先般、厚労省から福祉用具の全国平均価格と上限価格が公表された。
平均価格とは、その価格の合計を価格数で割ったのが平均値だが、これは算術平均という。これだとある価格の事業者数と他の価格の事業者数で違いがある場合だと平均値を正しく表していない。
そこで平均値を正しく把握するには、扱っている事業所数を加重して平均値を求める、これを加重平均という。
たとえば、介護ベッドの価格に
¥10,000
¥11,000
¥12,000
¥13,000
¥14,000
¥15,000
¥16,000
¥17,000
¥18,000
¥19,000
と、10種類の価格がある場合の算術平均は、¥14,500だ。これだと事業所数による価格が反映されていないので、これに扱っている事業者数を
価格 事業者数 合計
10,000 2 20,000
11,000 4 44,000
12,000 1 12,000
13,000 5 65,000
14,000 7 98,000
15,000 15 225,000
16,000 6 96,000
17,000 7 119,000
18,000 3 54,000
19,000 1 19,000
とそれぞれ価格と扱い事業者数を想定して、加重平均を計算すると¥14,745となる。
このように平均には算術平均と加重平均とで違いがあり、今回公表の平均値は算術平均か加重平均か知っておきたい。
さらに、想定でしめしたように最多の事業者数の価格と平均値が違っていることも知っておきたい。
つまり、算術平均の価格は、14,500円
加重平均の価格は、14,745円だが
最多価格は15,000円である。
このことから、福祉用具貸与事業者は平均価格と提供商品の価格との違いを説明ができることが求められる。
福祉用具貸与の価格決定の構造には商材の原価、消毒保管費用と配送事務費の費用から構成されるだろう。
1アイテムの原価は、
「1アイテムの仕入れ価格」 「1アイテムの耐用年数」 「1アイテムの休眠期間」
で決定される。
計算式は、
仕入価格÷耐用年数÷12(月数)-保管月数=1アイテムの貸与原価
(例:1アイテム仕入価格5万円・耐用年数7年の車いすを平均18か月間貸し出し・保管月を1か月とした場合の原価)
で、例示の車いすの場合、
5万円÷7÷12-保管月数4で1か月のこの車いすの原価は591円と計算される。
消毒保管費用は
「消毒設備の購入価格」 「消毒設備の耐用年数」 「消毒設備の運転費用」 「保管場所の費用」
で決定される。
計算式は、
消毒設備価格÷耐用年数÷消毒実施回数+(1回当たりの消毒費用÷消毒アイテム数)が消毒に係る費用となり、
保管場所の賃貸料(所有では土地・建物の購入価格÷使用年数+固定資産税等税金)÷総アイテム数が保管場所の費用になる。
(例:耐用年数15年の消毒設備100万円で購入し一回の消毒で8千円、保管場所の賃貸料が月30万円、貸与の総アイテム数が千5百数の場合)
で、例示した場合の費用は
100万円÷15÷12÷30で1日あたりの消毒設備の費用を算出、それに一回の消毒に係る費用8万円を加えた価格を1回の平均消毒アイテム数で割って得た金額が消毒の費用となる。
ここでは1回での消毒アイテム数を20として
(100万円÷15÷12÷30)+(8千円÷20)が消毒に係る1アイテムの費用となる。この場合だと585円となる。
保管場所の費用は貸出中も費用が掛っていることから30万円÷千5百の金額20円が1アイテムの保管場所の費用となる。
配送事務費は福祉用具専門相談員の人件費を営業日数で得た人件費をさらに1日の配送アイテム数で割った金額が配送の費用となる。
人件費35万円労働日20日1日平均取扱アイテム数8の場合、35万円÷20÷8で得た2188円が1アイテムに係る配送の費用である。
事務費は事務所賃貸料に事務所に係る経費(水道光熱費・通信費・事務費)と事務員の人件費がかかり、これら事務費を総アイテム数で割った金額が1アイテム当たりにかかる事務費となる。
仮に事務費を66万円のとき総アイテム数1500で割った440円が事務費となる。
以上の例で示した5万円の車いすの貸与の原価は
仕入原価 591円
消毒費用 585円
保管費用 20円
配送費用 2,188円
事務費 440円 (合計3,824円)
以上を合計した金額3,824円が貸与の原価となり、これに貸与事業者の利益率を加えた金額が利用者への貸与料金となる。
福祉用具貸与の業態には、自社で貸与の福祉用具を所有せずいわゆるレンタル卸と呼ばれる会社から貸与となる商品をレンタルして利用者に貸与するやり方もある。その商取引による貸与事業者の原価は商品購入にまつわる原価・消毒・保管の費用はレンタル卸からレンタルする仕入れ価格に包含されているので、このときの貸与の原価はレンタル卸仕入れ値に配送費用と事務費、それに貸与事業者の利益率を加えて得た金額が、利用者への貸与料金となる。
こうした費用の積み重ねが貸与価格として計算されるが、算術平均や加重平均より高い価格になった場合、平均に合わせるようだとこの原価計算を度外視した価格となったときには、福祉用具貸与の原価は妥当な金額でなければ福祉用具貸与事業者は事業が成り立たなくなることを理解しておきたい。
さらに貸与価格には、単に原価計算でない福祉用具を使用するための説明や実地での指導そしてメンテナンスの費用もある。
福祉用具貸与事業者は平均価格と自社価格だけの説明だけでなく、使い方の指導や住環境整備と一体での提供提案、状態改善をもたらす用具の提案も含めた説明ができるようにしてほしい。
ケアマネジャーは平均価格の理解と貸与価格の原価計算さらには福祉用具にまつわる効果にも理解をして利用者に説明し使用し、介護状態の改善に資する業務を行ってほしい。