「松江泰治 - Nest - 」 TARO NASU GALLERY

TARO NASU GALLERY千代田区東神田1-2-11
「松江泰治 - Nest - 」
8/29-9/20



松江の目は細部にこそ宿っています。世界各地のあらゆる地表を独特なフラットな世界にまとめあげる、松江泰治の未発表作による写真展です。名高いモノクロの世界から一転、光に包まれた色鮮やかな都市や緑が、俯瞰的な構図にて写し出されていました。

まず松江の風景写真を見て感心するのは、一枚におさめられた情報量の多さです。高い場所から見下ろして撮られた都市の作品では、その延々と続くビルや家々の屋根や窓が単なる形と色へと還元され、何らかの抽象絵画のような幾何学模様へと変化しています。実際、展示室正面右手に並ぶ三枚の大作は、それぞれスペイン、メキシコ、それにパリの街を写したものだそうですが、あえてモニュメント的な建築物や街路、さらには水面を避けたその光景は、全く匿名な架空の都市のようにも見えてきました。言い換えれば、CGを処理して出来た、濃密な人工都市とでも表せるかもしれません。

風景を出来るだけ均一に捉え、故に生まれる細部の徹底した表出こそが松江の魅力の一つでもありますが、当然ながら細部と全体が対立することは決してありません。くっきりと浮き出た遠景の建物の角の線が、例えば隣のビルの面と組み合わさり、さらにはまた別の建物のそれへと連なっていきます。都市の最小単位は細やかなモザイクでした。松江の目は都市に思わぬ装飾さえ与えているようです。

彼の細部への関心は、これらの大作以外にも見て取ることが出来ました。ちょうど展示室へ向かう階段を降りた先にある、赤い女性を写した一枚に注視してください。そこにはどこかで全体を構成していた細部が、また新たな魂をもって提示されているのです。

次の土曜、20日までの開催です。
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