「東本願寺の至宝展」 日本橋高島屋

高島屋東京店8階 ホール(中央区日本橋2-4-1
「東本願寺の至宝展」
3/18-30



東本願寺の宗祖、親鸞聖人の750回の遠忌を記念し、普段非公開の襖絵や関連資料などを紹介します。日本橋高島屋で開催中の「東本願寺の至宝展」へ行ってきました。

京都駅近くで偉容を誇る同寺ですが、今へ至る歴史はまさに受難続きでした。創建以来、計4回も大火に遭遇しながらも、その都度甦り、往時の絵師たちが襖絵などを納めています。構成は以下の通りでした。

1. 親鸞と東本願寺:親鸞自筆の書、もしくは江戸時代の御影など。
2. 円山応挙と近世の香り:焼失を逃れた応挙の襖絵。
3. 幕末と東本願寺:江戸幕府との関係。倒幕派の攻勢。大政奉還上奏文の写しなど。
4. 近代京都画壇の宝庫:蛤御門の変で4度目の焼失。再建された東本願寺を飾る京都画壇の襖絵の数々。
5. 焼失と再建の歴史:東本願寺の歴史を辿る。「阿弥陀如来立像」。関連VTRなど。
6. 棟方志功と念仏の教え:棟方志功の襖絵。



どうしても前半の応挙などに目が向いてしまいますが、本展示のハイライトはむしろ4番目、京都画壇の絵師たちが描いた襖絵の数々ではないでしょうか。荒れ狂う波に巨大な鷹が睨みを利かす久保田米僊の「波涛大鷹図」の他、同じく大きな孔雀が美しい羽を披露する岸作堂の「桜孔雀図」、はたまた永徳の巨木を思わせる松が空間を貫く玉泉の「桜花図/松・藤花図」などは、天井の低い高島屋のホールでは圧迫感すら覚えるほどに勇壮でかつ豪華な作品でした。ガラスケースもなく、剥き出しの展示には、置かれている場の再現こそ困難なものの、絵の息遣いを肌で感じ取れます。濃密な空間が演出されていました。



順序は逆になりますが、前半の応挙、伝蘆雪、そして元信らの作品では、この度、応挙作と認定された「雪中松鹿図」、または元信の「唐人物・花鳥図」が白眉です。前者の応挙作の松は、遠目で眺めた際の視覚効果に優れた雪松図の系譜を感じさせるのではないでしょうか。墨の濃淡にて牡丹のボリューム感と笹の軽やかな質感を同時に表した元信の作も優れていました。

これらの名だたる絵師たちとは無関係に私が一推しにしたいのは、東本願寺の再建のため、山より木材を切り出す光景を六曲一双の屏風で描いた「寛政度用材運搬図屏風」です。山奥より大きな木を切り、それを滝で下へと落とし、さらには川へと流して、最後には大勢の男たちが手で担いで運搬する様子が、まるでアニメーションのような動きをもって表されています。是非ともお見逃しなきようご注意下さい。



前回の上村三代展に続いての好企画です。催事場なので手短かにと思って見ると大変なことになります。時間に余裕をもっての観覧がおすすめです。

30日まで開催されています。なおいつものように会期中連日、午後6時以降(閉館8時)は入場料が半額(400円)となります。

*東京展終了後、札幌大丸、難波、京都の高島屋、及び栄の松坂屋へと巡回します。(スケジュールは東本願寺のHPをご覧下さい。)
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