窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

両外国人監督が見たもの

2009年02月26日 | その他
  サッカーの事は良く知らないのですが、先日たまたま前日本代表監督であったイビチャ・オシムの本を読んでいたところ、オシムの見た日本選手の特性が現ラグビー日本代表ヘッドコーチであるジョン・カーワンが著書の中で述べていた(http://blog.goo.ne.jp/hardworkisfun/e/decf71cd97e4d461abcc6258114311aa)日本選手像と非常に似通っていることに気づき、興味を惹かれました。今日はそんなお話をひとつ...。

  まず最初にオシムもカーワンも日本化したサッカー(ラグビー)を目指す、と宣言しています。日本化とはすなわち「日本人の強みを活かしたプレースタイル」のことで、オシムはその強みを敏捷性と相手にスペースを与えない流動性であると指摘し、カーワンは低いタックルとスピードであると指摘しています。両者とも強豪国から学ぶことを一概に否定はしていません。しかしながら単なる列強の模倣では所詮模倣に過ぎず、彼らと伍することはできないというのです。「バルセロナのまねをしたからバルセロナになれるわけではない」とはまさにその通りだと思います。

  第2に、日本のスタイルを確立するためには自分たちの強みを良く理解し、そこに集中しなければならないということです。要するに「己を知る」ということですが、「日本人だからといって日本のことを良く分かっているとは限らない」とオシムが指摘しているように、簡単なようで意外と難しいことだと思います。オシムやカーワンの目から見れば日本人は自分たちの強みに集中することによって今日の経済的地位を築いてきたのにサッカーやラグビーではそれができていない。両者とも日本を「大国」と表現していますが、われわれ日本人に大国であるという自覚が薄いということなど、まさに「日本人だからといって日本のことを良く分かっているとは限らない」典型と言えるのではないでしょうか。

  第3に、客観的に相手を知る、つまり「敵を知る」ということです。オシムはこれをリスペクトと表現していますが、相手を必要以上に過大評価して恐れたり、逆に過小評価して見下したりするのはいずれも相手に対する無知と偏見に起因するものです。オシムの著書でも例として挙げられ、僕も当時確かにそのように思ったのですが、2006年のワールドカップ予選Fグループで大方のメディア報道は日本が「ブラジルには敵わないが、オーストラリアとクロアチアには勝てる」というものだったと記憶しています。これなどはまさしく相手に対する無知からくる過小評価でした。ひょっとしたら同じ予選グループにブラジルがいることに絶望するあまり、心理的にそのような希望的観測をせざるを得なかったのかもしれません。しかし、本当に予選突破を目指すのであれば対戦相手のいずれもが日本より実力的に勝っていることを認めたうえで、それでも勝機を見出すにはどうしたらよいか、という点に関心が集中するはずだったのではないでしょうか。勿論当事者である代表チームはそうでなかったかもしれませんが、少なくともメディアによって作り上げられたのはそんな雰囲気だった気がします。期待が大きすぎるあまり、逆に現実から目を背けようとするあまり、普通では考えられない誇大妄想が支配的になる可能性はスポーツに限らず起こり得、意思決定を誤らせる原因となります。
  
  第4に、自分を信じること。ラグビーはサッカー以上に世界との差が激しく、カーワンはそんな日本代表の「敗者の文化」を払拭することにまず着手したと述べていますが、オシムも同様に自分たちを信じるために強い相手と戦っていくことを説いています。いかに相手が強くても、逆に弱くても絶対はないというのが勝負であり、だからこそ己を知り、敵を知り、そして信じることが大切なのだろうと、これもスポーツに限ったことではなく、そう思います。

  オシムとカーワンに共通するのは「こうすれば絶対勝てる」というようないわゆる「勝利の方程式」を安易に口にしない理性を備えているという点だと思います。勝負に絶対はないのですから、一時の成功体験だけを取り上げて勝利のハウツーを説いたりしないのは勝負師として当然の態度なのかもしれません。しかしそうした理性を保つことは意外と難しいのではないかと思います。

日本人よ!
イビチャ オシム
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  繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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