都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「引込線」 西武鉄道旧所沢車両工場
西武鉄道旧所沢車両工場(埼玉県所沢市東住吉10-1)
「所沢ビエンナーレ・プレ美術展 引込線」
8/27-9/12

旧車両工場の空間自体がアートそのものです。新たに所沢で始まろうとする現代アートの祭典、所沢ビエンナーレのプレ美術展、「引込線」へ行ってきました。


会場は所沢駅西口すぐ、ちょうど西武百貨店を抜けた先にある車両工場の跡地です。ちらしの地図によれば、さも入口が百貨店の裏手、南側にあるように思えてしまいますが、実際は北側、西口より直進する道路との交差点近くにありました。(駅出口にも案内はありません。)工場入口の「引込線」のタイトルロゴ、これだけが目印です。これからの方はご注意下さい。


レールの跡があるわけでもないので、ここがかつての車両工場であるということは分かりにくいのですが、広大な敷地に立ち並ぶ大きな三角屋根の施設は、やはりどこか異様な雰囲気を漂わせています。出品作家は、遠藤利克、窪田美樹、多和圭三、手塚愛子、戸谷成雄、山下香里ら、所沢にゆかりのあるという計16名の方々です。スペースこそ広いものの、展示自体の密度はそう濃いわけでもありません。オブジェ、インスタレーション、ペインティング、それに映像作品など、ゆったりとした趣きで紹介されていました。

ともかく建物の存在感がかなり強いので、いささか作品がそれに埋没してしまっていた感も否めませんでしたが、印象深いのは上にも挙げた方々より遠藤、窪田、戸谷、手塚らの作品です。入口すぐには、資生堂ギャラリーでの個展も記憶に新しい窪田美樹が、おなじみの家具を素材にした、また生き物のような不思議なオブジェ群を展開しています。そして展示室最奥部、ひときわ巨大な鏡を用いたインスタレーションで圧巻なのは、この手の空間を得意とする遠藤利克(「鏡像段階説+空洞説」)です。天井からチェーンがぶら下がり、それを軸として三枚の巨大な鏡が無限の鏡面世界を作り出しています。遠藤の鏡を用いた作品というのは比較的珍しいのではないでしょうか。またその左手、きらきらした小高い丘のような山下香里の「山間、斜視と空景」は、この暗がりの工場跡でも見劣りしない佳作です。美しい白い光を朧げに放っていました。


時間の都合で冒頭30分ほどしかご一緒できませんでしたが、ちょうど開催されていたギャラリーツアーに参加してみました。そこでは何と、かの戸谷成雄氏が、自ら作品について語って下さっています。「ミニマルバロック」は『分割』の意識、つまりは二本の木(長さ4メートル超える大木を用いています。)をちょうど空間の中央から割くようにして何本ものオブジェを作り、さらにはそれを上下左右、対になるようにして展開したということ、またチェーンソーで削り、灰を塗り込める創作過程などを丁寧に紹介していただけました。また木の削りかすはゴミとして出ないよう、なるべく作品へ戻すように接着してあるのだそうです。これは知りませんでした。

来年の本展へ向けてのプレ・美術展ということで、どこか手作り感の漂う、アットホームな展示と言えるかもしれません。しかしながら、既に終了してしまったものの、見学ツアー、シンポ、パフォーマンスなど、一定のイベント等は全て用意されています。また現在、武蔵野美術大学院生の藤盛による公開制作も着々と進行中です。巨大な木彫りの人形が大きなノミで象られていました。最終日には完成となるのでしょうか。

入場無料、写真撮影可という太っ腹なイベントです。次の三連休まで開催していないのが残念ですが、時間ある方には是非おすすめしたいと思います。
今週の金曜、12日までの開催です。
「所沢ビエンナーレ・プレ美術展 引込線」
8/27-9/12

旧車両工場の空間自体がアートそのものです。新たに所沢で始まろうとする現代アートの祭典、所沢ビエンナーレのプレ美術展、「引込線」へ行ってきました。




会場は所沢駅西口すぐ、ちょうど西武百貨店を抜けた先にある車両工場の跡地です。ちらしの地図によれば、さも入口が百貨店の裏手、南側にあるように思えてしまいますが、実際は北側、西口より直進する道路との交差点近くにありました。(駅出口にも案内はありません。)工場入口の「引込線」のタイトルロゴ、これだけが目印です。これからの方はご注意下さい。




レールの跡があるわけでもないので、ここがかつての車両工場であるということは分かりにくいのですが、広大な敷地に立ち並ぶ大きな三角屋根の施設は、やはりどこか異様な雰囲気を漂わせています。出品作家は、遠藤利克、窪田美樹、多和圭三、手塚愛子、戸谷成雄、山下香里ら、所沢にゆかりのあるという計16名の方々です。スペースこそ広いものの、展示自体の密度はそう濃いわけでもありません。オブジェ、インスタレーション、ペインティング、それに映像作品など、ゆったりとした趣きで紹介されていました。




ともかく建物の存在感がかなり強いので、いささか作品がそれに埋没してしまっていた感も否めませんでしたが、印象深いのは上にも挙げた方々より遠藤、窪田、戸谷、手塚らの作品です。入口すぐには、資生堂ギャラリーでの個展も記憶に新しい窪田美樹が、おなじみの家具を素材にした、また生き物のような不思議なオブジェ群を展開しています。そして展示室最奥部、ひときわ巨大な鏡を用いたインスタレーションで圧巻なのは、この手の空間を得意とする遠藤利克(「鏡像段階説+空洞説」)です。天井からチェーンがぶら下がり、それを軸として三枚の巨大な鏡が無限の鏡面世界を作り出しています。遠藤の鏡を用いた作品というのは比較的珍しいのではないでしょうか。またその左手、きらきらした小高い丘のような山下香里の「山間、斜視と空景」は、この暗がりの工場跡でも見劣りしない佳作です。美しい白い光を朧げに放っていました。




時間の都合で冒頭30分ほどしかご一緒できませんでしたが、ちょうど開催されていたギャラリーツアーに参加してみました。そこでは何と、かの戸谷成雄氏が、自ら作品について語って下さっています。「ミニマルバロック」は『分割』の意識、つまりは二本の木(長さ4メートル超える大木を用いています。)をちょうど空間の中央から割くようにして何本ものオブジェを作り、さらにはそれを上下左右、対になるようにして展開したということ、またチェーンソーで削り、灰を塗り込める創作過程などを丁寧に紹介していただけました。また木の削りかすはゴミとして出ないよう、なるべく作品へ戻すように接着してあるのだそうです。これは知りませんでした。

来年の本展へ向けてのプレ・美術展ということで、どこか手作り感の漂う、アットホームな展示と言えるかもしれません。しかしながら、既に終了してしまったものの、見学ツアー、シンポ、パフォーマンスなど、一定のイベント等は全て用意されています。また現在、武蔵野美術大学院生の藤盛による公開制作も着々と進行中です。巨大な木彫りの人形が大きなノミで象られていました。最終日には完成となるのでしょうか。



入場無料、写真撮影可という太っ腹なイベントです。次の三連休まで開催していないのが残念ですが、時間ある方には是非おすすめしたいと思います。
今週の金曜、12日までの開催です。
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