都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「大巻伸嗣 ECHOES INFINITY」 資生堂ギャラリー 9/24

「大巻伸嗣 ECHOES INFINITY」
8/23~9/25(会期終了)
先日まで資生堂ギャラリーにて開催されていた大巻伸嗣の個展です。会期末に見てきました。
ギャラリーは資生堂のビル地下一階にあり、そこへは狭い階段で降りていくわけですが、階段を一歩一歩降りる過程において、既に作品から生み出された「場」が始まっています。真っ白な天井と壁に覆われたギャラリーの空間は、蛍光灯の明るい光の元に美しく輝いていますが、その上下は白い幕で分割され、床に配されたカラフルな顔料による花々がうっすらと浮き上がります。上から見ると、白い幕は、雲か深い霧のようにも見え、下へ向かって歩くと、まるで飛行機でゆっくりと雲海を下降していくかのような気持ちにさせられます。
そして地上に降り立つと、まさにそこは一面の花畑です。鮮やかな顔料によって描かれた花々は、所狭しと床の全てを覆い尽くしていますが、その顔料は、これまでの入場者によって磨り減らされ、そしてぼやけています。何度もその顔料を塗り直すというワークショップによって、花畑は幾度も再生されたそうですが、さすがにこの日は最終日前日ということもあってか、顔料は限りなく拡散していました。しかしそこには、実際の花のような生死のリアリティーがある上に、見る人による痕跡、つまり花々を踏みつけて鑑賞した人々の記録が残っているわけです。
会場奥には、厚い透明のアクリル板によって覆われた、半ば保護された形とも言える花々が、制作当初のままに残されていました。アクリル板の透明さが花の上に重なると、水面に花が漂っているかのように見えます。また、蛍光灯の明かりにも強く反射します。一層光り輝いていたとも言えるでしょう。真っ白の空間の中に敷きつめられたカラフルな花々。シンプルな作りでありながらも、非常に魅力的な場所になっていたと思います。
大巻氏の作品は、2003年にトーキョーワンダーサイトでの「アウト・オブ・ザ・ブルー展」において、「Liminal air」という、これまた白を基調とした作品を見た記憶があります。全く異なる作品ではありますが、会場の白さは、あの当時の作品の雰囲気も思い起こさせました。
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