窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

満田政巨さん

2009年02月16日 | 講演メモ
先日、福島県会津若松市の会津天宝醸造株式会社にお邪魔し、工場見学と共に満田政巨会長よりお話を伺う機会がありました。

 会津天宝醸造さんは江戸時代から続く味噌屋さんですが、公式の創業年は当時の若松県より味噌株人の鑑札を受けた明治四年で、今年138年を数えます。

 大正時代に醤油醸造、昭和30年代に味噌漬け、昭和60年代に浅漬けと「醗酵」をキーに事業を展開し、「農工商消連携の経営」、すなわち農・工・商・消すべての利害関係者に喜んでもらえるシステムを構築することで持続可能で安全な食の供給を図る経営を提唱しておられます。これにより大量生産の大手メーカーと差別化を図り、価格競争に巻き込まれることのない事業を目指しているそうです。

 農工商消連携システムの具体例として、農に対しては漬物の材料である野菜の安定供給を目指し契約栽培農家からの調達を重視するのみならず、各種の技術指導を行うほか、収穫品については同一価格での全量取引を保証することで契約農家が豊作貧乏を憂えることなく安心して生産に取り組めるようにしています。

 工については平成11年にいち早くHACCP対応工場を建設し、近年喧しい「色の安全」確保に取り組み信頼を強化。その結果として商である大手商社や卸売業者と代理店契約を結ぶことに成功しています。

 消に対しては上記のような取り組みにより高品質かつ安全な商品を提供するほか、「ねぎ味噌」や農林水産省食品流通局長賞を受賞した「肉味噌」など現代の生活シーンに合った製品多角化を進めています。さらには1300年もの間、日本人の食生活に密接に関わってきた味噌の効用や使い方のバリエーションなどを紹介し、味噌を見直す運動、「みそ健康づくり委員会」を展開しており、現在では味噌のみならず日本人の食文化、すなわち「和食」を軸にした「食育」にまで発展させています。

 このほか近年では、地場の農業振興と環境に配慮した循環型農業推進を掲げ、漬物の製造過程で発生する野菜屑を地元の「会津地鶏」の飼料や堆肥用原料として活用するほか、同じく工場の排水施設で発生する余剰汚泥も全量肥料原料として活用しています。のみならず、そうして育てた会津地鶏と味噌を組み合わせた新たな商品開発や事情開拓を行うなど、農業の振興だけでなくその出口開拓にも力を入れておられるようです。

 満田会長のお話を伺って特に感心したのは、常に自分の立ち位置を見極められておられるということ、そして本業をより深いレベルで理解し、そこから自社の使命を導き出しておられるということです。すなわち、大手と同じ競争をしては勝てないのだから自社の強みとなる部分に全力を集中すること、さらに「味噌」のもつ意味、価値を深く追求し、それを伝えるだけでなく社会に浸透させる使命を自らに課している、この2点が大変勉強になりました。

  繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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コメント (2)
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