「アダム・ブース 『Eternal Spring』」 ギャラリー・エフ

ギャラリー・エフ台東区雷門2-19-18
「アダム・ブース 『Eternal Spring』」
3/16-4/15

イギリス出身で芸大在学中の日本画家、アダム・ブースの個展を見てきました。江戸末期に建てられたという古い土蔵跡の空間に、花鳥をモチーフとした夢幻的な日本画が展開されています。



爽やかで透明感のある水色の空には、桃の実を引っ掛けて舞う鶴が描かれていました。そしてその足元には、ピンク色の花を可愛らしく咲かせた桜が枝をのばしています。スラッとしたか細い線で描かれた鶴や桜、それに擬人化された象のモチーフからは、例えば若冲や抱一などと言った日本絵画の伝統も感じさせていました。往時の日本画の写実性を軽減して、優し気で幻想的な、また若干のシュルレアリスムの気配も漂わす世界観を構築しています。

長寿のシンボルでもあり、また人間の欲望の象徴でもありながら、結局神によって禁じられてしまった(公式HPより引用。)という桃が、ブースの作品では激しい炎の渦の中へのみ込まれてしまいます。お目出度い桜や鶴などのモチーフを使いながらも、あたかもその幸福感を打ち消すような儚さを表現した部分はブースの真骨頂かもしれません。単に軽妙で、色彩にも明るい日本画というわけではないようです。

ギャラリー・エフは、展示空間自体が「アート」と言って良いかもしれません。漆喰の壁や黒光りする床板、さらにはギシギシと音を立ててしなる梯子には、当然ながら歴史の重みを見ることが出来ました。雑多な浅草の喧噪よりしばし離れて、暗がりの土蔵の中で浮かあがる現代日本画もまた格別です。ちなみにギャラリー・エフはカフェも併設しています。(展示スペースはカフェを抜けて進んだ最奥部です。)そちらも次回試してみたいと思いました。今月15日までの開催です。(3/24鑑賞)
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