都響定期 「ブルックナー:交響曲第6番」他 ストリンガー/デュメイ

東京都交響楽団 第667回定期演奏会Aシリーズ

ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲
ブルックナー 交響曲第6番

指揮 マーク・ストリンガー
ヴァイオリン オーギュスタン・デュメイ

2008/9/25 19:00 東京文化会館5階



世界的ヴァイオリニスト、オーギュスタン・デュメイが東京都交響楽団と共演します。当日券で行ってきました。文化会館での定期演奏会です。

コンサートやCDリリースなど、積極的な音楽活動でその名を轟かせるデュメイですが、彼の演奏を端的に示せば、実に即物的で、若干の音程を除けばほぼ完璧だったと言えるのではないでしょうか。音の中央を太い鋼の棒が貫いているのではないかと思ってしまうほど逞しく、また輝かしい中音域をはじめ、オーケストラを簡単に圧倒してしまう超ど級のフォルテッシモから、棘の生えるかのように研ぎすまされた怜悧なピアニッシモなど、その長身の体躯を生かして、ベートーヴェンのコンチェルトなど全く相手とせずと言わんばかりに、難なく弾ききってしまいます。ここにオーケストラとの対話や掛け合いを楽しむ協奏曲の妙味はなく、もはや完全なるデュメイの独奏会と化していました。率直なところ、好き嫌いの観点から述べれば、私は今回こそ心に響かないヴァイオリン独奏を聴いたのは初めてですが、逆にその完全性において極めて高度な位置に指し示され、圧倒的な演奏に接したのも初めてでした。ただしデュメイの名誉のために、演奏後の拍手は割れんばかりのものであったことを付け加えておきます。聴衆の反応は良かったようです。

さて一曲目では完全にデュメイの陰に隠れてしまった感もある指揮者、ストリンガーですが、失礼ながらも、メインのブル6を見通しのよい、いわば清涼感のある演奏で思いのほか楽しませてくれました。月刊都響によれば、ストリンガーはブル6において、ボウイングや強弱をかの巨匠、ヨッフムの指示を加えたとのことでしたが、確かに総じて素朴で、また全く奇をてらうことのない、安心感のあるブルックナーが実現していたと思います。またそもそもこの第6交響曲自体が前半部分、ようは1、2楽章に重きの置かれるような構成をとっていますが、ストリンガーもその部分の良さを素直に引き出すようなアプローチであったのではないでしょうか。白眉はもちろんアダージョです。テンポを落とし、一つ一つの旋律を熱意をもって、しかしながら決して浪花節になることになく、落ち着きを払って奏でていきます。また音楽の四隅をきっちりと揃えるストリンガーは、ブルックナーの緩徐楽章からどこか都会的で整然とした響きを引き出すことにも成功していました。幽玄さ、または大自然を思わせる雄大さとは反対の方向にありますが、私は彼のアプローチを支持します。あえて言えば、スケルツォ以降はやや先を急いだ感も受けましたが、フィナーレまで一貫した音楽作りが出来ていました。

都響がまた充実しています。やや不安定なホルンをはじめ、金管はストリンガーの指示にもよるのか、やや伸びやかさが足りないような気もしましたが、木管の表情は細やかで、瑞々しいヴァイオリンとともに無理ないスケールでまとまっていました。

ところで既に都響公式HPでも告知されていますが、会場でも来年度のスケジュールを記載したビラが配布されていました。ともかく注目したいのは年度後半、11月から3月です。デプリーストのブルックナーの第7交響曲をはじめ、人気のインバルが同じくブルックナーの第5、第8、さらにはマーラーの第3、第4交響曲を披露します。(その他にはインバルのベト3、5、またはチャイ4も予定されています。)これはチケットの人気も高くなるに違いありません。争奪戦は厳しくなりそうです。

*関連リンク(都響HPの速報。ともにpdf。)
2009年度定期演奏会(Aシリーズ&Bシリーズ)
2009年度プロムナードコンサート&東京芸術劇場シリーズ「作曲家の肖像」
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