都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「百花繚乱」 山種美術館 9/19

「百花繚乱 -咲き競う花々- 」
8/27~10/2
今、山種美術館で開催中の「百花繚乱」展です。これは、文字通り「花」にスポットを当てた展覧会ということで、同美術館のコレクションの近代日本画から、「花」にまつわる作品が約50点ほど展示されています。
展示作品の中では、最も古いものである酒井抱一の「秋草」(江戸時代)は、花をつけた線の細い秋草が、優雅な曲線を描きながら、まるで風に靡くように配されている美しい作品です。いつものことながら、酒井の繊細な筆の描写力と、動きと安定感を両立させる構図の妙に感銘させられますが、思わずため息すらもれそうな、詩的な美しさを持つ作品でもあります。
酒井と同じ江戸期の作品では、鈴木其一の「四季花鳥図」も見応えがありました。この作品は、屏風の左右に異なる季節が描かれていますが、左側の「秋」が特に素晴らしく、右下の池のそばに佇む二羽の水鳥の可愛らしさと、それを覆うように大きく盛りだす生き生きとした草花の描写は、非常に高い完成度を見せてつけています。
今回の展示でも目立っていたのは、7点の作品が展示されていた奥村土牛ですが、その中では「水蓮」(昭和30年)が最も魅力的に映りました。水の張られた器には、赤い水蓮が二つ浮かんでいますが、器には金魚の泳ぐ様も描かれていて、まるで蓮と金魚が、同じ水の中に、上と下とで同居しているような趣きです。水に浮かぶ蓮のしっとりとした赤色と、陶器に描かれている鮮やかな金色を帯びた金魚。質感と色の違いによる表現の対比も見事でした。
出会えば出会うほど、いつもその魅力に強く惹かれる速水御舟は、今回、「白芙蓉」(昭和9年)と「黒牡丹」(昭和9年)の二点が展示されています。中でも「黒牡丹」は、一枚一枚の黒い花びらが瑞々しく描かれていて、牡丹の花の重みをも感じさせる美しい作品です。また、花の重みに対して描かれた、茎と葉の淡く柔らかい表現も魅力的でした。花びらに描かれた黒いにじみが、こうも高い質感をもたらすとは、それこそ流石としか言いようがありません。
近代日本画で表現された「花」への愛情。花を通り越した、自然への優しい眼差しも感じられる展覧会です。10月2日まで開催されています。
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