都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「異邦人たちのパリ」 国立新美術館(その2)
国立新美術館(港区六本木7-22-2)
「異邦人たちのパリ - ポンピドー・センター所蔵作品展 - 」
2/7-5/7
「その1」より続きます。国立新美術館で開催中の「異邦人たちのパリ」展です。抽象画やキネティック・アートの並ぶSection2が、事実上、この展覧会のハイライトだったかもしれません。カンディンスキーやコールダー、それにザオやフランシス、さらにはアルトゥング、シルヴァ、スタール、イジスなどが集います。壮観です。
ゆらゆらと宙に舞うコールダーのモービルの下で一際目立っていたのは、カンディンスキーの二点の抽象画でした。特に、幾何学的な図柄を柔らかい色彩感でまとめ上げた「相互和音」(1942)は圧倒的です。それこそタイトルの如く、左右二つの場面が共鳴し合いながら音を奏でているように感じられます。また中央のやや白みがかった空間が街路で、両側に連なるモチーフがビルとすると、さながらクラッカーでも飛び交う都市のカーニバルのイメージも浮かび合ってきました。その華々しい賑わいが伝わってくるような作品です。
シルヴァやスタールなどの重厚な抽象画も見応えがあります。何やら「和」も思わせる芝色や灰色の色彩が緊張感をもってせめぎあうスタールの「コンポジション」(1949)、または大きな刷毛を用いたタッチで油彩をコラージュ風にまとめた「ミュージシャン、シドニー・ベシェの思い出」(1953)などが印象に残りました。また国内ではお馴染みの菅井汲の「丘」(1956)や堂本尚郎の「絵画 1962-27」(1962)なども充実していたと思います。そしてここで何よりも忘れられないのは、やはりザオ・ウーキーの「青のコンポジション」(1960)です。鮮やかで深淵な青の海に、まるで竜巻のようなモチーフが力強く駆け巡っています。そして、画面全体を斜めにスパッと切ったような構図も新鮮に感じました。京橋のブリヂストン美術館で見るザオの味わいとはまた一風変わっています。轟々と音をたてるかのように激しい情念の迸る絵画です。
Section3、4では二人の日本人作家に心がとまりました。庭園美術館での個展も懐かしい田原のややセンチメンタルな窓シリーズと、虚空に浮かぶ古着が、まるでマグリットの世界をも連想させるオノデラユキの写真作品などには魅入らされます。ただしこのセクションは、全体的に、前半の2つと比べるとかなり弱かったかもしれません。会場では素通りする方も目立っていました。展示の最後にビデオアートを見るのはなかなか力のいる作業です。
メディア等の露出も多いのでしょうか。会場はかなり混雑しています。(しかし観客の流れは極めてスムーズです。混雑の割にはあまりストレスを感じません。)会期末にはさらに賑わうことが予想されます。現代アート好きの方にもおすすめの展覧会です。ゴールデンウィーク明け、5月7日まで開催されています。(3/25鑑賞)
*関連エントリ
「異邦人たちのパリ」 国立新美術館(その1)
「異邦人たちのパリ - ポンピドー・センター所蔵作品展 - 」
2/7-5/7
「その1」より続きます。国立新美術館で開催中の「異邦人たちのパリ」展です。抽象画やキネティック・アートの並ぶSection2が、事実上、この展覧会のハイライトだったかもしれません。カンディンスキーやコールダー、それにザオやフランシス、さらにはアルトゥング、シルヴァ、スタール、イジスなどが集います。壮観です。
ゆらゆらと宙に舞うコールダーのモービルの下で一際目立っていたのは、カンディンスキーの二点の抽象画でした。特に、幾何学的な図柄を柔らかい色彩感でまとめ上げた「相互和音」(1942)は圧倒的です。それこそタイトルの如く、左右二つの場面が共鳴し合いながら音を奏でているように感じられます。また中央のやや白みがかった空間が街路で、両側に連なるモチーフがビルとすると、さながらクラッカーでも飛び交う都市のカーニバルのイメージも浮かび合ってきました。その華々しい賑わいが伝わってくるような作品です。
シルヴァやスタールなどの重厚な抽象画も見応えがあります。何やら「和」も思わせる芝色や灰色の色彩が緊張感をもってせめぎあうスタールの「コンポジション」(1949)、または大きな刷毛を用いたタッチで油彩をコラージュ風にまとめた「ミュージシャン、シドニー・ベシェの思い出」(1953)などが印象に残りました。また国内ではお馴染みの菅井汲の「丘」(1956)や堂本尚郎の「絵画 1962-27」(1962)なども充実していたと思います。そしてここで何よりも忘れられないのは、やはりザオ・ウーキーの「青のコンポジション」(1960)です。鮮やかで深淵な青の海に、まるで竜巻のようなモチーフが力強く駆け巡っています。そして、画面全体を斜めにスパッと切ったような構図も新鮮に感じました。京橋のブリヂストン美術館で見るザオの味わいとはまた一風変わっています。轟々と音をたてるかのように激しい情念の迸る絵画です。
Section3、4では二人の日本人作家に心がとまりました。庭園美術館での個展も懐かしい田原のややセンチメンタルな窓シリーズと、虚空に浮かぶ古着が、まるでマグリットの世界をも連想させるオノデラユキの写真作品などには魅入らされます。ただしこのセクションは、全体的に、前半の2つと比べるとかなり弱かったかもしれません。会場では素通りする方も目立っていました。展示の最後にビデオアートを見るのはなかなか力のいる作業です。
メディア等の露出も多いのでしょうか。会場はかなり混雑しています。(しかし観客の流れは極めてスムーズです。混雑の割にはあまりストレスを感じません。)会期末にはさらに賑わうことが予想されます。現代アート好きの方にもおすすめの展覧会です。ゴールデンウィーク明け、5月7日まで開催されています。(3/25鑑賞)
*関連エントリ
「異邦人たちのパリ」 国立新美術館(その1)
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