血流が必要となる。氷水を飲んでしまうと、体は水を体温まで温めるために消化器官へ余計な血液を送り込む必要がある。冷水を温める過程ではいくばくかのカロリー燃焼につながるが、それにより消化が遅くなるうえに、私が本当に求めている筋肉への血流が妨げられてしまう。よって朝だけでなく一日を通して、私はおもに温かい水を飲むようにしている。
・私の朝の習慣の2つ目はあなたを驚かせるかもしれない。スプーン2杯の蜂蜜を口にするのだ。それも毎日だ。できるだけマヌカハニーというニュージーランド産の物をとるようにしている。これはマヌカという木で育てられたミツバチからとった色が濃い蜂蜜で、通常の蜂蜜よりもさらに大きな抗菌作用がある。蜂蜜は糖だ。だが肉体は糖分を必要としている。特に果実や野菜、そして蜂蜜に含まれている糖分であるフルクトースを必要としている。肉体が必要としていないのはチョコレートやソーダ、あるいは瞬時に糖分を補給することができる大部分のエナジードリンクなどに含まれていて、飲んだ瞬間に「ワオ!」と声が出てしまうような精製されたスクロースのふだ。
・ちょっとしたストレッチまたは軽い美容体操を終えたら、朝食の時間だ。ほとんどの場合、私はパワーボールと称して、通常サイズのボウルに以下の材料を混ぜた物を食べている。
▼グルテンフリーミューズリー、またはオートミール
▼一握りの分量のさまざまな種類のナッツ:アーモンド、クルミ、ピーナッツ
▼ひまわり、またはカボチャの種
▼スライスにしてボウルに入れる果物:バナナやあらゆる種類のベリー
▼ココナッツオイル:小スプーン1杯
▼ライスミルク、アーモンドミルク、またはココナッツウォーター
・私にとって、典型的なランチとは野菜入りグルテンフリーパスタだ。このパスタはキノアかソバで作られている。野菜について言うと、選択肢は膨大にある。アブラナ、新鮮なトマト、時にはキュウリ、大量のブロッコリー、大量のカリフラワー、インゲン豆、ニンジンなどなどだ。こういった野菜類とパスタとオリーブオイル、そして少量の塩を混ぜる。これらを混ぜると私好みの美味しい物ができる。私が食べないのはトマトソースのようなこってりとしたソースだ。
・多くの人たちがアルコールについて私に聞いてくる。どのみち私はビールまたは小麦から蒸留されたウォッカは飲めないので、そもそも考える意味がない。大会中にアルコールを飲んだことはない。これがすべての答えだ。ときどきグラス一杯の赤ワインを飲むことはある。これはアルコール飲料だとは思っていない。ある種の治癒薬のような物であり、聖なる飲み物だと考えている。
・かつて私が悪戦苦闘していた時期、つまり肉体のための適切な食事についてわかっていなかった頃、私はいざというときに肉体的に動けなくなっていただけではなかった。体のけいれんと同時に、脳もけいれんを起こしていたのだ。考えるかぎりでもっとも大きな重圧がかかる場面ですら、私の頭の中にはモヤがかかっていて集中しきれていなかった。ラファエル・ナダルが時速230kmのサーブをこちらへ打ち込んでくるという状況は、このうえもなく心身ともに集中している瞬間のはずだが、今だからこそ告白するが、心理的にも感情的にも、何かがうまくかみ合っていなかった。当時の問題は何か。それは、最近多くの医者たちが使い始めた「穀粒脳」(グレイン・ブレイン)だったのだ。グルテンを含む食物はうつ病や無気力、あるいは痴呆や精神疾患にさえもつながっている。よって「思考」を肉体と同じように遇する必要がある。つまり、適切な滋養を与えるということだ。
・東洋医学においては、思考、肉体、魂をつなげるようにと教えられる。もし前向きな思考-愛、喜び、幸福-があれば、それは間違いなく肉体に影響する。私は大観衆と対面するのが好きで、その中に子どもがたくさんいればなお嬉しくなる。子どもたちにはポジティブなエネルギーしかない。何に対してもオープンだ。熱意もあるし、好奇心に溢れ、次に笑うチャンスをいつもうかがっている。私はファンと出会い、サインに応じ、記念写真に収まるためによく遠出する。そう、これはファンにとって嬉しいことだと思うのだが、じつは私にとっても役立つことなのだ。こういう大観衆から大きな活力をもらっているし、今後も成功するためにはこのポジティブなエネルギーが不可欠なのだ。私を応援してくれる人、立ち止まって声をかけてくれる人が、どれほど私の成功に力を与えてくれているか、おそらくは想像もつかないだろう。だが多くの人々、特に閉ざされた思考の人たちは、恐怖によって動かされている。この恐怖と怒りは、私たちのエネルギーの中でもっともネガティブなものだ。閉鎖的な人たちは何を恐れているのか?いろいろなものが考えられる。間違いを恐れる、だれかが一枚上手なのを恐れる、何かを変えなければならないことを恐れている。恐怖は人生を謳歌する力を限定してしまう。
・瞑想を学んでしばらくすると、何かがかみ合ってくる。私の思考はそういう感じだった。おそらく、他の人の思考も同じように働くのだと思う。私は今まで自身の「内なる混乱」に惑わされ、多くのエネルギーと時間を無駄にしてきた。私は内なるバトルにばかり気を取られていて、身の回りで起きていること、今この瞬間の出来事を見失っていた。今まで数多くの瞑想を積み重ねてきたおかげで、今や私の脳機能は瞑想の時間が取れないときですらも自動的に向上した。かつての私はミスを犯すたびに凍りついていた。かつての私は、自分がフェデラーやアンディ・マレーとは決して同格ではないことをよくわかっていた。今でも、サーブを失敗したりバックハンドをしくじったときに、自己疑念にかられることはあるが、一方で対処法もわかっている。ネガティブな考えが浮かぶことをそのまま認めて、そのままやり過ごし、今の瞬間に集中するのだ。あのマインドフルネスが、痛みや負の感情と向き合うのにとても役立っている。このおかげで私は本当に大切なものに集中できている。そして脳内でそんなネガティブな声の音量を下げることができている。この技術がグランドスラム大会の試合真っ最中にどれほど役立つか想像がつくだろうか。だからこそミンドフルネスは、今の私のスポーツに関する原動力である哲学を作り上げてくれた。「この試合、この一日、今この瞬間に一番大切なものに集中できれば、結果は望みうるかぎりで最高のものになる」と。多くの人たちが「どうやって瞑想するの?何か変なことをしないといけないの?」と聞いてくる。実際はじつにシンプルなものだ。まずは小さく、ごく短時間から始めることだ。座禅を組むだの、お香を焚くだの、うなり声を上げるだのは必要ない。ただ静かに座り、自分自身の呼吸に集中する。あるいは外を散歩して、一歩一歩の歩みを意識すればそれでいい。どれくらい長くできるか競うのが目的ではない。これは我慢比べではないのだ。瞑想のゴールは静寂の中で、集中して、ポジティブなエネルギーを見つけることだ。
・かつての私は一日中ずっと「忙しい」ことが必要だと思いこんでいた。オープンマインドで見直してみた結果、自分にとって本当に必要な時間を確保することを学んだ。私の食事は神聖な時間だ。時間があればいつでも静寂を尊重するようにしている。瞑想があなたにも有効なものになるために、まずは一日の中でほんの短時間でいいから自分の時間というものを作ってほしい。健康的な食事をする、あるいは外に出て新鮮な空気を吸うことだ。間違ってもそんな静寂の時間をとる自分に「ワガママ」だの「怠け者」だのといったバカげたレッテルを貼らないでほしい。多くの人たちは忙しくしていないときは時間を無駄にしている、あるいは自分が役立たずか怠け者だと思い込んでしまいがちだ。実際、瞑想を始める前の私がそう思っていたのだ。瞑想をするとチャンスがよく見えるようになる。たとえばあなたに子どもがいて、一日中育児をしなければならないとしよう。突然、3人全員の子どもが何かに取り組むことになり、自分の時間を10分間だけ持てるとする。こういうときに「XとYとZをしないといけないな」と考える代わりに、この時間は自分のことだけを考えるようにしてほしい。浮かんでくる考えを認め、そのまま流していくのだ。これは練習すればするほどうまくなる。すぐにこの時間が一日の中でもっとも大切なものになるはずだ。その後、残りの一日全体における考え方に変化が見られるようになるはずだ。ネガティブなエネルギーが消失し、ポジティブなエネルギーが充満する、最高の気分を味わってほしい。
・私の一日でもっとも大切な時間・・・それは夜だ。具体的には、私の頭が枕に着地した瞬間だ。冗談ではなく本気である。私は睡眠を食事や練習予定、あるいはライバルと同じくらい丁重に扱っている。それほど睡眠は大切なのだ。大部分の人たちは睡眠を軽視している。そういう例を私はたくさん見ている。ある統計によると、少なくとも4人に1人は十分な睡眠をとっていないという。もしあなたもそんな睡眠不足の一人なら、毎日それを実感しているはずだ。これから、なぜ私が絶対に睡眠をないがしろにしないかを話そう。運動と睡眠は決してケンカをすることがない夫婦のようなものだ。この2つはお互いを支えあっている。どのように?快眠できれば強い負荷をかけたトレーニングができる。強い負荷をかけたトレーニングができれば、夜はぐっすり眠れるようになる。体を鍛えるために運動をして、睡眠により翌日にはさに回復して強くなる。運動をしてもっと寝られるようにしよう。そしてよく寝てもっと運動できるようにしよう。多くの人はこの”公式”を忘れたり無視したりする。実際、健康を約束する3つの大切な習慣のうち2つは良い食事と適度な運動なのだが、睡眠がおそらく一番無視されがちだ。何か悪い物を食べたり、運動をさぼったりすると、何となく気がとがめると思うし、少なくとも何かが足りないことを自覚しているはずだ。だが数時間の睡眠を削ったときはどうか?それこそ毎晩睡眠不足だったら?つまりあなたは忙しいということだ。そして忙しいとはいいことだ。忙しいことを気に病む人はいない。だが忙しくなければ?それは考えるだに恐ろしいことだ。だがもう一度睡眠を見直し、睡眠がどれほど活発な肉体に役立つかを考えて、願わくばあなたの睡眠に対する考えを変えてほしい。
・ウィンストン・チャーチルの言葉を思い出していただきたい。「私たちは得るもので生活するが、与えるものによって人生を形作る」つまり周囲の人たちに与えれば与えるほど、あなたの魂は大きく成長し、人間としても大きくなれるのだ。愛、喜び、幸福、健康。こういったものこそ私がつねに求め続けているものであり、決して当たり前だと思ってはいけないものだ。だから私は自分自身、人生、そしてこの世界のことをつねに意識するようにしていたいのだ。これが本当の意味での「マインドフルネス」(留意)ではあるまいか?これらすべてが私の成功に大きく寄与している。
・なぜ小麦がそこまで人体にとって危険な食物になったのでしょうか?人類が農耕を始めて約1万年が経ちますが、これは遺伝子の変異が発生するには短すぎる期間です。それまで人類は200~300万年以上のあいだ狩猟生活をしていたわけで、その頃の体内システムが今もそのまま残っています。ですから、アスリートであろうと一般人であろうと、まずは狩猟時代に最高のパフォーマンス・成果を発揮できた食生活に戻すべきというのが私の基本的な考えです。そしてもう一つ大きな問題があります。小麦は何度となく繰り返された激しい品種改良によって、今やかつての小麦とはまったくの別物になっています。そして、グルテンをはじめとするこのタイプの小麦の含有タンパク量はヒトの耐性限度を超え、さまざまな悪さをするようになってしまったのです。本書にあるとおり、グルテンは砂糖よりも早く急激に血糖値を上げてしまうものです。そのため、たとえ小麦アレルギーがない人でも、肥満や高血圧、糖尿病、心臓・内蔵疾患、脳疾患、皮膚疾患などを引き起こします。小麦によって「脳の霧」と呼ばれる症状が発生し、集中力が散漫になったり、短期記憶が不正確になったりといった軽度の認知障害を引き起こすことが学界でも報告されています。
良かった本まとめ(2015年上半期)
<今日の独り言>
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