グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

木々の戦い

2013年01月15日 | 植物
大島では昔、薪炭を作るために木が切られていたし、噴火で頻繁に森が焼かれたりするので
20mを越えるような大きな木々が空を覆うような森は、そう多くはありません。

でも神社や一部の地域は、スダジイ、タブノキなどの巨木が元気に生きています。
頭上高くに枝を張り出し葉を広げる巨木たちの、堂々とした姿には圧倒されます。

先日歩いた薬師堂への道も、スダジイが何本も生えていました。

でっかい~!←巨木好き。

しかし大島は、火山の島。
ここで巨体を支えるのは、なかなか大変です。

空から降って来た細かい溶岩の粒や火山灰は、大雨や強風で削り取られてしまいます。

根が空中に出ても、必死に踏ん張る巨木の姿に「がんばれ~。」と言いたくなります。

一方、流れて来た溶岩がゆっくり冷えて丈夫な岩になると、こんどは根がその岩に阻まれ下に伸びることができません。

「ここ、溶岩流だよね。根っこが横に這ってる。」
森の中でも、噴火の歴史を想像中。(笑)

1本ずつの木の、苦労を語るような姿についつい見とれてしまい、ちっとも先に進みません。

「ここもすごいね~。ん?あれ?もしかして…」

同行していた柳場が、突然崖を登りはじめました。

どうしたのでしょう?

上から「あ~、やっぱり!」という声が聞こえて来ました。
「何が『やっぱり』なの~?」

「これ、溶岩流だよ。溶岩を巻き込むように根が伸びてる。」

私も崖を上がってみました。
私の腕ではとても抱えきれないぐらい太い幹が、ド~ンと横倒しになっています。

溶岩に阻まれ、頑張ってそれを突き破ったのに、下の地面が無くなっちゃったのでしょうか?
生えている場所のちょっとした条件の違いが、明暗をわけるのですね。

「どの木にも、それぞれの物語があるんだろうな~。」と、思いながら歩いていたら
こんな木も…

どんな苦労が、あったのやら?

…とまあこんな具合に、木々の物語に思いを馳せたのが1週間前でした。

さて、昨日の台風並の暴風雨の中で、この森の木々はどうなったでしょうか?
気になったので今日、歩いてみました。

巨木達は無事でした。

もしかしたら少し根の下が掘れたかもしれませんけれど、木の下に崖が崩れた痕はありませんでした。

でも、葉のついた小枝はたくさん落ちていました。

さしずめ、擦り傷だらけ…という感じでしょうか?

あ!木が1本倒れています。

白い幹の木が、道を塞いでいました。

近づいてみたら、倒れていたのはヤブツバキでした。

このツボミも、もう咲くことはできないのですね…。

根こそぎ倒れたのかと思ったけれど、幹の途中から折れていました。

防風林として植えられるぐらい、強い木のはずなのに…

もっとも、この森のヤブツバキは幹が細いです。

防風林のように太陽の光が十分当たり、他の木と光の奪い合いをしなくてもよければ、のんびり大きくなれるでしょうが、こういう暗い森に芽生えたツバキは、最初から他の木と競争しなければなりません。

きっと光を求めて、空に向かって急いで伸びていったのでしょうね。
時間をかけて太く丈夫に成長する余裕は、なかったのではないでしょうか?
(白いのがヤブツバキです)

空を見上げていたら頭上はるか上に、明るい赤を見つけました。
ヤブツバキの花が一輪、静かに咲いていました。

なんだか“生命”を感じて、嬉しくなりました。
倒れる木もあれば、花を咲かせる木もある…。

人が一人一人、違う運命を生きるように、森の木も一本一本違う一生を送るんですよね。
森の木々に、歴史あり~!(尊敬)

(カナ)









コメント
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