「生活と芸術 - アーツ&クラフツ展」 東京都美術館

東京都美術館台東区上野公園8-36
「生活と芸術 - アーツ&クラフツ展 ウィリアム・モリスから民芸まで」
1/24-4/5



19世紀後半にイギリスで興ったデザイン運動「アーツ&クラフツ」の広がりを、イギリス、ヨーロッパ、そして日本までに手を広げてひも解きます。(ちらしより一部引用)東京都美術館で開催中の「アーツ&クラフツ」展へ行ってきました。



モリスに始まり棟方志功に終わるというバラエティーに富んだ展示でしたが、色も形にも様々なステンドグラスや家具、壺、さらにはタペストリーなどを次々と愛でるのはそう興ざめすることでもありません。入口の地階ではイギリス(110点)、そして階段を一つあがったフロアにヨーロッパ(50点)が、そして最終の二階部分には日本の工芸品(120点)が紹介されています。また点数を見ても明らかなように、最後の日本のセクションが意外に充実していました。特に日本最初の民芸館、「三国荘」(1928)の再現展示は圧巻の一言です。和洋折衷から朝鮮の意匠までを取り入れた工芸の数々が、エキゾチックにも映る日本家屋にてズラリと並べられています。残念ながら中に入ることは叶いませんが、遠目に見ても徳利や鉢などの意匠は、今すぐにでも手元に寄せ手使ってみたくなるようなものばかりでした。



順路は逆になりますが、アーツ&クラフツ運動の発祥の地、イギリスの一角ではロセッティの「聖ゲオルギウス伝ステンドグラス・パネル」(1862)全6枚が忘れられません。そもそもロセッティはモリスとともに、運動の泰斗となるべくモリス・マーシャルフォークナー商会(1961)を立ち上げましたが、その最初の重要な仕事が教会のステンドグラス制作であったのだそうです。ゲオルギウスがサブラ姫を倒そうとドラゴンを切り裂く様子が、色鮮やかな様で描かれています。鉄の肘あてをドラゴンの口に付け、サーベルをドラゴンの首に力強く振り下ろしていました。

都美一、天井の高い中階段前のホールには、モリスとヘンリー・ダールの描いた巨大なタペストリー「果樹園、あるいは四季」(1890)が展示されています。鬱蒼と生い茂る緑深い果樹園を背に、まさにラファエル前派風の美しい4名の女性が立っていました。ぶどう、洋梨はもとより、足元にはスミレ、パンジーなども鮮やかに咲き誇ります。艶やかな植物の群れ、そしてそれに由来する半ば花鳥画風の文様こそアーツ&クラフツの本流です。例えばタペストリーを単なる装飾として捉えるのではなく、それ自体を自然の風や匂いに見立てることにも主眼が置かれていたのかもしれません。

「もっと知りたいウィリアム・モリスとアーツ&クラフツ/藤田治彦/東京美術」

最後になりますが、お馴染み東京美術より、本展示の理解を深めるのに最適な一冊が刊行されました。色鮮やかな図版はもとより、展示ではやや消化不良気味だったモリスと仲間の生き様、そして思想面の解説が充実しています。こちらも是非ご参照下さい。



こうした展覧会へ頻繁に足を運んでいるわけではありませんが、率直なところ今回ほど楽しめた工芸展もありませんでした。チラシのデザインもなかなか洒落ています。

4月5日までの開催です。今更ながらおすすめします。
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