医療、福祉に係る職種は数多くあるが、それらは実質的に行われていた業務を国が追認し資格が制定された。相談業務に当たっていた職種には社会福祉士をはじめ保健師、社会主事などもそれぞれ支援を要する人の相談を行っていた内容を資格に定めた。これらの資格保有者によって高齢者の相談を受け、その課題解決に当たっていたが、要介護状態の高齢者に限って行う相談と介護支援の調整、介護支援の計画策定に当たる職種はなく、2000年施行の介護保険法により資格が創設され、その業務が規定されたのが介護支援専門員だ。
こうした経緯により従来の相談業務に当たっていた職種による業務と介護支援専門員が行う業務との関連から、介護支援専門員の業務内容の理解が介護保険法の規定との違いを生じることの要因かもしれない。
介護支援専門員の業務が確定した状態で実務が行われていないかもしれない現状に、介護支援専門員の業務を確実に履行していく方法は、介護支援専門員のことを定めた介護保険法等に立脚することで実現する。
介護支援専門員が業務を執行するに際し、業務を全うする裏付けを確認するため介護保険法等の事業所内で備えておき常時確認ができるよう整えておきたい。
介護支援専門員が行う業務は利用者の生活の全般にかかわりをもつことから、介護だけでなく医療の受診もあっての高齢者の生活という実情から医療に関する知識も備え、生活をしていくためのもろもろの活動に係る法律にも知識として知っておくことが、その業務の執行に役に立つ。
介護支援専門員が担当する利用者は複数にわたることから介護支援専門員だけの知識、経験ではとらえることの範囲を超える。複数の利用者を担当することはさまざまな人生の経験に係ることで、こうした多様な生活に対処する用意も求められている。これを法律でみると介護保険法等だけなく生活を送るさまざまな場面にかかわる法律も詳細は知らなくとも知識として知っていることで支援の幅が広がる。例えば、訪問販売で高額商品を購入し経済的に困っているときに参考になるのはたとえば消費者契約法による不実告知や将来確実に値上がりするといった断定的判断があったかをもとに契約の取り消しができることを知っているのと知らないとので支援の内容に差が生じる。
介護支援専門員が業務として担当している高齢者の抱えている課題の解決を図ろうとする際に、その課題の解決にはさまざまな医療、介護、福祉のサービスや経済や住民活動を適時組み合わせて利用できるよう利用者に働きかけを行う。したがって支援の業務を行うためには利用者の課題の把握とその理解に基づき、課題を解決する方法となる各種サービスを知ることが前提となる。
介護支援専門員の主要な業務は利用者の状態を把握しそこに存在する生活を送るうえで支障となっている課題を解明する作業から、課題解決の方法の方針を定めて方法を実現するサービスの関係者と利用者を含め協議する作業にすすみ、サービスの利用を促すことから実際のサービス利用の状況まで確認、さらにつぎの課題解決の段階に進む方法を検討し協議を繰り返すことで、利用者が自分で生活ができるよう整える一連の業務を行う。
利用者が生活できるよう仕向ける介護支援専門員はかかわりのあるサービスの全般を全体的に把握する立場にあり、サービスを提供する団体組織はその担う業務のなかにおいて利用者を把握し介護支援専門員等と協議した方向を実現できる方法を確立し提供していく。
役割の分担により介護支援専門員は利用者本人家族と各サービス提供者相互の連絡調整そして方法の統一を図るためさまざま方法で利用者本人家族と各サービス提供者から情報を収集し、集まった情報からその意味をくみ取り、さらに利用者本人家族と各サービス提供者の間でコミュニケーションを図る。
コミュニケーションを図る存在となる介護支援専門員がその役割を果たさないと利用者本人家族と各サービス提供者間の調整が実現しないばかりか、求める解決が実現されない。