長い間日本の平和と民主主義のために運動してきた人々は嘆く。「こんな政治・社会にするために頑張ってきたのではない!」と。
2006年9月に発足した第1次安倍内閣は、日本国憲法の成立を受けて日本の教育学者や学者らによりつくられた教育基本法を改悪し、防衛庁を防衛省とし、憲法改正手続きに関わる「国民投票法」を制定し、ただでさえ多忙化している学校教員に10年ごとに教員免許を更新させる制度を設けた(これは実質的に破綻し来年廃止される)。この内閣は、2007年8月、安倍晋三が政権を投げ出して終了したが、悪政を展開しただけだった。
その後福田康夫、麻生太郎を経て、2009年9月、政権交代=民主党政権の誕生となった。大きな期待が寄せられたが、鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦と続くなかで、官僚たちの妨害や消費税増税などの施策により支持を失い、2012年11月の総選挙で民主党が大敗し、自民党・公明党政権が復活した。そして首相には再び安倍晋三が就任した。
この内閣は、戦後最悪の政治を推進した。まず国政の私物化である。「モリ・カケ・サクラ」にみられるように、アベは身内や親しい者たちの利益確保に便宜をはかり、それが報じられると官僚に隠蔽工作させる(公文書の廃棄や虚偽答弁)。これは2014年の内閣人事局設置により官僚の人事を官邸が一元的に決めるというシステムが産みだしたものだ(それまでは各省ごとに行われていた)。しかしこれらの疑惑を、NHKはじめテレビメディアはあまり報じない。メディア自体も「私物化」されてしまっているのだ。テレビメディアだけではなく、「読売新聞」「産経新聞」などは自民党の翼賛機関と化している。
そして国会。特定秘密保護法、安保関連法、共謀罪、カジノ法など重要法案について徹底審議を求める国民や野党の要求を無視して採決を強行していった。またコロナ禍のもと、野党が憲法53条に基づいて要求した臨時国会の召集に対しても自民党・公明党政権は無視を続ける。
さらに司法も、ただでさえ独立が危うい日本の司法であるが、黒川東京高検検事長の勤務延長問題にみられるように、司法の私物化もあった。そして警察。伊藤詩織さんに対する性暴力に関して、もとTBSの山口敬之の逮捕をとり止めさせた、アベと親しい中村格が警察庁長官になった。
自民党と公明党によるアベ、スカ政権は、「国家の私物化」を促進したのである。